191207 優秀な人物が会社を辞める理由

今回は「優秀な人物が会社を辞める理由」というテーマで話をします。
以前勤めていた会社では人の流動性がありました。 中途入社者も大勢いたものの、退職者も大勢いました。特に海外拠点ではこの流動性が強く、優秀な人物から会社を辞めていく傾向がありました。どこの会社でもそうだと思いますが、優秀な人物ほど転職して、普通あるいは質の悪い社員ほど居座る傾向があります。
今回はなぜ優秀な人物は会社を辞めるのかについて考えてみました。

1.上司に失望する

1つ目は上司に対する失望です。
サラリーマンなら誰でも上司に対して不満を持ったことはあると思います。私も過去何度か異動や転職したおかげで複数の上司と働いてきました。私の経験談でいえば、人間的に優れた上司に遭遇する確率は3割以下ではないでしょうか。

立場と人格は無関係です。社歴の長さや立場を利用してポジショントークをする人物は大勢います。仕事ぶりや会話から、相手の考えや実力が分かってきます。優秀な人物が上司に潰されることもあります。部下が上司に失望することもあります。

さらにやっかいなことに、その上司は人事権を持った評価者だということです。悪い上司にあたってしまった場合は、本来の仕事に能力を発揮できずに気疲れしてしまうのです。その上司が居座る限り、自分の将来に対して期待できないという現実に直面してしまいます。

2.仕事が集中する

2つ目に選んだのは仕事の集中です。
優秀な人物は仕事を簡単にこなします。他の社員に比べて仕事の処理能力が優れています。気の利く上司は他の社員のレベルアップを図る目的で、他の社員の教育に力を入れます。優秀な社員には自由に仕事をさせておきます。優秀な人物にとっては、こちらの方が効果的です。いちいち細かい指示をされて報告を要求されるよりは、大枠を任してもらう方がストレスなく仕事を進めることができます。

一方で無能な上司の場合、組織が多忙な状況になると単純に仕事の処理を優先してしまうため、優秀な社員に仕事を集中させてしまいます。こうなってくると、周りの人物が楽をしている状態の中で優秀な人物だけ忙しいという不均衡が生まれます。残念なことに優秀な人物ほどそういう状況を敏感に感知します。これも優秀な人物のモチベーションを下げる要因になります。

3.待遇に不満がある

3つ目の理由は待遇面です。
これは1.2.とも微妙に関係していますが、人は他人と自分を比較してしまう生き物です。特に会社員をしていると横一列で扱われる関係で、どうしても他人の仕事ぶりが目に入ったり、他人のせいで自分の仕事が増えたりする傾向があります。

仕事の結果に対して適切に評価されなかったり、周りの人間とたいした待遇面の差がない場合は、自分の仕事にモチベーションを持つことは難しくなります。周りのレベルが高く、互いに刺激をもらえるようなエキスパート集団であれば、モチベーションを高く保つことができますが、現実的にそういった環境で働く人は少ないように思えます。

4.新しい挑戦を求める

4つ目の理由は挑戦です。
ここからはポジティブな理由になります。同じ会社で継続して仕事をしていると徐々に物足りなく感じます。優秀な人物ほど仕事の隅々まで把握できていて、物事の予測が簡単になります。仕事を進めるうえでは、こういった人物が大勢いた方が会社にとってはありがたい状況です。

ところが、優秀な人物は新しいことに挑戦して、さらに成長したい、さらに社会をよくしたいという希望があります。会社がそういった環境を提供できれば良いのですが、そうでない場合は外部に理想の環境を求めます。優秀な人物は会社に縛られる必要がないので、簡単に会社を辞めて新しい活動のステージに進んでいきます。

優れた実績を残した有名人や経営者が新しい事業に挑戦するように、現状維持ではダメだという意識があるのだと思います。一般人からすれば、優れた実績と資産を築いたのでもういいのでは?と思えますが、本人たちは、さらに新しいことに挑戦したいようです。

5.選択肢を持てる(仕事を選べる)

5つ目が選択肢です。
優秀な人物の場合は他社からの評価も高く、気に入らない会社にしがみついて働き続ける必要などありません。合わないと思えば辞めればよいのです。物事はそれほどシンプルです。優秀な人物は合理的に判断します。一方、優秀でない人物は、社内からも社外からの評価も得られず、自信を無くして選択肢を減らしていくという負のスパイラルに陥ります。

多くの日本企業の人事は採用活動や退職者の引き留めについては注力していますが、社内の人物には興味が無いようです。社員の能力評価を行い、成績の悪い人物の成績を上げる努力をすれば、採用にかける費用を抑えることができるだけでなく、優秀な人物の退職を避けることができる見込みはあるのですが、私が見る限り、このような考えを持った会社は少ないようです。
考え方として、能力の低い社員を成長させることができれば、周りのレベルが上がって優秀な人物にとっての職場環境は良くなるのでは?というものです。(レベルアップするためには社員本人の努力や意識が占める要素は大きいのですが・・・)

6.決断力、行動力がある

6つ目が決断力と行動力です。
優秀な人物にはこの2つがそろっています(だから社内で優秀な結果を残すことができているのです)。会社を辞めて転職しようとするときも、長期間悩むなどということはしません。十分な検討をして、スピーディーに決断します。

一方、そうでない人達はしょうもない悩み(現職でのキャリアパス、退職金の心配、転職後の不安など)に時間を費やして、結局何も決断しないという結果になりがちです。これは仕事の成果にも表れてきます。そういう人物は、仕事でも決断や行動が遅く、時間だけを浪費して結果的に何も終わっていないということです。


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※参考書籍 How Google Works (著者:エリック・シュミット)