200413 設備の改造仕様を準備できない生産技術エンジニアについて
今回は「設備の改造仕様を準備できない生産技術エンジニアについて」というテーマで話をします。生産技術エンジニアをしていると、量産設備を改造することがあります。新規設備を導入することも簡単ではありませんが、量産している設備を改造することも高い技術力が要求されます。今回は失敗しないための設備改造のポイントについて概略を紹介します。
設備の改造仕様とは
改造仕様とは、設備の改造内容の詳細をまとめた文書のことです。
基本的には新規設備と同じような仕様書をイメージしてもらえばよいですが、改造に関係する部分のメカ仕様、
電気仕様、ソフト仕様などをまとめた文書になります。この1行では簡単すぎるので、事例をあげてみます。
改造仕様の事例
例えば、1tの油圧プレスを2tのサーボプレスに置き換える設備改造をするとします。
このときの改造仕様として整理しておくべき点は、ざっくり次の項目です。
- サーボプレスの取り付け方法の検討(取り付けピッチが異なるため)
- 使用するサーボプレスの指定(要求精度やメーカー型式など)
- 装置全体の剛性の確認
- サーボプレスのI/Oの確認(PLCに空きがなければユニット増設必要)
- 位置情報のデータ取り込み必要有無(必要であれば座標やタイミングの詳細)
- 見込みサイクルタイムの検討(サイクルタイム悪化のリスク検討)
- HMIでの操作方法の要求事項(手動操作や座標設定など)
このように、ちょっとした改造でも細かくみていくとたくさんの項目が出てきます。
改造で失敗しないために、目的とする結果に影響を与える要素については明確に定義しておかなくてはなりません。
設備の改造仕様を準備するメリット
設備改造前に改造仕様を準備するメリットを少し紹介します。
本来は改造仕様を準備するべきですが、仕様もないのに設備改造している生産技術者は大勢います。
上長の正式承認を取って・・・というつもりはありません。
マネージメント職の人物の技術が高いわけでもないですし、細かいところをすべて確認しているとも思いません。
生産技術者および設備製作会社で共有できるようなもので構いません。
メリット1 抜け漏れを予防できる
1つ目のメリットです。
文書にすることで、網羅的に情報を整理することができます。上述したメカ、電気、ソフトの仕様を列挙したようなイメージです。
また、1度のみの検討では漏れがある可能性があるため、取引先とのやり取りをしながら情報を更新したり、細かい部分を確認しながら情報を更新していけばよいと思います。
メリット2 要求事項を整理・共有できる
2つ目のメリットが情報の整理と共有です。
他人を動かして仕事をうまくこなすためのポイントは、他人が見てわかりやすい情報を提供して共有することです。
まとまった形で情報を取引先に展開すれば、違った意見をもらえる可能性もあります。
また、懸念点がある場合にはその懸念事項についての意見も得られるかもしれません。
ただでさえ、想定外のことは起きるものです。
事前に想定外の可能性を減らしておくことができれば、失敗するリスクを下げられます。
仕事のできない生産技術エンジニアにありがちな設備改造の事例
これまで見てきた設備改造の悪い事例を紹介します。
稼働している量産設備の改造となると、量産設備を止めるという時間的な制約があるため、高いレベルでの仕事品質が要求されます。
失敗すると2度手間になったり、量産活動を阻害することにつながります。
設備改造するような場合は、何か課題があるからです。
不良率を下げるため、サイクルタイムを短くするため、品質問題の対応のため、、、など生産現場が持っている課題を解決するためです。生産技術者の仕事はそういった課題を解決することですが、そうならない場合も残念ながら存在します。
正式な改造仕様がない
面倒なことを避けようとする人は設備改造の仕様など準備しません。
メールベース、口頭ベースのやりとりで結果だけを求めます。情報としてまとまった文書が存在せず、手抜き仕事をする人達です。
そもそも必要な情報をまとまった形で整理できないので、見落としや確認漏れが発生します。
そんな状態で発注しても後で追加になったり、想定していない問題が起きたりするだけです。
残念ながら、これは正攻法ではありませんし、失敗リスクを高めるだけです。
期待する結果を求めるのであれば、事前検討するべきなのです。
仕事の出来の8割は準備・計画で決まると考えています。
設備改造の話が全く具体化しない
仕事ができない人によくある事例です。
担当者によってはいつまでたっても改造の議論が進展しないことがあります。
若手社員なら理解できますが、30代、40代の熟練の生産技術者でこの仕事ぶりなら少し失望してしまいます。
現場側から催促を受けても、いつも煮え切らない回答をする生産技術者たちです。
いったい何が問題なのか理解できません。
できない理由があれば、その理由を現場に説明するべきです。予算の要因、技術的な要因などかもしれません。
あるいは、問題の真因が設備ではない(たとえば、部品要因や設計要因)ので、設備改造自体が不要なのかもしれません。ところが彼らは説明できません。
説明できない理由は、その問題が自分にあるからです。
“自分がその問題を処理できない”ということが問題なのです。
自分が処理できないのであれば、上司にでも相談して別の生産技術者に担当してもらうこともできます。
ところが、そういった提案もできないのです。。。。
これは設備改造に限らず、職業や業界を問わず仕事全般の話になりますが。
以上、簡単ですが設備改造についてのポイントを紹介しました。