201201 仕事ができない生産技術者が工場に派遣されたときの話

今回は「仕事ができない生産技術者が工場に派遣されたときの話」というテーマで話をします。なかなか物事は最適論で進まないことがあるので、現実はこんなものと捉えてもらえばと思います。

人を派遣するときの人選

出張といえば、業務上の目的で社外へ移動して必要な作業を行うことです。製造業の技術者の場合は、生産工場での現場の仕事です。国内に工場がある場合は国内拠点ですが、私の場合は海外工場がメインだったので、出張といえば海外でした。

話だけ聞くと華やかに聞こえるかもしれませんが、華やかさなど全くないどころか、内容によってはひどく惨めな出張になる場合もありました。残念ながら、変な人選・判断をしてせいで苦労している出張者もいました。 私が見たところ以下のような背景によるもでした。

派遣するときの間違った人選をする理由
  • 出張の感覚がマヒしている
  • 管理者の方針
  • 人材不足(他の人員も出払っている)
  • 他の案件に優秀な人材をあてたいので消去法で人選 

出張の感覚がマヒしている

海外出張の頻度が増えると、徐々に特別だという意識がなくなります。営業部員が近所の顧客訪問する感覚で海外派遣をする人物もいます。慢性的にメンバーが出張にでるようになると、海外出張がたいしたことに思えなくなるのです。

また、出張を繰り返すうちに飛行機代やホテル代などに関しても感覚がマヒしてくるのだと思います。「この人が出張しても効果はないだろう」と思える案件や、「こんなに大勢派遣する必要がないだろう」と思える案件、超短期の顧客監査だけのための海外出張など、変な出張を平気で許可することがあります。

管理者の方針

「誰でもいいからとにかく出す」という結果にコミットしない方針を持つ人物もいました。経費の無駄遣いに思えるような振る舞いを許容する責任者もいました。
なんというか、形式だけ取り繕うために適当な人物を派遣して、「人を出しました」という行為をアピールするタイプです。ただし大切なのは結果であって、その派遣行為ではないはずです。

人材不足(他の人員も出払っている)

たまに見かけるパターンですが、ほかのメンバーも出払っているため人選ができない場合です。また、突発的な出張要請があったため、ほかに対応できるメンバーがいない場合です。実際は探せばどこかにもっとマシな選択肢はあるはずですが。。。
適任者がいないならば、ほかのグループに依頼したり、出張自体をあきらめて現地工場で対応をしてもらうことも可能です。人選・出張自体の有無を含めて最適な判断をすべきだと思うのです。

他の案件に優秀な人材をあてたいので消去法で人選

マネージメント層はある程度全体が見えています。ほかに優先事項がある場合は、そちらにリソースをかけます。つまり、優先順位が低いと判断された出張案件には、残念ながら消去法的で恣意的な人選になります。
出張を受入れる側の拠点にとっては納得のいくものではありません。「コイツが来てもダメだろう」と思える場合は、受け入れ拠点は拒否権を発動します。嘘みたいな話ですが、大企業は意外とこんなものです。


私が出張する場合の判断基準とその理由

私も何度も出張したこともありますし、他人を派遣したこともあります。私の考えは以下のようなものでした。

  • 費用対効果(役立たずを派遣しても費用の無駄)
  • 出張は遊びではない(中には出張を旅行と勘違いしている人物もいる)
  • 受け入れ側に顔向けできない人材は派遣しない(人選が悪いとマイナスにしかならない)

出張の内容に応じて人選していましたが、適任者がいない場合は自分一人で出張することもありました。海外拠点に駐在していて、受け入れ側の立場を分かっていたし、仕事内容もよく理解していました。

人選ミスして無謀な人材派遣をしても、お互いよい気分にはなりませんし、目的としている業務自体も完了できません。それなら最初から出張する意味がないと考えています。変な人選して何の結果も出ないなら、時間とお金をかけて出張する意味がないのです。

話せばキリがないのですが、他人の仕事ぶりを見ていて「変だな」と思う事例があるのでいくつか紹介します。

失敗事例1)現地から受け入れられない

同じ社内とはいえ実力社会です。期待されていない人材や著しく期待を下回る人材の場合、出張先で相手にされません。特に受け入れ先に駐在員がいない場合は、容赦なく冷たい対応を受けることがあります。仕事が進まないばかりか、本人が惨めな思いをすることになります。

駐在員がいれば、駐在員としての立場や役割もあるため、出張者を粗末に扱うわけにもいきません。駐在員もいなくて、現地人と何のつながりもなく、信頼関係も築けていない場所に場違いの人間が出張すると悲惨です。

そもそも出張するような事例は、現地で対応できない事柄のサポートを依頼する場合がほとんどです。したがって、パフォーマンスが期待できない人物に対して冷たい扱いを受けるのも当然です。

失敗事例2)課題を解決できない

出張する場所によっては完全にアウェーな環境です。
たとえば、ヨーロッパや北米に出張するとなるとアジアとの時差があるため、日中はアジアに頼ることはできません。わからないことがあっても、自分で解決するしかありません(自分で問題解決できない人物を出張させるべきではないのです)。

たまたま、同じ拠点に別案件で来ていたエンジニアのフォローをしたことがあるのですが、その人物の仕事ぶりは次のようなものでした。

彼は自分で設備の問題を解決できないので、A4サイズくらいの量のメール文を日本の設備制作会社に何通も送付するのです。時差がある環境では、電話ができないのでどうしてもこういうやり方になるのでしょう。メールに費やす時間もさることながら、相手に読ませる負荷も相当なものです。

こんな問い合わせの対応をしていたら、設備設計者は本来の業務は何も進まないだろうというものでした。設備会社の方が立場が弱いので、取引先は親切に対応してくれていましたが、こんな仕事のやり方は時代遅れです。


内容を理解している人物が対応すれば、設備デバッグは20~30分で終わる仕事です。ところが、人によっては何日たっても終わらないのです。まるで、出張した人物ではなく、はるか遠方にいる設備メーカ―の人物が異国の設備の問題を解決しているようでした。問題対応できないのであれば、出張する意味などないのです。

失敗事例3)何をしに来たのかわからない

次の事例は出張内容に問題がある場合です。
まれに受け入れ側の手間を考慮して、「自分たちが出張して対応します」という場合があります。配慮はありがたい話なのですが、明らかに出張に見合わない仕事内容で出張するのは経費とリソースの無駄使いに思えるのです。

例えば、「新しい生産ラインのレイアウト準備で出張します」という話がありました。 どんな内容かというと、設備を設置予定エリアの床に設備の設置マークをするというものです。何も難しいことなどなく、誰でもできる内容です。そんな仕事のためにわざわざ海外出張する必要はないのです。

他にもこんな事例もありました。「故障した設備を復旧するために出張します」という出張です。依頼もしていないし、故障内容も把握できていないにもかかわらず、こんな押し売りをする組織もありました。
設備の設計者が来るのであれば、理解できます。故障部位の交換部品を持参してくれるのであれば理解できます。ところが、設備設計者でもなく、故障内容も理解していない人物が来たところで何の役にも立つはずがありません。 「本社は暇なのかな?」と思える内容でした。その時はもちろん断りました。



会社規模が大きくなると、出張の目的と投資効果がわからなくなってくるのかもしれません。人を出すことが目的なのではなく、課題を解決することが目的のはずです。いたってシンプルに思えますが、どうも変な陰謀や意図があるのではないかと思われる行為が現実に起きています。


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