200411 製造現場のマネージメントとスキルマップの概略紹介
今回は「製造現場のマネージメントとスキルマップの概略紹介」というテーマで話をします。 生産技術エンジニアをしていると、製造現場の仕組みやマネージメントについても深く理解しておく必要があります。 現場では毎日のように問題が起こるため、工程設計や設備だけでなく、現場管理の考え方も重要になってきます。 ということで、生産技術エンジニアの仕事上で役に立ちそうな製造現場のスキルマップについて概略を紹介します。
【目次】
- 製造現場スキルマップとは
- スキルマップ運用の悪い事例紹介
- スキルマップが現実を反映していない
- スキルマップを埋めるための教育活動が伴っていない
- スキルマップに重要工程の識別がない
- 製造現場の上手な運用方法
製造現場スキルマップとは
スキルマップとは、製造現場における作業員の配置場所と対応スキルをまとめたものです。 製造業界では一般的な現場管理方法として採用されています。
スキルマップの具体例紹介
1つ具体例を紹介します。
次のような生産工程があったとします。
作業員5名の配置です。このとき作業員と現場責任者1名の6名のスキルマップを示します。
この表から分かるように、スキルマップを準備すると工程ごとの作業員の習熟度が可視化されます。 これを生産ラインの脇に掲示しておけば、現場責任者は誰をどこに配置すべきか一目瞭然です。 その時になって配置に悩んだり、教育しなおしたりする無駄がなくなります。
スキルマップ運用の悪い事例紹介
スキルマップの運用は簡単なことのように思えますが、できていない製造現場はあります。
離職率が高い会社や習熟に時間がかかる工程設計をしている場合は、作業員の管理だけでも苦労しています。
離職については文化的要因やその地域の景気動向も影響するため、地域ごとに特有の課題を持っています。
組織体制や会社の経営状態によっては、仕事に忙殺されて本来すべき仕事に手が回らない場合もあります。
こうなってくると、負のスパイラルです。いくつかスキルマップ運用の悪い事例を紹介します。
スキルマップが現実を反映していない
「言われたから準備しました」程度のスキルマップはあるのですが、現実を反映していなかったり、更新されていないなどです。
よくあるパターンが、現実だけ(歯抜けが多い状態のスキルマップ)をまとめたスキルマップで、目指すべき理想状態がないスキルマップです。
例えば、特定の作業員が退職してしまうと、他に誰もその工程をカバーできないような習熟状態もあります。
こういう場合でも、多能工を増やすための教育計画すら存在しません。これでは何のためにスキルマップを付けているのかわかりません。
スキルマップを埋めるための教育活動が伴っていない
製造現場責任者の能力次第では、中期的な教育計画の作成や実行ができないこともあります。
そういう現場では、常に同じ作業員が同じ場所を担当しています。1週間もすれば1つの工程の作業には慣れます。計画的に教育することは、それほど難しいことではありません。
※もともと誰でもできるように工程設計されているものなので、特殊工程等の特殊特性に関わる工程以外であれば、基本的には習得には時間はかかりません。
現場の責任者からすれば、同じ作業員を同じ工程で使いまわす方が便利で管理もしやすいという短期的なメリットはあります。
ところが、欠員が出た場合に誰も対応できない作業工程が発生する可能性もあります。
こうなると生産ロスが増えるだけでなく、品質リスクを高めることになります。
欠員リスクをなくすために、計画的に大勢の作業員が多くの工程をカバーできる状態にしておかなくてはなりません。
余裕があるうちに予防措置をしておくということです。
スキルマップに重要工程の識別がない
どこの生産ラインでも、キーとなる重要工程というものがあります。
カシメや溶接などの特殊特性を扱う特殊工程も重要工程ですが、他にも作業習熟に時間がかかる工程や熟練を必要とする品質判断が求められる工程です。
そういった工程は、他の工程よりも優先して習熟者を増やしておく必要があります。
ところが、他の工程と同一で扱われている現場をよく見かけます。
単純作業工程であれば、臨時で対応者を見つけてくることは可能ですが、そういった重要工程は少しハードルがあがります。突発では対応しにくい工程があるため、そういった重要工程を意識しておく必要があります。
製造現場の上手な運用方法
たくさんの製造現場を見てきた私なりの提案ですが、製造現場で働く作業員にはインセンティブをつけるべきだと考えています。
ほとんどの会社は彼らの給料を一律で設定しているはずです。一生懸命仕事をしても、サボっていても給料は変わらない会社がほとんどです。
日本にありがちな考え方ですが、「給料をもらっているのだからきちんと働きなさい」という考え方です。
日本では離職率が低く不満を抱えながらでも仕事を継続する人が多いため、この考え方でも成立するのかもしれません。
ところが、海外ではこの考え方は通用しません。海外の場合は、成果を出している人物から辞めていく傾向があります。
まわりの作業員がサボっている様子を見て、同じ待遇で働きたいとは思わないのです。
こうなると、使えない人物が会社に残ることになるため、生産ラインの生産性や品質管理の質は悪化します。
会社にとっては致命的です。
そんな事情を考慮して、一生懸命働いている人が損をしないようにインセンティブをつけるのです。
例えば、月単位で頑張った人をラインごとに数名選んで手当をつけたり、食堂の食事券を提供したりするなどです。
よく仕事をしている人には、新しい仕事を覚えてもらい昇格させることも1つの手段です。
外部から優秀な人材を採用したいと考えるマネージャーは大勢いますが、現場上りでも優秀な仕事をこなす人物はいます。
従業員に高いモチベーションで働いてもらえる仕組みづくりが大切なのです。
以上、簡単ですが製造現場のマネージメントとスキルマップの概略を紹介しました。
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