191013 設備の価格交渉と投資金額の削減について
今回は「設備の価格交渉と投資金額の削減について」というテーマで話します。
生産技術をやっていると設備の価格が徐々にわかってきます。私の場合は会社の事業拡大にも恵まれたおかげで、設備投資をする機会がたくさんありました。そこで今回は設備購入時の価格交渉のやり方をいくつか紹介します。
設備投資金額を下げる目的と価格削減の意図
実務レベルで目先の仕事に追われている場合は気付きにくいかもしれませんが、会社の予算に余裕を持たせておくことで、後々自分の仕事がやりやすくなります。
設備投資を削減する目的
生産技術エンジニアが行う設備投資は、数億円という規模の大型投資になります。
投資を抑制する理由はいくつかあります。
例えば、コストを下げることで、顧客へ提供する商品やサービスの価格を抑えることができます。こうすることで、会社の競争力が高まります。予算に余裕ができれば、余ったお金を別のことに転用できます。現場の改善活動や工場のインフラなどです。職場環境が改善すれば、さらに生産性も上がります。
実務レベルの視点で考えると、プロジェクトごとに予算が決まっているため、想定していなかった問題等が発生した時には予期していない費用が発生することがあります。設備投資を削減して、予算に余裕を持たせておけば、こうした不測の事態に対しても問題なく対応することができます。
価格削減は生産技術エンジニアの実力を測る判断基準
私の経験談になりますが、適切な設備価格と担当エンジニアの実力は比例しています。
というのも、設備の仕様を見れば、概算価格の目処がつきます。経験豊富な生産技術エンジニアであれば、設備の構成部品や組立工数、デバッグ工数、リスクなどの見通しが立つからです。
つまり、必要以上に高い設備を購入するということは、生産技術エンジニアとして仕事にぬけがあるか、仕事をサボっているということになります。高い設備を入れることは誰にでもできます。生産性や設備品質を維持して、最低限の投資で済ますことが理想です。
投資金額を下げるポイント1)構想段階でシンプルな構造を採用する
見積もりに設備の図面が付属していないなどということは論外ですが、設備投資を下げるためには概略構想段階でコストの安い構造を採用します。基本的な考え方は、シンプルな構造を採用することです。
設備のサイズが大きくなりすぎることもコストアップにつながりますので、無駄に大きくなっていないかも見極める必要があります。要求サイクルタイムに対して安全を見過ぎていないかも、よく検証します。メカ設計の段階でこの検討を十分にやっておく必要があります。
1つ事例を紹介します。溶接工程の設備を購入した時の話です。取引先は1台の装置に、100万円以上する溶接電源を6台で見積もっていました。ところが、私が装置動作をシュミレーションしたところ、3台でもなんとか対応できる見込みはありました。私は自分の判断に自信がありましたが、取引先はそれをリスクととらえていました。
結局、6台の電源で設備製作を行い、完成時に検証して3台でも可能であれば、3台に変更するということになりました。完成してみると3台で対応できたのです。当時は、その溶接電源はたくさんの設備で使用用途があったので、残りの3台をスペアパーツとして保管したり、次の新規プロジェクトで利用することにしました。おかげで次プロジェクトでの予算が少し浮きました。
投資金額を下げるポイント2)各部品の概算価格を理解しておく
何台も設備を購入したり、スペアパーツの購入をすると部品の価格が分かるようになります。例えば、以下のような品物です。
- 多軸ロボット:150万円
- PLC:20万円。
- 2次元コードリーダー:6万~20万円。※性能による
設備価格を下げようとしたときに、見積もりの明細を見て判断するわけですが、構成部品の概算価格がわかっていると、この交渉がやりやすくなります。この辺の価格感覚がなければ、部品単体で見積もりを取ってみるとよいでしょう。そうすれば、設備の価格が妥当なのかどうかの目途が立ちます。
品物によっては大企業向けに特別価格を設定している場合もあります。この場合は設備メーカーが市場価格で購入するよりも、自社で購入して設備メーカーに支給する方がトータルで考えると値段は安くなります。
投資金額を下げるポイント3)交渉ネタと選択肢を持っておく
まず、よくありがちなネタのない価格交渉はうまくいきません。上層部の人間を出してきて顔を立てて値段を下げるというやり方は、ナンセンスです。ボリューム効果による価格交渉をするか、仕様ダウンによる交渉など、何か相手が得をするようなウィンウィンの関係を提案できなければ、進展しません。価格を下げるアイデアがない場合は、交渉できないと考えていた方がよいでしょう。
続いて、価格交渉をするときには相手を有利な立場におかないことです。2社、3社の選択肢を持っておき、自分の納得する価格を提示できなければ他社に発注するくらいの強い態度で交渉することです。
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