210307 競合と協力すれば大きなメリットになる

今回は「競合と協力すれば大きなメリットになる」というテーマで話をします。日本では産業の新陳代謝が進まないこともあり、業績がよくない会社でも存続しています。買収や合併で生まれ変わる事例もありますが、日経平均の登録銘柄をみてもアメリカに比べて変化の乏しい印象です。そんな日本企業が業績を改善するための提案を紹介します。

日本企業が天然ガス購入で損している事例の紹介

週刊ダイヤモンドの記事で、天然ガスの購入に関して「日系の大手数社が個別に交渉していて、高値で材料を購入している」という話がありました。日本は年間約8000万トンのLNGを輸入していて、世界一のLNG輸入大国です。ところが、国内の20社が自前で調達するため、価格交渉力がないのです。(韓国は1社、中国は3社、台湾は1社がそれぞれ購入。LNGの売り主はエクソンモービル、BP、ロイヤルダッチシェルなど。)

会社の垣根を越えて一括で購入すれば大きな価格交渉力が持てるのですが、そうなっていません。まあなんと言うか、「日本国内で競争することで損をしている」という印象です。他にもこういう事例はあります。

過当競争環境にある日本の会社

例えば、地方銀行です。長期的に海外に住んだことがある人であれば気づくと思うのですが、海外では少数の銀行が全国をカバーしています。例えば、大手5社しかないとかそういうレベルです(仮に日本で例えると、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、住友銀行の3社しか存在しないようなイメージです)。
一方で日本だと、○○銀行、××銀行、◇◇銀行、△△銀行が地方ごとに存在していて、日本全体で考えれば効率の悪い運営をしているように見えます。(20年ほど前から国内の銀行の統合が相次ぎ、徐々に海外の銀行に近い状態に近づきつつありますが・・・)

少し前の報道では、「その地区で独占になる」という理由で統合を見送られたケースもありました。確かにその地区だけで見れば独占になるのかもしれませんが、日本全体で見たときにそんな部分的な話をしてもしょうがないわけですよね。なんかこう変だなという印象です。


こういう事例が日本国内には多数存在しています。
例えば、家電メーカーではパナソニック、ソニー、三菱、シャープ、東芝、日立と多数の会社が存在しています。
自動車業界でも、トヨタ、ホンダ、日産、三菱、スズキ、ダイハツ、マツダ、スバルと実に7社も存在しています。

これは海外だとあり得ない状況です。ドイツであればフォルクスワーゲン、BMW、ダイムラーの3社。アメリカではGM、クライスラー、フォードの3社(テスラを含めても4社)。こういった具合に大体3~4社なんですよね。 簡単に言えば、日本は競合会社が多くて国内で過当競争を行ってるということです。

過当競争による価格競争と利益率の悪化

日本の生産性が低いのは中小企業が多すぎるという事実もあります。消費者の視点で考えると適度な競争はあった方がよいのですが、今は国内で競争してる場合ではありません。(過当競争になると最終的には価格競争に陥るだけです)
日本企業の国際的な影響力を落としている中で、国内競争で消耗するのではなく日本全体で国際的な市場で競争できる体制を作るべきだと考えています。

競合と協力すれば互いにメリットが生まれる

なかなか競合同士で協力することは難しいかもしれませんが、世の中にはうまくやっている事例も存在します。


航空会社などはコードシェア便といって、ANAとユナイテッド航空が同じ路線のフライトで協力しています。JALとアメリカン航空も同じことをやっています。需要に合わせて飛行機を共有することで顧客への定期運航が充実するばかりではなく、乗組員のシェアによる顧客への語学サービスの面でも大きなメリットになっています。

トヨタのハイブリッド技術の無償提供も同業者にとってはありがたい提携です。EVではなくハイブリッドシステムを世界規格にしたいトヨタの狙いもあるかもしれませんが、各社が膨大な開発費用を投資して独自に開発するよりは全体最適になっています。

ビール大手4社の配送提携も話題になりました。各社が独自に配送網を準備するのではなく、ロジスティック部分を共用することでコスト削減しようとするものです。


自前ですべての機能を準備して高い固定費構造にするよりも、自社の強みを伸ばす活動に専念して、それ以外の部分は効率的に協力先と提携した方が全体としてのメリットは生まれます。
日本経済は30年間停滞していて、OECD加盟国の中で最低レベルの生産性です。自社の中だけですべてを完結するのではなく、同業他社とうまく連携して国際社会でプレゼンスを高めてもらいたいものです。そのためには会社トップレベルでの協力と政府による後押しが必要と考えています。



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