201122 理想論しか見えていない品質保証部の事例紹介(本社と現場の大きなギャップ)

今回は「理想論しか見えていない品質保証部の事例紹介」というテーマで話をします。典型的な本社と現場の認識がずれている象徴的な事例ですので製造業界で仕事をしている人は参考にしてください。

品質保証部の役割と現場での品質責任

生産技術の仕事をしていると現場よりの仕事がメインになります。
おかげで、どんな生産工程で、どんな設備を利用していて、どんな項目の品質管理をしているかを一番理解しています。会社の体制によっては品質保証部よりもよっぽど品質管理項目を理解しています。(会社によっては品質保証部がすべて現場の管理項目を担当している場合もあります)

私が以前勤めていた会社では、品質保証部の業務は顧客のクレーム処理でした。生産現場のない本社に現場を知らないメンバーが数十名もいるという組織でした。各工場にも品質保証部は存在していたので、本社に品質保証部が存在する意味はあまりないのですが、大勢の人員がいて、品質だけを統括する役員もいました。

一般的に、品質保証部は顧客目線で社内の関連部署と対抗します。顧客を代表しているという立場が彼らの言い分です。したがって品質をおろそかにすることは許されませんし、顧客への品質問題の説明責任も品質保証部が担います。 社内で発生した問題であっても、品質保証部に内容を連絡すると問題が大きくなります。顧客への流出リスクがない場合は、品質保証部に連絡することはほとんどありません。話がややこしくなるだけだからです。

ところが、顧客への流出リスクがある場合には、品質保証部に連絡しておかないと現場が悪者になってしまい、損失リスクも大きくなり経営問題に発展します。したがって、そういった大きなリスクがある場合は経営陣に話を上げ、経営幹部から品質保証部に情報が入るというのがよくある流れになります。

生産技術部や製造部から見れば品質保証部は、面倒な存在でしかありませんでした。日常の品質管理・維持の仕事を助けてくれるわけでもなく、顧客問題が起きたときにあれこれ文句を言うというのが製造部や生産技術部との関係だったからです。

現状を理解していない本社と現場のギャップ紹介

本社と現場で認識ずれがあった事例を1つ紹介します。
新ラインの量産承認プロセスの審議会で、生産技術部の担当者が量産性検証結果のレポート(サイクルタイム、OEE、工程能力、不良率など)を発表していた時でした。この社内審査に無事合格すれば、生産ラインを製造部への引き渡しが完了し、正式に量産開始できるというイベントです。

そのイベントで、他拠点(他国)の不具合対策の実施状況を質問してくる品質担当役員がいました。担当の生産技術エンジニアは他国の不具合を知らなかったので、対策を反映していることを答えることはできませんでした。

あとで詳細を確認すると、1年ほど前に他拠点で大きな品質問題に発生した不具合だったことがわかりました。ところが、もともとそんな情報を受けていないので対策の取りようがありません。生産技術部や製造部にだけ連絡が来ていないのかと思えば、品質保証部にも連絡がないのです。情報を展開していないのに対策を求められても対策などできるわけがありません。(その品質担当役員は情報が伝わっているものと認識しているのですが、実務レベルではそうなっていないのです)


このように、ほかの部署に対して平気で文句を言うくせに、自分たち(各拠点の品質保証部)でも全く連携が取れていないのです。言っていることとやっていることが矛盾しています。

本社品質保証部の役割と本来とるべき対応

各拠点同士でやり取りするのも1つのやり方ですが、グローバル企業では漏れが発生します。体系的に管理するために本社の品質保証部がグローバル窓口となって管理する役割を持っているはずでしたが、上述の通りです。

会社規模が大きくなると、本社と現場はこういった認識のずれがいたるところで出てきます。そもそも、現場のない本社で現場を知らないメンバーが製造現場の品質について話をするのは限界があります。

また、問題が起きてから動くのではなく、本来は問題が起きる前に予防対策すべきなのです。具体的な話をすると、製品設計段階での不具合要因の潰し込みや試作段階・工程設計段階での問題の潰し込みです。残念ながら、そういった場面に品質保証部は全く関与せず、量産段階になって、後でいろいろ文句を言ってきます。すでに手遅れです。
量産開始後にも定期的に品質管理を主導している様子もなく、ただ他人から出てくるレポートに目を通すだけでした。事後対応ではなく、事前に潜在的な問題に目を光らせるべきなのですが、そうはなっていないのが現状です。


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