201026 日本の製造業が遅れていると感じる理由
今回は「日本の製造業が遅れていると感じる理由」というテーマで話をしたいと思います。もともと違和感を持っていた事柄が世間でも取り上げられたので、このタイミングで記事を書きたいと思います。
まず、先日のツイートです。
日本の製造業を正しく描写した記事です。
— suzuki takeshi (@suzukitakeshi19) October 21, 2020
海外の取引先が3Dで設計しているのに対し、日本のメーカの多くが2Dで図面をやり取りしています。日本の従業員の高齢化の影響もありますが、テクノロジーのトレンドに全く乗り切れていない印象です。https://t.co/RvOu0Uod95
以前出版した「生産技術の教科書Ⅰ」で設備図面の形式について記載していました。2010年代後半になると海外の取引先が3次元メインの設備図面だったのに対し、日本の取引先は2次元図面のままだったのです。
3次元と2次元の設計ソフトの特徴
3次元の設備図面は詳細構造が確認しやすく、構想段階での抜けや漏れを防止するうえで効果を発揮してくれます。わざわざ説明を聞かなくても、図面を見ればエンジニアは理解できます。一方で2次元の図面は設計者の図面の描き方次第で、伝わらない情報が出てきます。毎回設計者が構想説明をするという作業も発生します。
こういった点から、3次元の設計ソフトを採用すべきなのです。ソフトの価格についてもそこまでのハードルにはなりません。難点を挙げれば、操作方法を新しく学ぶというコストが発生するだけです。要するに、導入できていない会社は超短期的な視点で導入コストを嫌ったために長期的な利益を無視したということです。いかにも古い日本体質なように思えます。
先日の日経新聞の報道では、3次元データではなく2次元図面でやり取りしているため効率化が進まないということでした。簡単に内容紹介すると、取引先同士で図面ファイルを共有すれば業務効率が大きく改善できるのですが、取引相手が3次元対応ソフトを持っていないために、あえて2次元図面でやり取りするためにその効率化が阻害されているということです。
変化に対応できない日本の組織
ちょうどコロナの対応で苦戦していた日本政府の対応を皮肉った海外報道があるので紹介したいと思います。上述の3次元の設計ソフトの話と内容は同じです。印鑑やFAXを今でも平然と利用していて、20年程時代遅れなのですが、当人たちはその認識がないのです。
そのときのツイートです。
このツイートの添付されているBBSの報道が「海外から見た日本」です。
今日もBBCで日本の報道がありました。添付の26分頃です。
— suzuki takeshi (@suzukitakeshi19) July 26, 2020
日本での時代遅れのfax 、判子、対面式の面談重視、こういった生産性を落としている要素が報道されています。技術立国の日本で「コロナの感染者集計をfaxでやっている」というのも報道されています。情けない。。https://t.co/GdRHsAIE7k
繰り返しますが、海外から見た日本は「fax 、判子、対面式の面談重視」です。この仕事のやり方で生産性が上がるはずがありません。
日本しか見ない、自社しか見ない、自分の周りしか見ない、そんな状態で判断をするから時代遅れの行動しかできないのです。世の中は進化しています。ところが日本の古い組織の多くは浦島太郎状態です。外部にアンテナを張っていないし、新しいものを取り入れようともしない。過去の延長で同じようなやり方しかできておらず、不毛な作業ばかりに時間を奪われ疲弊する、そんな仕事のやり方をしているように見えます。そしてその現実に気付いていないように思えます。
日本の組織が変われない根本的な原因は何か?
なぜ日本は変われないのでしょうか?
私なりに考えた結果、その理由の1つは経営者や従業員の問題だと考えています。
年功序列方式で同じ会社で長年勤務してきたサラリーマン経営者では、アメリカ企業・中国企業にいるような起業経験のある経営者と同じ仕事はできません。1つの会社しか知らない、すでに出来上がった組織でしか仕事をしてこなかった人物には大きな改革をすることなど期待できないのです。
中年社員も同じです。これまで同じことを何十年もやってきたせいで、新しいことをゼロから始めるという作業に慣れていないし、学ぶ意欲もありません。インターネットと育った若い世代はテクノロジーに対して親和的ですが、経営者を含めた中年社員はテクノロジーに疎くなりデジタル技術の受け入れに対して保守的になります。
これは経団連や政府についても同じです。起業経験のないサラリーマン出身の重役では、そういった新しい技術の導入を含む変革者として適していないと考えています。
良い事例は台湾のIT大臣オードリー・タン氏です。彼は天才プログラマーといわれ、アップルでも活躍した若手経営者です。彼のような実務を分かった人物を要職に採用しない限り、名前だけの改革に終わるのです。