200420 ネジ締め工程の特徴と管理ポイントの概略紹介

今回は「ネジ締め工程の特徴と管理ポイントの概略紹介」というテーマで話をします。生産技術エンジニアの経験をもとに、ネジ締めという工法のメリットや量産工程でのポイントについて紹介します。

ネジ締め工法の概略と背景

ネジを締めるという部品の連結方法はどこでも使用される一般的な連結方法です。
たいていナットランナーといって、トルク制御できる自動のドライバーを利用して量産工程では管理されています。タッピングによるネジ締め、ネジロックを仲介するネジ締め、ネジ穴にネジを挿入するだけの一般的なネジ締めなど、いくつか種類は存在します。

ネジ締め工程が量産工程に含まれるかどうかは、製品設計次第です。ネジ締めは一般的で確立された工法であるので導入しやすいというメリットはありますが、ネジ固定にしてしまうとネジの材料費が増えてしまい製品価格がわずかに高くなってしまいます。

ネジ締めをしない代わりに、カシメなどを利用して部品の締結を行う方法も存在します。こちらはネジの材料費がかからないので、長期的な量産においては材料費の面でメリットは存在します。ところが、カシメ工法を採用すると製品の分解ができなくなってしまいます。予想不良率と材料費のメリットを十分に考慮して判断する必要があります。

ネジ締め作業の制御方法

ネジ締め工程は一般的にトルク制御か角度制御で管理されます。
トルク締めと呼ばれる締め方は、一定の締め付けトルク(例えば5Nmとします)をターゲットトルクとして、ネジの締め付け作業を行います。この時の最終角度を判定することも可能です。
一方、角度締めと呼ばれる締め方では、規定トルク(例えば5Nmとします)に達してから、設定しておいた角度(例えば10°とします)を狙って締め付け作業を行います。この時の最終トルクを判定することも可能です。

この2種類の締め付け方法のどちらかを採用しますが、両方を採用することはできません。トルク狙いでネジを締めると、その時の締め付け角度は5°になるのか、20°になるのかわかりません。ある程度の実績データをもとにざっくりとした管理幅を規定することは可能ですが、あくまで結果論です。
角度狙いでネジを締めると、その時の最終締め付けトルクは5.1Nmになるのか5.6Nmになるのかわかりません。こちらも実績データから範囲を設定することは可能ですが、結果論になります。
※以前この背景を知らない顧客が、トルクと角度の2つの管理を要求してきたことがあります。

ネジ締め工程の管理ポイント

私がこれまで見てきた製造現場では、トルク締めによるネジ締め工程が一般的でした。
トルク締めを行い、参考値として締め付け角度を判定設定している事例もありました。ネジ締めというのは、簡単な工法ではありますが、意外と曲者です。締め付けトルクが出ていても、ネジが締まっているかどうかはわからないからです。例えば、部品不良で部品の下穴に不具合があってネジ座面が正しく座っていない場合でも、締め付けトルク自体は発生します。

現場では、ネジ締め後にリニアゲージでネジ頭の高さを判定したり、作業員が目視確認したり、ネジ部にマーキングで印をつけたりといった方法が採用されていました。いずれも大きくネジが浮いている場合には効果的ですが、微妙なネジ浮きについては正確な判定がしにくい方法でした。
10年以上生産技術をやっていて、下穴不良によりネジが浮いていた事例の発生率は極めて低い印象です。このあたりは、発生率を考慮して対策を検討すればよいと考えています。

量産工程での不具合事例1

続いて量産工程でのネジ締めの不具合事例を紹介します。
一番多かったのがネジナメです。ネジナメとは、ナットランナーのビット先端がうまくネジ頭の穴に入らない状態でネジの締め付け動作を行い、ネジ頭がつぶれてしまうことです。 ナットランナーの位置調整やビットの押し付け状態を調整すれば、多少は改善しますが、最も効果的なのはネジサイズとネジ頭の形状です。

ネジサイズがM6以上であれば、問題になることはあまりありませんでした。一方でネジサイズがM3程度になると、ネジナメの頻度が増えます。M3サイズで安定的にネジ締めを行うためにはトルクスタイプのネジを推奨します。量産での切り替えになれば、材料費の面でのハードルは上がりますが、現場のロスによる損失と材料費アップを比較して判断すればよいかと思います。

量産工程での不具合事例2

2つ目の不具合事例はネジが締まっていない製品の流出です。
この発生原因を説明すると、その生産ラインでは最終製品での特性不良率が高く、不良品の調査や救済をしていたため、製品を分解していたのです。専属の担当者が対応していたのですが、そういった異常作業が増えると現場の管理は困難になっていきます。特性不良の発生状況によっては生産自体が成立しない状態になり、そういった異常作業をしていて、その1台が流出してしまったということです。

簡単に言えば2次災害です。工程不良が少なければ、こういった品質不良が流出することはなかったでしょう。顧客への品質問題を起こすと、本来正常に機能していたネジ締め工程に新しい対策を盛り込まなくてはならなくなります(ところが、そんなことをしても意味がないのです。本来の問題は特性不良と現場管理だったからです)。



以上、ネジ締め工程の特徴と管理ポイントについて紹介しました。

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