200605 日本の現状把握と衰退がもたらす貧しい未来

今回は「日本の現状把握と衰退がもたらす貧しい未来」テーマで話をします。 他記事や書籍で何度か日本の悪い部分には触れているのですが、今回は少し深く取り上げてみます。海外で生活したことがない人や経済情勢に興味が無い人は、あまり意識することはないかもしれませんが、日本の将来は悲観的です。

日本の経済情勢と他国比較

マクロな視点で見ると日本のGDPは過去20年間500兆円付近を推移していて大きな成長はありません。テクノロジーが進化しているにもかかわらず、成長できていないということは相対的に悪化していることと同じです。※欧州の主要先進国も日本と同じような状況です。
GDP全体で見ても、1人当たりのGDPでみても同じ傾向です。つまり生産性は改善していないということです。

過去20年間で毎年500兆円から変わっていません。

参考資料)OECD加盟国内での日本の生産性の低さ ※公益財団法人データ

OECD加盟国の中で日本は21位の生産性です。

停滞がもたらす将来の貧困

諸外国と比較して相対的に日本の価値は落ちていく一方です。
豊かになったのだから成長しなくてもよいのでは?・・・と考える人もいるかもしれませんが、成長できなければ将来は徐々に貧しくなっていくだけです。これは産業構造を考えれば理解できます。

日本は経済が停滞しているせいで諸外国に比べて物価は安くなっています。近年の観光客の増加を考えれば理解できると思います。観光客は年々増え続け2019年には年間3000万人もの観光客が日本を訪れています。 過去10年間の日本の貿易収支状況は赤字です。石油や生活用品をイメージしてもらえばよいかと思いますが、海外製品に依存しています。




このグラフは財務省の貿易収支をグラフ化したものです。2019年度で約1.6兆円の貿易赤字、2014年度で約12兆円の貿易赤字となっています。日本が成長できない場合は相対的に日本円の価値が下がり、輸入品が高くなります。また企業からの税収も減るため、政府の財源も減ります。生活が徐々に貧しくなっていくということです。


日本の現状と各国との違い

日本に住んでいる人には違いに気付きにくいと思いますので、いくつか悪い事例を紹介します。日本がいかに足の引っ張り合いをしているかということが分かるはずです。

雇用制度の問題点(時代遅れの象徴1)

日本)
- 会社都合で解雇するにはハードルが高く、実質不可能。
- 正社員雇用してしまえば、本人の能力に関わらず生涯面倒を見ないといけない。
- 会社が成長できなければ倒産か売却、あるいはゾンビ企業として生き残る。

アメリカなどの諸外国)
- 会社都合で解雇可能。実力主義でパフォーマンスを高めるプレッシャーにさらされる。
- 従業員解雇を含め、衰退事業からは撤退して会社組織の再生可能
- 従業員も転職は当たり前という感覚。


今回のコロナ騒動でアメリカの失業者は4000万人を超えています(20年6月2日時点)。日本全体の労働人口が6000万人なので、アメリカの失業者の規模がどれほどの規模かイメージできるかと思います。

一方、日本では仕事もないのに、従業員(正社員)を雇用し続けなくてはなりません。「希望退職」という形式で従業員が自主的に会社を退職するのを待つしか方法がないのです。

私は「会社都合で従業員を解雇することがよい」と主張しているわけではありません。雇用が安定していることは従業員にとってはありがたいことです。ところが、雇用維持は経済成長を前提としています。事業規模を維持するか拡大しなければ、雇用維持などできないのです。制度ができた当時は機能していたのかもしれませんが、日本の経済成長がなくなった現代では変な歪みを引き起こしています。(参考:成長できない会社の記事

上述したように、今回の不況時などは仕事がありませんし、この不況は長期化が予想されています。さらにいえば、過去20年のテクノロジーの進化で効率化を進めることは可能です。つまり以前より効率的に仕事をこなせる環境はそろっているのです。 ところが、正社員を解雇できないことを理由に、一定数の従業員の仕事を提供しなくてはなりません。これが仕事の効率化を妨げている要因になっています。また、無能な正社員が社内に居座ることで若者への雇用機会を奪っています。(参考:既得権の記事

この解雇規制のネガティブな側面が2つあります。1つ目は、会社の体力が落ちてしまい自己破産(自主倒産)するしかないことです。2つ目は、経営者が長期的なリスクを考慮して簡単に正社員を採用できないことです。皮肉にも、雇用維持を目的とした終身雇用制度があるために、新規雇用を生まないのです。事業環境の見通しが立たないにもかかわらず、従業員を解雇できないとなると、契約社員という非正規雇用の形式で従業員を雇用するしかないのです。

結果的に国際的な競争力を失う企業が増えています。よほどの成長産業であるか、独占的な地位を長期的に維持できている会社でなければ事業環境の悪化に対応できないのです。

コロナ給付金の支給速度の違い(時代遅れの象徴2)

これは、「日本がいかに遅れていて効率の悪いことをしているか」を示した事例です。

参照)Bloomberg記事
- 韓国の280万世帯は申請しなくても給付金を支給
- 東京ではオンライン申請できず数百人が区役所で長時間行列

参照)日経新聞記事
- アメリカ政府、グーグルAIで給付処理30倍(5月中旬までに累計700億円超の給付手続き完了)
- 日本は政府・自治体のシステム統合ですら手間取る


コロナ給付金の対応の遅さも日本の悪さを象徴しています。日本政府は企業にすべてを押し付けている印象です。「解雇規制」で従業員の雇用を保証する代わりに、政府から国民への給付金は支給しないという意志に見えました。諸外国を見れば、政府が休業補償している一方で、日本政府は亀のように対応が遅く、世論の猛反発で渋々対応している様子でした。

審議の時間や導入までの判断も遅く、実務レベルでの処理も手間がかかるやり方をしています。見た目には見えませんが、これらの非効率な時間や手間が発生するということは、そこに従事する団体のコストを負担しているということです。すべて国民の税金から捻出されています。 これが日本の現状です。



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