190919 新卒で大企業に就職する必要はない

今回は「新卒で大企業に就職する必要はない」というテーマで話をします。
結論ですが、新卒で大企業に就職する必要はありません。新卒入社しなくても大企業へ就職する方法はあります。
10年以上の社会人経験から大企業と中小企業それぞれのメリット・デメリットおよび中途で大企業に入社する方法について、いくつかポイントを説明していきます。


【目次】

  1. 大企業のメリット
  2. 大企業のデメリット
    • 規模が大きくなればなるほど仕事はやりにくくなる
    • 大企業のなかで裁量権の多い職場
  3. 中小企業のメリット
  4. 中小企業のデメリット
  5. 専門性次第で大企業に転職できる

大企業のメリット

大企業のメリットをあげると次のような項目です。
会社名で仕事ができる。入社自体が狭き門であるために、優秀な人が多い確率が高い。規模を利用した仕事が可能になる。福利厚生が充実している。大きな仕事に関われる可能性がある。以上がよく報道されるような大企業の特徴です。

そのなかでも、私が強調したいのは巨大組織でないと関われない仕事ができることです。具体例を挙げると、宇宙ロケットの開発、航空機のパイロット、電気自動車の開発、途上国への投資、こういった事例は会社規模が大きく財務力がないと挑戦すらできない事柄です。こういった仕事に関わりたい人は特定の会社に所属するしか関与できる方法はありません。
もし、大企業でなくてもやりたい仕事ができるのであれば、必ずしも大企業に入る必要はないと考えています。

大企業のデメリット

会社規模が大きくなればなるほど組織も大きくなります。
新卒で入れば組織の一番下から始まるわけですが、上から順に多くのポジションが埋まっています。裁量権を持った人物は上に大勢いるので、自分のやりたいように仕事をできる可能性は低くなります。
組織がしっかりしている分、各人の仕事は分業制になり各人の業務範囲は限られます。会社規模、事業部規模が小さければ、いろいろな仕事を対応しないといけませんが、仕組みが出来上がりリソースも整っている会社であれば、たいてい仕事のルーチンは決まっています。従って入社して数年間は仕事の裁量権は小さくなります。こういった事情から、経験を積む機会は限られていて人が育ちにくいというデメリットもあります。

規模が大きくなればなるほど仕事はやりにくくなる

仕事のやりやすさという点では、中小企業の方がやりがいは得られると思います。会社や業務内容によるので一概には言えませんが、大企業は決済に費やす時間が長く、数ヶ月の単位で進捗が止まることもあります。規模の小さい会社であれば即日決済可能です。会社の成長のジレンマです。規模が大きくなればなるほど、そういった大企業特有の問題が発生します。そんな状況に遭遇すると、「入社前の想像と違った」と思うかもしれません。

大企業のなかで裁量権の多い職場

大企業の中にもやりがいのある職場は存在します。
それは新規事業の立ち上げです。これからの成長分野のために新しく組織された集団で働く場合は、すべてが手探り状態です。規模も小さいため個人レベルで対応しないといけない仕事がたくさんあります。一方で、組織は小さくても権限が無かったり、責任者のリーダーシップがないために自然消滅してしまうような組織もあります。(結局、内部に入ってみないと社内事情はわかりません)

私が考える理想とする職場のポイントは小さい組織で、権限を与えられていて、大きな目標を掲げていることです。新事業の場合は短期的な結果が出ない場合がほとんどです。挑戦することを後押ししてくれる社風であれば、大企業の潤沢な資金やネットワークを利用してやりがいのある仕事ができるかもしれません。

ただし、この時点では、その事業がうまくいくという保証などはどこにもありません。仮にうまくいかなかったとしても経験という点では大きな成果が得られます。そんな貴重な経験が結果的に個人の価値を高めてくれます。

中小企業のメリット

普段は社内の人と仕事をするので、社内の人間の実力は大体わかってきます。
取引先と仕事をしていると、中小企業に勤める同年代の社員のしっかりした仕事ぶりを見て焦りを覚えるはずです。


私の場合で具体例を挙げると、生産技術職をしていたので取引先から設備を購入することがありました。
私もエンジニアだったので、設備のことは詳しく知っています。購入する設備の仕様を決めたり、検証したりといったことを取引先に出張して行いました。課題の対策や設備のデバッグなど、当時の社内の人間に比べて取引先の社員の方がよほど有能なのです。その取引先は社員50人程度の会社でしたが、そういう環境の方が人の成長は早いように感じました。一方で大企業だった私の勤務先の社員は、何をしているのかわからないような仕事ぶりでした。


大企業ながら社内の体制が弱く、何度か設備メーカー勤務経験者の採用を当時の責任者に促したことがあります。残念ながら、集まったのはゼロでした。そういった人材を採用すれば、活躍できる場所はたくさんありましたが、当時の会社に魅力がなかったのか、そういう人材は集まりませんでした。


中小企業でのデメリット

中小企業にもデメリットはたくさんあります。
※ここでは能力開発のための職場環境のみを議論の対象とします(福利厚生や給料は除外します)。

1つがインフラです。仕事をするためのツール(ソフトウェア、実験機、環境)が大企業に比べて整っていない場合が多く、特に高額なソフトウェアや機器を利用できない場合がほとんどです。

2つ目が人材です。大企業だから優秀な人材が多いというわけではないですが、一般的に会社の知名度と平均的な従業員のレベルは比例します。活躍しようと思って中小企業に入社しても、優秀な人の足を引っ張る環境になる可能性もあるということです。
経営者の方針も大きく影響してきます。誰からも尊敬されるような実力者の会社に勤めるのと、俗にいうゾンビ企業に勤めるのでは大きな違いです。

3つ目は長期展望です。将来性のない会社であれば、中小企業にいても仕事の幅はいつまでたっても増えません。新規事業の立ち上げを経験することもできません。新しいことに挑戦する機会も得られません。社員が増えなければマネージメントを経験することもできません。これなら大企業に勤めているほうがまだマシです。


専門性次第で大企業に転職できる

上述した通り、中小企業に入社して実力をつければ大企業への転職は可能です。わらしべ長者ではないですが、キャリア形成をしながら転職して役職を挙げていくという事例はよく見られます。もちろん、実力と実績があっての話になりますが。新卒採用が必ずしも大企業に入る唯一の方法ではありません。

実は、私は学生の就職活動時代に受けた大企業があります。当時は採用されなかったのですが、10年以上経って転職するときに、たまたまその会社を受けました。すると、内定をもらうことができました。結局、その内定を断ってその会社に勤めることはなかったのですが、人生はそんなものです。

最後に繰り返しますが、大切なのは「新卒で大企業に就職すること」ではなく、「自分の価値を高めること」です。自分の価値が高まれば、大企業に就職しようと思えばいつでもできます。就職で後悔しないために、「会社名で選ぶ」のではなく「自分が何をやりたいか」で就職先を検討してみてください。



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