191106 特定の分野のみの専門性は危険
今回は「特定の分野のみの専門性は危険」というテーマで話をします。会社員の方は、それぞれ何らかの専門性を持っていると思います。※専門性を持たない人は今からでも専門性を磨いてみてください
1つの専門性を極めることは簡単なことではありません。長い時間と労力を伴います。ところが、技術革新やグローバル化のおかげで外部環境が急激に変化しています。せっかく習得した専門性も何年かすれば陳腐化してしまい、価値がなくなってしまう可能性もあります。この専門分野の選択とそれに投資する時間・工数については少し慎重になる必要があるということです。
【目次】
- 特定の分野だけで専門性を持つことが危険な理由
- 産業構造の変化のスピードが速い
- 本人の考えが変わる
- 埋没費用は将来の時間を奪っていく
- 時代の変化と産業構造を振り返る
- なくならない産業
- どんな専門性を習得すべきか
特定の分野だけで専門性を持つことが危険な理由
1つの分野で専門性を磨くこと自体大変な作業です。ところが、時代の変化によりその専門性が不要になる可能性もあります。また、本人がその仕事を嫌いになる可能性もあります。 人間の考えは変わります。10年後に同じ仕事をしたいと思うかどうかは、10年後になってみないとわかりません。
外部環境の変化のスピードが速い
起業10年で時価総額1兆円の会社が存在します。一方で何十年も続く大企業があっさり経営危機に直面しています。
昔は終身雇用を前提としていましたが、現在の経済環境ではこのシステムは成り立たず、10年後に会社が存在しているかどうかもわかりません。一般会社員の勤続期間40年を考えた時に同じ会社・同じ業界で働き続けることができるかどうかわからないということです。
会社経営者であれば危機感をもってこの状況を理解しています。一般会社員も同様の危機感を持つ必要がありそうです。
会社が経営危機になったときに、会社に雇用維持を要望しても状況は改善しません。
最悪の状況を想定した準備を行い、いつでも変化に対応できる状態にしておく必要がありそうです。
本人の考えが変わる
40年という長い勤労期間を考えると、人の考えは変わります。昔は会社が人生の面倒をみてくれていたので会社を信じて働けばよかったのですが、今は状況が違います。
20代の考えで選択した仕事に対して、30代や40代になって継続したいと思わないかもしれません。会社の経営方針が変わり、その会社で働きたいとは思わないかもしれません。勤務先の事業部移転に伴い、生活環境の変化を強いられるかもしれません。結婚して家族を持つと考えが変わるかもしれません。上述した外部環境の変化により考えが変わるかもしれません。
周辺環境が変わる中で、考えが変わらないということ自体がまれなケースではないでしょうか?
そういう状況になってから、未経験の分野に挑戦することは簡単ではありません。そのときの体力や気力も、今よりはるかに衰えているかもしれません。ということで、少し長期的な見通しを立てながら、各個人で適切な判断をしていくことが求められます。
埋没費用は将来の時間を奪っていく
「一貫性がない」、「継続できない」などといって、考えが変わることを悪いことのように考える人たちもいますが、果たしてそうでしょうか。例えば5年、10年と継続した事柄であれば、立派に継続したと判断できるのではないでしょうか?
