191012 量産ラインの準備と設備の内製化【メリットとデメリット】

今回は「量産ラインの準備と設備の内製化」というテーマで話します。
会社によって仕事のやり方はそれぞれ違います。生産技術職の主な仕事は量産設備の導入ですが、このやり方についても上位方針や会社の体制でやり方は様々です。いくつか事例を紹介します。

【目次】

生産技術部で採用する量産設備の準備方法

生産技術部で量産設備を準備する方法は主に次の3つのやり方があります。

  1. 外部の設備メーカーに発注する場合
  2. グループ内に設備製作専用の会社があり、そこに発注する場合
  3. 自分たちで設備を内製する場合

私が経験した中では1の方法が一般的でした。大企業になると、グループ内に専門部隊がいるので、2のやり方をしている会社もありました。ところが事業部が違うと「価格が高い」などの理由により、一定の割合以上はグループ内に発注しない場合もあるようです。
本来の目的は社内向けに連携を強化してグループシナジーを強めるはずですが、各社で社内事情はそれぞれあるようです。同じ事業部内に設備製作専門部隊を持っている場合は、3の場合もありました。

今回は3の「設備内製」についてメリットとデメリットを少し話します。

量産設備内製化のメリット

まずメリットから見ていきます。

量産設備の投資金額を抑えることができる

見かけの投資金額は下げることができます。上層部方針で投資予算を絞られたりした場合には効果的です。社内稟議を通す時に「見かけの費用」は下がりますので、財務状況が厳しい場合は稟議を通しやすくなります。ただし、固定資産登録する場合は社内工数を含めた形で資産登録することになりますので、見込み工数を考慮してメリットがあるのであれば設備内製もよいでしょう。

設備設計・組立することでエンジニアの技術力が上がる

設備を製作するとなると、メカ・電気・ソフトの設計から部品の選定、装置組み立て・配線・デバッグ・検証作業をすべて自分でこなさなくてはなりません。設計段階で、細部にわたって理解していないと設備は完成しません。1台作ることで、設備構造、制御の理解がかなり深まります。エンジニアのレベルアップという点では、この設備内製は効果的です。構造の理解が深まれば、次設備の仕様にも展開できます。

これは生産技術エンジニアとして大きなメリットになります。というのも、私が10年以上エンジニアをやってきた経験から話をすると、設備の内部構造を理解できていない生産技術者が大勢いたからです。
エンジニアとしてスキルアップを目指す人には、設備製作を経験することオススメします。

量産設備内製化のデメリット

続いてデメリットです。

技術力がなければ品質の高い量産設備はできない

内製とは、所詮素人が作った設備です。専門でやっている人達にはかないません。完成設備の使用用途と期間、長期的なリスクをよく検討しておく必要があります。量産設備の場合、1度導入してしまうと、使い勝手が悪くても簡単に交換することはできません。高い専門性を持った経験者でなければ、量産設備の内製はしない方がよいでしょう。

量産設備の長期的なサービス体制や故障リスクがある

当然ですが、自分たちで製作した設備の面倒は自分たち以外に誰も面倒を見てくれません。故障した場合の原因調査やデバッグもすべて責任を被ることになります。社内に対応できる人物が複数名いればよいのですが、特定の人物しか対応できないような組織体制の場合は、その人の異動や退職でその設備のサービス窓口を失うことになります。自動車業界の場合、5~10年と生産期間が続きます。どうしてもサービス面で手に負えない場合は、取引先の設備メーカーに委託するということも可能です。ただし、これは簡単にいえば「面倒なことを押し付けているだけ」です。専門業者であっても、自社設計でもない設備の問題対応などやりたくはありません。

設計から部品手配・組立・配線・デバッグまで工数がかかる

設計(メカ、電機、制御)や組立、配線、デバッグなど含めて最低でも3ヶ月くらいは工数を取られます。その間に他の業務は止まります。中期的な部内の仕事状況とリソース配分をよく考慮して判断する必要があります。

経験者がまわりにいて面倒を見てくれるのであれば、失敗しないように細部の確認や疑わしい部分の潰し込みをしてくれます。ところが初心者や経験の浅いエンジニアが対応する場合は、日程にかなりの余裕を持っておく必要があります。
小さな抜け漏れがあっただけでも、かなりの日程をロスすることになるからです。
例えば次のような事例です。

  • 例)設計ミスで部品の修正が必要になった場合
  • 例)部品の手配ミスで再手配になった場合
  • 例)制御設計のスキル不測でデバッグが進展しない場合
  • 例)完成しても期待した精度が出ていない場合

結論

エンジニアのスキルアップという点では、設備内製はお勧めします。ところが、長期的なサポートの兼ね合いと設備の出来上がり品質に関するリスクがあるので、量産設備の内製はお勧めしません。設備を内製するのであれば、試作機などリスクの低い案件が良いでしょう。



※関連記事 量産設備を現地化したときの苦労と大きなメリット