191004 生産技術者や経営者が検討すべき遊休設備の処理について

今回は「遊休設備の処理について」というテーマで話します。
生産技術の仕事を長年やっていると、どこかがで必ず遊休設備の処理について考える場面が来るので今回取り上げてみました。


遊休設備とは?

そもそも遊休設備とは何かという説明から始めます。
遊休設備とは、製品を製造するために使用していた生産設備で、製品生産終了等の理由により現在未使用の状態にある設備のことです。 金型や大型の治工具も含みます。生産しなくなったのであれば、廃却すれば・・・と思うかもしれませんが、そう簡単には捨てられないのです。


遊休設備を簡単に廃却できない理由

たとえば、自動車業界で生産技術の仕事をすると製品の生産期間が5~10年くらいです。生産終了した製品であっても、サービスパーツとして自動車の修理目的で製品を供給する責任がありますので、定期的に製品を出荷しなくてはなりません。出番のない設備や金型もその間は廃却することができないのです。

遊休設備を保有することによるデメリット

新しい工場は新規設備ばかりなのでこういった心配をする必要がないのですが、古い工場では随分前に投資した設備を保管しておかなくてはなりません。生産ライン1本の単位で物量を考えれば、どれほどのインパクトかわかると思います。

経営者の視点で見れば、この設備保管スペースは無駄以外の何物でもありません。たいして稼働もしていない設備を工場の中に配置し続けることで、新しい設備を設置するエリアも限られます。そもそも会社の敷地面積を、何の価値も生まない資産の保管に利用するという点で、リソースの有効活用ができていないことになります。

ではどうすればよいのでしょうか。いくつか私の考えを紹介します。

対策1)遊休設備を思い切って捨てる

簡単な方法ですが、捨ててしまうことです。
とはいえ勝手に捨てるわけにはいきません。その製品を納めている顧客に事前承認をもらう必要があります。当初からサービス期間が契約で明確になっている場合は、それに従います。といっても、自動車ビジネスは製品の供給期間が長く、車種の売れ行きによっても毎年の生産数は変動します。そんな先々のことなどを取り決めしていないことがほとんどです。

生産終了品については一定期間での供給数量を提案して、それを最後に打ち切るということにしてしまえばよいのです。回答期限も設定しておいて、回答がない場合は了承したとこととしてもらう、などです。

補足ですが、こういったアフターサービスの話になると、取引先も判断できない場合がほとんどです。10年以上前に取り交わした契約の詳細や背景などわかりませんし、そもそも当時の担当者が社内にいるかどうかも不明です。

対策2)サービス部品を後継機種で対応できるようにしておく

Aという製品を10年間生産して生産終了したとします。Bという製品を3年前から生産しているとします。AとBの電気的、ソフト的インターフェースを統一しておいて、Aの製品の代替としてBの製品を使用できるとすれば、Aの製品をサービスパーツとして製造する必要はありません。

メカ的なインターフェースはおそらく統一できないはずですので、取り付けは少し工夫しないといけないかもしれませんが、初期の電気・ソフト設計段階でこういったことを考慮しておけば、生産終了品の代用は可能になるはずです。とはいえ、製品開発部のソフトウェア設計者は、生産終了後の設備のことなどを検討などするはずもないので、マネージメント層の長期的な視点でハンドルする案件になります。

この方法を採用しておけば、A製品が生産終了した後にA製品を生産するための設備を保管しておく必要はなくなります。
小さな工夫ですが、遊休設備の処理の面では大きなメリットがあります。

対策3)遊休設備で生産可能な類似機種を受注する

3つ目の方法は、その生産ラインで流せる類似製品を受注することです。
完全に使用できることは期待できないのでせめて7割くらいの設備が使用できる状況をターゲットにすればよいと思います。対応できない設備は新規で準備します。それ以外の設備は、一部改造して新製品を流すようにします。

その設備が使用できるかどうかは、製品設計に大きく依存するので戦略的に対応する必要があります。この考えは、基本的に生産ラインの利用期間の延長になります。新規ラインを準備することに比べれば、設備投資も大きく削減できます。
財務状況に余裕がない会社にとっては、効果的な方法になります。設備償却もほとんど済んでいることから、設備償却の点では利益を押し上げる効果があります。

遊休設備を使いまわすデメリット

ただし、この案にはデメリットもあります。
設備が古く、長期的な耐久性や信頼性に不安があるということ。そして、自動化ができないという点で労務費の面では長期的な改善ができないことです。

したがって、対策3を検討するのであれば、リスクの少ない小さなビジネスに適応することです。
生産ボリュームが多く、生産期間の長い大きなビジネスに適応すると、大きなリスクになります。

遊休設備を他の新規ラインに転用するという考え

これは、新設ラインに一部の遊休設備をはめ込むという考えです。
この話を提案する人がいますが、個人的には賛成しません。大きな理由は、設備の構成部品が古いからです。例えば、PLCなどは10年前と今では性能が大きく違います。パソコンをイメージしてもらえばわかりやすいと思いますが、10年前のパソコンなど使い物になりません。PLCも同様です。

PLCの製造元も古い型式のPLCの販売などしていません。たいてい生産終了していることから、故障しても購入できません。いつまで耐えられるかわからないものを、これから長期にわたって使用するのは大きなリスクです。

また、メンテナンスの面でも異色を放つことになります。設備の面倒を見るエンジニアが、その設備だけ別のソフトを使用して設備のデバッグをしないといけなくなります。このような理由で、使い古した設備を新機種に転用するという考えには反対です。

上記はあくまで組み立て設備の話ですが、成型機、加工機、ダイカストマシンなど標準設備であれば、そのまま継続して使用すればよいと思います。償却の済んだ機械を継続使用することで会社の利益を押し上げてくれます。


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