200409 生産技術エンジニアの設備立ち合いの概略紹介

今回は「生産技術エンジニアの設備立ち合いの概略紹介」というテーマで話をします。生産技術エンジニアをしていると、設備製作を外注します。設備が完成した時に取引先へ出張して設備の検証を行います。今回はその設備立ち合いの概略を紹介します。

生産技術エンジニアの設備立ち合いとは

生産技術部の仕事の1つに量産設備の導入というものがあります。
簡単に概略を説明すると、社内の量産立ち上げスケジュールに従って量産設備を工場へ導入して量産稼働できる状態にするというものです。量産開始までの生産技術エンジニアの仕事の流れは次のようになります。

量産ライン全体の検討 --> 個別工程の設備仕様の検討 --> 設備構想検討 --> 設備の発注 --> 設備立ち合い --> 量産工場への設備導入--> 量産工場での設備立ち上げ --> 量産開始

今回取り上げるのは、設備製作会社での設備立ち合いになります。
設備立ち合いとは、提示した設備仕様通りに設備が完成しているかどうかを検証するための活動です。量産工場に納入しても問題ないレベルであるということを事前によく検証しておかないと、工場で苦労することになります。

例えるならば、車を購入する前に試乗して運転性能を確認するようなものです。大きな違いは、自動車は量産品で厳しい品質管理をされた品物であるのに対し、量産設備は一品物の特注品であるということです。世界に1つしかない設備であるため、市販の自動車ほど品質管理がされていないということです。

ということで、設備立ち合いでは細かい部分まで厳しく確認しておく必要があります。

設備立ち合い時の確認項目

それでは具体的にどんな項目を設備立ち合いで確認するかというと、次のような項目です。

  • 自動動作確認(エラー復帰動作を含めバグなどがないかどうか)
  • サイクルタイム確認
  • 連続動作確認(動作の信頼性確認)
  • 機種切り替え動作
  • 安全動作(非常停止の動作など)
  • 品質確認(製品の組立精度や検査精度)
  • 設備の操作方法、調整方法など

当たり前のように思えるかもしれませんが、意外とできていない場合があります。 取引先や担当者の仕事の品質や認識レベルの問題になりますが。そういった漏れや認識のずれがないように、発注前の仕様書に細かく記載しておくことです。日本での仕事のやり方のよくない部分ですが、言わなくてもわかるはず・・・という期待は自分に都合のいい解釈です。相手には伝わりません。

設備立ち合い前の準備

取引先が遠方に位置する場合は、移動だけでも時間と費用がかかります。
片道数時間もかかるような場所もあれば、海外の取引先で1週間単位の出張になることもあります。

立会いをする前に、仕様書の事前確認や上述した確認項目を整理しておくと立会いがスムーズに済みます。現地に行ってあれこれ悩んでも、効果的に解決できないばかりか余計な時間を無駄にします。 確認項目を取引先に連絡しておき、立ち合いに備えなくてはなりません。抜き打ちテストではなく、確認テストとしなければなりません。
互いに共通認識をもって、当日のネガティブなサプライズをなくす工夫をすることです。経験を積めば徐々にわかってきます。いくつか悪い事例を紹介します。

設備立ち合い前の悪い事例紹介

設備立ち合いというと、生産技術エンジニアが顧客の立場で出張するため、大きな失敗をするようなことはなさそうですが、意外とそうでもありません。設備の出来栄え以外にも設備立ち合いの品質を著しく落とす場合があります。

部品数が不足していて連続動作確認できない

組み立て装置の場合は連続動作をする上で、どうしても大量の部品が必要になります。
設備の連続動作確認に必要な部材を提供できていないから、連続動作確認できていないという担当者もいました。これでは何を確認するつもりで出張したのかわかりません。量産部品については自社から設備製作会社に支給しなくてはなりませんので、設備製作会社には何の責任もありません。
社内関連部署と連携して、設備検証に必要な部材を必要時期までに準備して支給しなくてはなりません。

仕様書に記載がないことを後で要求する

プロフェッショナルな仕事はすべて書面ですべきです。
設備が完成して動作を見たあとになって、仕様に明記していないことを要求するエンジニアがいます。あの時に言った、言わない・・・の話もそうですが、もめごとの原因です。設備立ち合い当日に感覚的な議論をしても、解釈する人間によってとらえ方は異なります。誰でもわかるような明確な表現と説明で仕様書に記載すべきなのです。必要に応じて図面や概略図を使います。

品質確認できる手段を準備していない

組み立て装置の事例ですが、部品の圧入後の寸法すら現地で測定しないで、現品を持ち帰ってくる担当者もいました。取引先が測定器を持っているかどうか確認しておいて、持っていないのであれば持参して現地で測定すべき話ですが、そんなこともできない人がいます。
CMMでないと測定できない寸法や特殊な装置を必要とする特性もあるので、そういう場合はサンプルを持ち帰って品質確認をします。そうでない場合は現地で確認しておくべきです。


設備立ち合い後の対応

設備立ち合いで課題が出た場合には、その対応を行います。
立会いに行くことが仕事ではないので、生産技術の仕事は設備立ち合い後も続きます。課題が多いようであれば、再度出張して確認しなくてはなりません。軽微な指摘であれば、その対策をしてもらい設備を量産工場へ出荷します。

量産工場に設備到着後は、立ち合いで行った確認を再度行います。
設備仕様の確認や製品の品質確認などです。



以上、簡単ですが生産技術エンジニアの設備立ち合いの概略を紹介しました。

※関連書籍 (生産技術の教科書Ⅰ)

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