191005 生産技術者が理解しておくべき設備の減価償却について

今回は「生産技術者が理解しておくべき設備の減価償却について」というテーマで話します。
今回の話は生産技術というよりは経理の話になります。設備投資を扱う側としても知っておくべき内容だと思いますので、紹介しておきます。興味のある方は、会計の書籍を読んで勉強してください。

設備の減価償却の考え方と経理処理

例) 1億円の生産設備を購入したとします。使用予定期間は10年とします。

この場合どういう扱いになるか、キャッシュフロー計算と損益計算の面でそれぞれ経理処理を簡単に説明します。

キャッシュフロー計算(C/F)

これはお金の動きを表しただけのものになります。1億円の設備を購入して、支払い条件が納入後3ヶ月以内だったとします。2019年9月に納入された場合は、2019年の12月までに売り手に対して1億円を支払います。

損益計算(P/L)

損益計算とは会社の売り上げや利益をまとめた資料になります。どの会社も統一基準に従って作成する必要があり、業界や職種に問わず同じ書式で表現されます。

上述の1億円設備の場合は固定資産化されます。固定資産とは長期間にわたって継続使用される資産のことで、短期で計上するものではなく長期間にわたって計上されるものです。仮に償却期間10年で定額償却とすると、毎年1000万円分の減価償却という形で売り上げから差し引かれます。例えば、2020年の売り上げが5000万円だったとすると、1億円設備の償却費だけで利益計算から1000万円差し引かれます。


上述の1億円設備の場合で簡単に整理すると、
キャッシュフロー計算上では、1億円は取引先に支払うために手元には残りません。
損益計算上では、毎年1000万円分の費用が計上されます。(短期で1億円ではありません)
繰り返しますが、経理上の利益が出ているからといって手元にキャッシュがあるわけではないということです。


減価償却済みの設備を使用し続けるメリット

すでに減価償却済み設備を継続使用するメリットはここにあります。
償却済み設備であれば売り上げ計算から固定資産分の費用を計上する必要がなくなります。
以上が簡単ですが、設備を購入した時の経理処理の流れになります。


ポイントとして、お金の流れと損益計算は別であるということです。会計の仕組みを理解していない人がよくする勘違いですが、「利益が出ている=会社にお金がある」ということではありません。ビジネスの世界では買掛、売掛という方法を使用します。
例えば100万円の材料を購入して支払いが1ヶ月後だったとします。その材料を加工して製品を出荷して200万円で販売したとします。その入金が2ヶ月後だったとします。この場合の経理処理はどうなるかというと、出荷処理をした時点で売り上げ計上します。ところが、物の移動とお金の移動は一致しません。 材料の支払いは1ヶ月後、製品の入金は2ヶ月後です。

売上計上した時点で、その会社にあるお金を説明することはできないのです。 この売り上げ・利益を表した指標が損益計算書(P/L)です。一方、お金の移動を表したものがキャッシュフロー計算書(C/F)です。


以上の話を踏まえて最後に生産技術エンジニアの話に戻すと、仮に売り上げや利益があったとしても十分な現金を持っていない会社では新規設備投資はできません。勤めている会社の財務状況をみれば、将来的な仕事のやり方が少し見えてきます。


※関連書籍)財務3表一体理解法 (著者:國貞克則) 
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