191102 社内の技術情報の蓄積が仕事の生産性を高める

今回は「社内の技術情報の蓄積が仕事の生産性を高める」というテーマで話をします。
生産技術エンジニアとしてたくさんの職場で働いてきましたが、これができていないと感じることが頻繁にありました。製造業であれば、技術的な情報は整理して最新の状態にしておくべきです。

技術情報の蓄積とは

まず技術情報とはどんなものかを紹介します。
例えば、実験報告書、設備仕様書、議事録、設備見積書、設備構造図、設備取扱説明書、プログラムバックアップデータ、専用ソフトウェアなどです。どのように管理されているかというと、こんな感じです。

・担当者が個人持ちしている。(情報共有できない状態)
・共有サーバーに煩雑に管理されている。(探すのが大変、削除されるリスクあり)


理想とする事例を紹介すると、例えば制御機器メーカーのウェブサイトのような状態です。必要なマニュアルやソフトウェアが誰でも検索出来てダウンロードできます。
ポイントは、誰でも簡単に検索できること、情報が保護されていることです。


技術情報の蓄積により生産性が高まる理由

普通のことを普通に実施するだけですが、意外と社内の管理は担当者次第でいい加減なものです。
ところが、このいい加減な管理が組織全体の生産性を落とすことになります。いくつか事例を紹介します。

メリット1 情報整理・共有化

まず情報を持っていない人がその情報を探すという手間が省けます。個人持ちしていたり、どこにあるのかわからない状態であれば、人に聞いて探してという無駄が発生します。誰でもこのような経験はありませんか? 続いて、情報を共有化することで他人の仕事の進捗や詳細状況を確認することができます。

  • 例)実験報告書を見れば装置のパラメータ設定根拠がわかります。
  •  この情報がなければ、問題が起きるたびにパラメータ調整を手探りで行う必要があります。
  • 例)設備の説明書(部品表や配線図)があれば、設備が故障しても技術者なら対応可能です。

メリット2 客観的な判断材料

これらの技術情報は、 特許や製品図面と同様に会社の資産になります。大勢のエンジニアが苦労して仕上げたアウトプット情報であり、エンジニアの仕事を円滑に行うための貴重な資源でもあります。新参者や後任の教育資料としても利用価値があります。 それらの情報を見れば、どういった品質での仕事が求められていて、過去どういった苦労があったのかがわかります。


技術情報を正しく整理できていない事例の紹介

いくつか悪い事例を紹介します。

  • 例)ある問題に対して検証作業をしたが、実験報告書にはまとまっていない
  •   グループ内の同僚にも情報共有されていない
  • 例)設備仕様に変更があったが、設備仕様書は更新されず古いまま。
  • 例)そもそも情報整理されていないし、その予定もない
  •  ※他人の仕事を引き継ぐと、いかに杜撰な管理をしているのかがよくわかります。

これでは他人からは業務進捗もわかりませんし、本来調べなくてよいことを調べるという無駄な作業が発生します。 そもそも仕事を担当していた本人ですら、次回同じような仕事をするときに同じ失敗をすることにつながります。

理想とする技術資料の保管方法

公式文書の場合は上述のウェブブラウザでの表示のように、正式な登録作業を行い編集権限をなくした状態で公開するのが良いでしょう。公式文書でない技術情報であれば、ローカルサーバー上に保存でよいと思います。ただし、何でもかんでも共有フォルダに保存すると必要な情報が探せなくなるので、必要最低限の情報のみ整理して保存します。

悪い技術資料の保管方法

歴史のある会社では、紙媒体で技術情報を管理している場合があります。
10年以上前のものまでキングファイルに入れて管理されていたりして、膨大なスペースを占めています。そのやり方を継続して、電子化が進んだ近年になってもいまだに紙媒体で保管してる会社もあります。
記録がないよりはマシですが、これでは必要な情報を検索するときに膨大な時間がかかります。さらに、検索意欲も削がれます。残せばよいというものでもないので、必要情報にアクセスしやすい状態で残すべきです。


情報の整理は仕事の基本であり、会社の技術資産になります。 必要な情報を整理しておけば、仕事の生産性や引継ぎも簡単になります。



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