191109 サイクルタイムと稼働率に有利な設備仕様
今回は「サイクルタイムと稼働率に有利な設備仕様」というテーマで話をします。
生産技術をしていると、こうすればもっと良くなると感じることがたくさんありました。これから述べる項目は、当時私が意識して盛り込んだ仕様になります。
【目次】
- 生産を阻害する要因と対策となる設備仕様の概略イメージ
- サイクルタイムの定義と設備仕様の関係
- サイクルタイムと稼働率の関係
- 設備をフル稼働させるための設備仕様と考え方
- 投入と排出を分ける。
- 製品排出場所に複数個の製品置き場を設ける。
- NG発生時に自動で排出する
- エリアセンサによる一時停止
- 設備を止めない設備仕様
1.生産を阻害する要因と対策となる設備仕様の概略イメージ
生産数を決定する要因はサイクルタイム、稼働時間、稼働率です。
稼働時間は1日24時間という上限を超えて増やすことができませんので、サイクルタイムと稼働率を高めることで生産性は上がります。
サイクルタイムの定義と設備仕様の関係
サイクルタイムとは、製品が1台完成するために何秒かかるかという考え方になります。
例えば、10秒ごとに1台の製品を作るための設備仕様・要求サイクルタイムは10秒です。同じ作業サイクルを1日中維持できれば、稼働率は100%に近くなるので、サイクルタイムで想定した生産数が期待できます。(※例えば、この事例では1時間に360個です)
ところが、実際はそうはなりません。様々な阻害要因があり、実際のサイクルタイム通りに製品は出来上がらないからです。
サイクルタイムと稼働率の関係
サイクルタイムを少し細かく見ていくと、サイクルタイムは設備が動作する時間と作業員が作業をする時間の合計です。各サイクルに人の作業が含まれない場合は、設備の動作時間がそのままサイクルタイムになります。樹脂成型やダイカストマシンの場合は、自動サイクルで連続射出するので、設備動作タイムがサイクルタイムになります。
単体機の組み立て装置の場合は、製品のセットや排出を人が行っている場合が多く、サイクルタイムは作業員の製品セットや排出を含めた計算になります。作業員の動作が遅かったり、前工程からのモノの流れが悪かったりすると、結果的にサイクルタイムは長くなります。
この時、設備はただ次の動作開始を待っている状態になります。つまり、設備は遊んでいるということです。いかに設備を遊ばせないで、連続稼働させるかという考え方が生産性を高める工夫になります。
2.設備をフル稼働させるための設備仕様と考え方
いくつか設備動作の阻害要因とその対策を紹介します。
投入と排出を分ける
単体機でよくみられる機構ですが、引き込み型の設備は投入個所と排出箇所が同一です。製品位置決めの点では、この方式はメリットがあるのですが、稼働率を上げる点では不利に働きます。理由は、製品を排出して次の製品を投入するまで設備動作は必ず止まるからです。
投入と排出を分けて、製品が排出される前に次の製品を投入しておき、サイクル終了時に自動で次のサイクルを開始するようにプログラムを組んでおけば、設備を止めることなく稼働することができます。この場合は、人の作業タイムはゼロになります。
製品排出場所に複数個の製品置き場を設ける(人が取り出すのを待つロス時間対策)
次に排出箇所の工夫です。射出成型機をイメージしてもらえばよいのですが、成型機は排出箇所にトレーを配置しておいて、自動でそこにモノがたまっていきます。組み立て装置では、製品を落下させるようなことはできないのですが、排出箇所にある程度のバッファを持たせておくことが可能であれば、人が製品を取り出すのを設備が待つ必要はなくなります。
たいてい、作業員は複数の作業を掛け持ちしています。他の作業に手を取られて決まったサイクルで取り出せない場合があります。そんなときでも、例えば、排出部にコンベアなどを持たせておいて、そこに溜まるような構造にしておけば、設備は連続で稼働することができます。このあたりは作業員の受け持つ工程のサイクル次第です。余裕があれば、このようなことを考える必要はありませんが、時間のかかる工程と兼務する場合であれば、多少のロスを設備が吸収してくれます。
NG発生時に自動で排出する
NG発生も稼働率を悪化させる要因になります。NG発生のたびに異常解除作業をしていると、期待したサイクルで製品は流れません。特に自動機になると、この一時停止時間の積み重ねが、大きなロスになります。
ここでも上記と同じ考え方で、NG発生しても自動排出して、自動で通常サイクルに復帰できるような制御にしておけば、わざわざ作業員が設備のNG品解除や復帰作業をする必要はありません。また、NG品を自動サイクルを停止しないで排出できる機構にしておけば、発生したNG品を作業員の都合の良いタイミングで取り出すことが可能になります。
エリアセンサによる一時停止
エリアセンサによるサイクル停止も稼働率を落とす要因になります。
安全装置なのでインチキをするわけにはいかないのですが、間違ってエリアセンサが遮蔽されただけで設備停止するようでは、芸がありません。例えば、設備サイクル動作中にエリアセンサが遮蔽した場合は、設備を一時停止だけにして、遮蔽が解除されたときに途中の作業からサイクル動作を再開するような制御をすれば、毎回設備停止して最初から繰り返すようなことをしなくてもすみます。
3.設備を止めない設備仕様
以上が設備稼働率を下げないための設備側での工夫になります。
小さな工夫ですが、長期間の生産を考えると塵も積もれば・・・という効果が出てきます。これらの仕様は設備仕様検討段階で盛り込んでおく必要があります。一度設備が完成してしまうと、メカや制御の変更ハードルが高くなります。
単体機の場合は、稼働率の想定やネック工程かどうかも関係してきます。ネック工程でない場合は、その工程で多少稼働ロスがあっても、十分な仕掛品を持っておけば挽回可能だからです。一方で自動機の場合は、上述したような稼働率を下げない工夫を盛り込んでおかないと、導入後に苦労することになります。技術者の方は、このあたりを検討して新規設備の仕様に盛り込んでみてください。
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