200717 新規事業の難しさと注意事項
今回は「新規事業の難しさと注意事項」というテーマで話をしたいと思います。 たくさんのビジネス書を読んで、一般企業やベンチャー企業などの活動をもとに観察した個人的な考えです。
【目次】
- 新規事業に関する一般的なイメージ
- 新規事業における現実的な課題
- 商品・サービス
- 販売促進・営業活動
- キャッシュフロー
- 人材
- 新規参入者が採用すべき方法
- 新規事業を継続するためのポイント
1.新規事業に関する一般的なイメージ
よくある世間のイメージをいくつか紹介します。
- ITスキルがあれば事業ができる
- MBAを取得していれば事業経営できる
- お金があればビジネスができる
- アイデアがあれば事業ができる
こんなところだと思います。
あまりに漠然としすぎていますが、大体こんなアイデアで始めると失敗します。
9割のスタートアップが失敗するといわれているのが現実です。
その中でもお金は大きな要素です。商品やサービスの開発にしても、事務所にしても人材雇用にしてもすべてはお金が必要です。そして資金が底をついた時点で会社倒産という厳しい現実が待ち受けています。
そこで今回は、実践的な新規事業の課題と安定稼働までの道のりを考えてみます。
2.新規事業における現実的な課題
何か新しいビジネスを始めようとするときの課題はたくさんあります。個人事業レベルのものから会社の新事業のものまで、規模の違いはありますが、新しいビジネスを始めるという点で何が必要なのでしょうか?
商品・サービス
まずは売り物です。何を販売するかということを最初に決めなくてはなりません。
中には、何の収益化のアイデアもないところから始まったビジネスもあります。グーグルやフェイスブックでも、最初は収益化のアイデアなどなかったようです。サービス自体は魅力的でしたが、創業時の売り上げという点では苦労しています。
結果的には収益化ができたという事例はありますが、固定費がかかる事業経営の場合は短期的な売り上げがない場合は存続不可能です。人件費や不動産の経費が重くのしかかってきて、支払い能力が底を尽きた時点でゲームオーバーです。
販売促進・営業活動
2つ目が営業活動です。どれほど優れた商品やサービスを提供できる準備ができたとしても、利用者がいなければ価値をお金に変換することはできません。なんの実績もなく、知名度もない商品やサービスをユーザーに利用してもらうには大きなハードルが存在します。
無料サービスはハードルを下げる手段の1つです。世の中には無料から始まって有料になったサービスはたくさんありますし、無料のまま高品質なサービスを提供する会社もたくさんあります。無料サービスを利用することで、商品やサービスを利用してもらうことができます。一種の営業活動になるわけです。
法人向けの商品やサービスでも同じです。優れた商品だから必ず売れるということではありません。会社の信用や実績がなければ、採用した人物が失敗の責任を被ることになるからです。それなら実績のある取引先を使おうとなるわけです。
まとめると、最初は利益を無視してでも「信用」と「実績」を稼ぐために商品やサービスを売り込まなくてはならないのです。
キャッシュフロー
3つ目がキャッシュです。大企業のように潤沢な利益余剰金の蓄えがあれば、経営基盤は安泰です。ところが創業時の会社は売り上げもたっていないことが多く、お金は減るばかりです。新しい商品開発や販売促進のためにお金を投入したいのですが、安定した売り上げが立つまでは先行投資は大きなリスクになります。
自己資金で事業を始める場合は資金繰りに苦しみます。スタートアップの9割が失敗するといわれるように、投資家はそう簡単には出資してくれません。金融機関も同様です。
毎月の出費をシュミレーションし、資金が底をつく前に売り上げのめどを立てなくてはなりません。資金繰りに悩まされると本来の活動(商品開発活動や営業活動)にリソースを割くことができず、活動はさらに悪循環のサイクルに入っていきます。
したがって、最初のうちは無駄なお金をかけるべきではないのです。事務所や人の採用、高額な機器やソフトウェアへの投資も避けるべきです。飲食店でたとえるなら、最初は屋台から始めるべきです。商品開発や販売活動に専念し、売り上げ目標を達成できるめどが立った時点で店舗を構えればよいのです。
人材
4つ目が人材です。
キャッシュフローと同じ考え方になりますが、売り上げのめどが立つまでは人の採用は控えるべきです。固定費を増やすことは会社の資金を食いつぶす行為です。どうしても短期的に工数が必要なのであれば、一時的な人材派遣に頼ることも可能です。
専門職の人材が必要なのであれば、最初のうちは業務契約という形式で仕事単位の発注も可能です。下手に固定費を増やすよりはそういった業務委託の形式を採用するべきです。
さらに、日本の雇用制度の場合は、1度採用すると解雇できません。会社規模によっては雇用保険への加入や社会保障費の負担も追加で発生します。
3.新規参入者が採用すべき方法
このように新しい事業を軌道に乗せるまでにはたくさんの課題があります。本来の仕事以外にも対応しなくてはならないことが山ほどあります。専門的な判断を迫られるのですが、専門家は近くにいません。
新規で事業を始めるときは、まずは小さく始めることです。少しずつでも売り上げの実績を重ねていき、事業を軌道に乗せることを優先すべきです。
物理的にも事業規模も、まずは「小さく」です。ニッチと思えるような市場から始めて少しずつ活動範囲を広げていきます。事業が安定軌道に乗った段階で事務所や人材をそろえて体制を強化していくのです。
事業の立ち上げは製造業の品質管理に似ています。製品の品質管理は簡単ではありません。納入部品の不具合、生産工程上の不具合、作業ミス、設備異常など品質を阻害する要因をあげればいくらでもあります。すべての事柄においてミスなく完璧に仕上げないと、品質基準をクリアした製品が完成しないのです。
新規事業立ち上げについても失敗要因は数えきれないほど存在します。それらを確実にミスなくクリアしなくてはならないのです。簡単なことではありません。
4.新規事業を継続するためのポイント
別の事業でキャッシュフローを稼ぐ。
事業継続のポイントは、まさにこの一言だと考えています。何か事業を継続したいのであれば、その事業あるいは別の事業でキャッシュフローを確保することです。
大企業が新しい事業を始める場合を例にとります。すでに既存事業で利益を確保できるため、新しい事業で利益が出なくても会社全体で見れば経営ができるのです。新しい事業での先行投資がかかったとしても、既存事業でその損失をカバーできているのです。
個人レベルで話をすると、サラリーマンを継続しながら一人起業する場合などです。会社員の給料があるので、空き時間に起業した事業での売り上げが立たなくても生活に困るわけでもありません。一人で事業をするのであれば、人件費も場所代も不要です。これなら損失がほとんどないので永続的に事業を継続することができます。
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※参考書籍)How Google Works(エリック・シュミット)
※参考書籍)競争戦略論Ⅰ(マイケル・ポーター)
※参考書籍)ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか(ピーターティール)