200331 電気製品の基本要求仕様と絶縁抵抗特性についての概略紹介

今回は「電気製品の基本要求仕様と絶縁抵抗特性についての概略紹介」というテーマで話をします。電気製品は通電部と外郭部分を確実に絶縁しておく必要があります。生産技術エンジニアをしていると、高電圧検査や絶縁抵抗検査などの電気特性の検査を扱う場合があるので、今回はその概略を紹介します。

電気製品の基本仕様である絶縁抵抗特性とは

一般的な話ですが、電気製品は安全保障のため通電部は確実に遮蔽されています。
いくつか分かりやすい事例をあげると、ノートパソコンのケースはプラスチックでできています。テレビのリモコンもプラスチックやゴムでできています。これは通電部分以外に電気を流さないために、通電部分と外郭部分を電気的に遮蔽しているためです。

一方でケースが金属になっている電気製品もあります。スマートフォンなどは外郭が金属になっています。自動車のフレームも金属です。これらは使用環境を考慮して必要な強度を持たせるために金属ケースを使用しています。

こういった金属ケースを採用している電気製品も通電部とケースを電気的に遮蔽されています。万一にも通電部とケースが導通するようなことがあってはならないので、高電圧をかけて通電部以外が絶縁されていることを検査しています。これが絶縁検査です。一般的にAC500VやDC500Vなどの高電圧を数秒間かけて導通がないことを検査しています。

絶縁抵抗特性検査の概要

絶縁特性検査は図のように通電部と金属ケース部分に端子を接続して、高電圧をかけます。テスターの端子を当てて導通有無を確認する方法と原理は同じです。テスターでの導通確認では見つけられないような絶縁破壊であっても、高電圧をかけて絶縁特性検査をすることで発見することができます。

絶縁特性検査で使用する電圧レベルは通常使用電圧よりもはるかに高電圧のため、この絶縁特性検査で絶縁特性の保証ができていれば、通常使用では通電部以外に通電するようなことはないということです。

生産技術エンジニアが知っておくべき絶縁抵抗特性のリスク

それでは、ここから生産技術エンジニア向けの話をします。
一般的な絶縁特性については上記の理解でよいのですが、エンジニア向けには量産工程内でのリスクについて紹介します。 

通電部の接合に溶接や半田を使用する場合は、金属屑(半田ボールや溶接スパッタ)などが混入するリスクがあります。そういった接合方法を使用する生産ラインでは、耐圧特性を工程内で保証している場合がほとんどです。製品設計的には絶縁が保証されているような構造であっても、生産工程上の問題(上記不具合や作業ミス)によって通電部と金属ケースの絶縁距離がなくなり、高電圧をかけると絶縁破壊されてしまう場合もあります。

別記事で紹介したカシメにも実はこういったリスクがあります。アルミ部品へのカシメの場合は少ないのですが、鉄部品へのカシメをする場合は、カシメツールの耐久性次第でツールの破片が欠落して製品内部に混入するリスクがあります。この破片が隙間にはさまったりして絶縁破壊される可能性もあります。

また、絶縁抵抗特性は製品の機能に関わる基本特性であるため、特殊特性扱いです。通常よりも厳しい品質管理が求められる特性になり、上述の半田ボール、溶接スパッタ、カシメツール破片などは重大不具合になります。これらの工程を担当する場合は、そういった品質リスクを考慮して業務に取り組んでみてください。

量産工程での絶縁抵抗特性検査の注意点

生産技術者が知っておくべき注意点の2つ目です。
この絶縁特性検査は誤判定を起こす可能性があります。量産工程では自動で検査プローブを前後させて検査をしますが、検査プローブと製品の接触が甘い場合は、電気的な通電がありません。従って、絶縁特性検査ではOK判定される方向になります。

具体的には、プローブの先端の酸化被膜による影響、プローブの破損、内部リレーの固着による通電不良、その他制御回路の断線などです。こういった問題が起きた場合には、正しく検査できていないことになりますので、対象期間に生産した製品の品質保証がまったくできていないということになります。

ではどうやって誤判定をなくせばよいかというと、絶縁特性検査前に検査プローブと製品の電気的な導通を確認することです。これはPLCの入力信号を使えば簡単にできます。 検査サイクルごとにこの導通確認をしておけば、検査回路の導通異常によって誤判定されることを防ぐことができます。

以上、生産技術者が注意しておくべき絶縁特性検査についてのポイントでした。

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