200427 生産技術者が考慮すべき消費者目線での設備仕様の考え方

今回は「生産技術者が考慮すべき消費者目線での設備仕様の考え方」というテーマで話をします。生産技術をしていると設備設計をすることが頻繁にあります。そのときにどういう視点で考えればよい設備ができるかというヒントを紹介したいと思います。 本当に真剣に自分の考えを盛り込んでよい設備を作ろうとしているエンジニアを除いて、ほとんどの生産技術者がなんとなく設備仕様を決めているはずです。そこで、今回はいろいろな切り口で設備仕様を考えてみます。

制御機器メーカー視点での設備仕様

生産技術エンジニアをしていると、制御機器メーカーの営業マンと話をする機会が増えます。
制御機器メーカーの営業マンにとって、生産技術者は格好の顧客です。生産技術者に商品を採用してもらうことができれば、彼らの売り上げや営業成績は伸びます。価格や性能などでの提案をして生産技術者にメリットがあれば、取引成立です。

ほとんどの場合は生産技術者にとっては興味のない押し売りの営業話ですが、たまに面白い製品の紹介があったりします。あるいは現場の困りごとを営業マンに話すと、何か解決のヒントになる商品が見つかることもあります。生産技術者がその商品を気に入れば、次の設備で採用してみようかとなるわけです。

ここでの切り口は価格や性能がほとんどです。


生産技術者視点での設備仕様

生産技術者視点での設備仕様は工程設計や機能優先です。
例えば、圧入工程であれば安定して圧入品質を達成できることが最優先事項です。検査工程であれば、検査精度(繰り返し性や相関性)が最優先事項です。
ライン全体で考えれば、全体のサイクルタイムや不良率、OEEなどです。 これらの機能・要求さえ満足していれば、それ以外のことはいったん無視できます。

ここでの切り口は設備(生産ライン)としての機能です。
ただし、これは最低要求事項であるということを認識しておいてください。ほとんどのエンジニアはこの最低要求事項しか頭にないと思いますが、上を目指せばさらに高いレベルの仕事は存在します。


メンテンナンス視点での設備仕様

続いてメンテナンス部門の視点で考えます。
メンテナンス部門は導入された生産ラインを長期的に維持しなければなりません。設備導入自体も大変な作業ですが、量産維持も同じくらい大変な作業です。

彼らの心配事は、部品の故障による交換や故障時の復旧方法です。同じ部品を使用することで予備品在庫の数とコストを減らすことができます。故障時に要求される技術レベルは、設備に採用される制御機器次第です。ある程度統一感のある設備仕様にしておけば、既存の延長で対応できます。一方で操作性が全く違う制御機器が搭載された設備であれば、ゼロからその操作を学ぶ必要があります。頻繁に設備仕様の変更があると、この学習コストは彼らにとっては大きなハードルになります。

ここでの切り口は既存設備との仕様統一です。


製造部門視点での設備仕様

続いて製造部門の視点で考えます。
製造部門は生産技術者の立場からすれば顧客です。導入した設備を使用するユーザーです。 たくさんの現場を見てきましたが、大勢の生産技術者がこの立場を正しく理解できていません。社外の顧客であれば、顧客として扱うものの、社内の顧客(製造部)に対しては顧客という意識が持てないようです。

製造部門の心配事は簡単な操作性です。
一般家電を考えれば理解しやすいと思います。携帯電話やテレビはいちいちマニュアルをみなくても操作できるほど簡単に設計されています。
では量産ラインの設備はどうでしょうか。いちいち細かく操作方法を教えないと操作できない設備になっていませんか?始業点検は、このボタンを押して、このボタンを押して、その次に・・・・などです。このエラーが起きたときは、この画面を見て、このボタンを押して、その次に・・・・などです。
これでは使いやすい設備とは言えません。理想は初心者でも使いやすい設備に設計しておくことです。

ここでの切り口は設備の簡単な操作性です。


まとめ

4つほど設備仕様の切り口を紹介しました。
ほとんどの技術者が2の切り口だけで仕事をこなしているはずです。最初のうちは最低限の要求事項である2に注力すればよいと思います。徐々に仕事に余裕ができると、3や4の切り口で仕事をしてみてください。

以上、簡単ですが生産技術者が考慮すべき設備仕様の考え方を紹介しました。



※関連記事 量産設備を標準化するという考え方とメリット
参考書籍)生産技術の教科書Ⅰ

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