考えや行動を変えないまま埋没費用を増やすことの方が、私には貴重な時間を無駄にするような行為に思えるのです。
他人や世間の意見を参考程度にとどめて、最終的には各人が自分の将来を見据えて行動してもらいたいと考えています。
仕事のことであれば会社の誰かが助けてくれるかもしれませんが、各人の人生については本人が解決するしかないのです。
無謀な挑戦には反対ですが、外部環境・タイミングと自分の実力を合理的に判断して決断すれば良いと思います。
人生に何度もチャンスや転機が訪れるわけではないので、タイミングを見て大きな決断と行動をするべきだと思うのです。
時代の変化と産業構造を振り返る
少し具体的な事例を挙げます。
- ブラウン管テレビを専門としていた人(テレビは液晶に置き換わっています)
さらに言えば、テレビ自体が将来なくなるかもしれません。 - カーナビを専門としていた人(スマートフォンに標準機能として備わっています)
- 出版業界で勤める人(書籍や新聞はどんどん電子化されています)
- 原子力発電業界で勤める人(脱原発の動きが進んでいます)
- 銀行業界(IT企業のオンライン融資に置き換わろうとしています)
- 石油・石炭産業など(欧州のESG投資家は投資しない)
これだけ事例を挙げると、現実的に自分の専門性を生かした仕事自体がなくなる可能性が理解できるのではないでしょうか。上記は一例です。自動車のエンジンでさえ不要になる産業かもしれないのです。マーケットや社会思想が求めるものと合致していないものは、淘汰されていきます。そうなると、せっかく長年にわたって磨いた専門性も役に立たなくなる可能性があります。
既得権にしがみつくような産業は衰退していく傾向にあります。
なりふり構わず営利追求型の産業ではなく、人や社会のためになるような産業のほうが伸びていく可能性が高いということです。
なくならない産業
飲食業、サービス業、観光業界、IT関係、メディア関係、インフラ関係、医療関係など産業はなくなることはないでしょう。高い給料がもらえるかどうか、高い専門性を磨けるかどうかは別として、人々の生活に必要な産業になるので仕事自体は存在するでしょう。
これはあくまで私個人の意見になりますが、こういった業界のなかに改善ネタがたくさん眠っていることがあります。そういった構造を見直すような仕事ができれば、仕事の面白さを感じることができてキャリアアップにもつながるはずです。2つほど事例を紹介します。
例1)銀行の窓口業務:オンライン化や郵送化
口座開設、振り込み、そのほか事務手続きなどで長時間待たされることがあると思いますが、この傾向は何十年も変わっていません。銀行事務員は対人業務に追われていて、顧客は長時間待たされるという双方のデメリットしか生んでいません。それでも何の対応もされていません。
これならすべて郵送やオンラインで手続きできるようにすれば、お互いに大きなメリットが生まれると思います。銀行員は窓口業務が大幅に減ります。顧客は銀行に足を運ぶ手間と待ち時間が減ります。
例2)学校教育:授業の動画化
こちらも何十年も先生が黒板に文字を書きながら説明するというやり方をしています。動画でよいのでは?と考えてしまいます。毎年同じような説明を繰り返すのであれば動画でよいはずです。その動画を流している間に他の事務作業を済ませてしまえば、教師の負荷はかなり減らすことができます。
生徒側にとっても、動画にしてしまえばノートを取る必要もありませんし、後で復習するときにもその動画を見ることができます。
どんな専門性を習得すべきか
まず、特定の分野での専門性(今の職場で身に付く専門性でよいと思います)を身につけます。次に、2つ目の専門分野を探します。「希少性が高いこと」、「価値が認識されていること」この2つを満たすものを探せばよいと思います。特に、最初の専門性との相乗効果を生むような分野であれば、希少性がさらに高まります。
何をすればいいかわからない場合は、興味がある事柄、挑戦したい事柄を軸に探すことです。やりたいことであれば、モチベーションを維持しやすくスキルの習得も加速していきます。やっていくうちにどんどん実力があがっていきます。
世間の役に立つとは思わなかった事柄でも大きなビジネスになった事例もたくさんあります。今では大きな影響力を持っているグーグルも検索ということに特化していましたが、最初は収益モデルなどはなかったそうです。2000年代にはやった国内のSNSサービス企業も、SNSから撤退してゲーム事業を中心にしています。
意外と人生そんなものです。継続していくうちに途中で方向転換したり、予想していなかった考えが生まれたりするものです。何をすればいいのかわからない場合は、自分がやりたいこと・夢中になれることで専門性を高めていけばよいと思います。
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