200917 日本の会社の変な仕組み(駐在者への変なルール)

今回は「日本の会社の変な仕組み(駐在者への変なルール)」というテーマで話をします。これは当時勤めていた会社で適応されたルールでした。規定として文書になっていたわけではありませんが、一時的に海外駐在者に適応されました。


駐在者と出張者を規制するための変なルールと悪い待遇1

当時私はメキシコの工場に駐在していました。マキラ(保税区)を利用した工場で、アメリカのデトロイトに小さい事務所があって、北米拠点の社長と若干名の社員がいました。 私がいたメキシコ工場は社員約800名ほどで、当時は私ともう1名の日本人駐在員がいました。日本からの出張者は頻繁に来ていました。

治安のよい場所ではなかったので、建前は安全上の理由で課せられたルールでしたが、実際は日本人社員(出張・駐在)の行動を制限したかっただけです。出張者によっては観光気分の人たちもいました。たいして語学もできないのに治安の悪い場所で夜に出かけたり、週末出かけたりです。そのしわ寄せを駐在員も受けていました。

出張者・駐在者へ課せられたルール
  • 一人で外出してはいけない
  • 出張者はレンタカーを借りてはいけない
  • 駐在者が社有車を運転するときは2名以上同乗すること
  • 徒歩で通勤してはいけない

社有車は1台しかなく、私ともう1名の駐在員が毎日一緒に通勤していました。これがどれほど不便な生活か想像できるはずです。ちなみに私はエンジニアをしていたので、夜勤のシフトで呼び出しを受けることもありました。そのときは、このルールに従うことなど不可能で、一人で工場に通っていました。

・帰宅するタイミングを合わせなければならない
・スーパーへの買い物もひとりで行けない
・住んでいたアパートは徒歩で20分ほどでしたが、徒歩通勤できない
・夜勤シフトの呼び出しや週末出社は誰かと一緒に出社しなくてはならない(不可能です)

最初からこのルールを順守することなど不可能なのです。
「安全」を理由にしていましたが、安全を理由にするのであれば次のような対応をすべきなのです。

  • 1名で帰宅出社する場合は専用の送迎を会社が準備する。
  • 駐在者も出張者もメキシコ側ではなく、アメリカ側に宿泊させる。
  • 日本からの出張を制限する。

ところが、そういった対応はありませんでした。
「安全」はただの言い訳で、本当の狙いは「出張者と駐在者の行動を規制したい」のです。こんな生活が半年ほど続きました。あまりに不便だったので、自費で車を購入させてもらえないかと現地社長に打診したこともあります。
一般の会社であれば、駐在時に会社から車を支給されます。それと比較して個人負担で購入するという提案が、どれほど譲歩したものか理解できるはずです。ところが、残念ながら認められませんでした。

「デトロイトにいる駐在者にも同じルールを適応してみなさい」と内心思っていました。デトロイト側の駐在員は1台ずつ車を支給されていたのです。どれほど不便なルールをメキシコ側に強制しているか、自分たちが経験すればよいのです。


駐在者と出張者を規制するための変なルールと悪い待遇2

そんな不便な生活を半年ほど継続しました。
あとで工場長職の人物が日本から駐在すると、状況は大きく変わります。当時の私の予想は次の2点です。

・工場長職の人物がこんな不便な生活を受け入れるはずがない
・駐在者が3名になると、「2名以上同乗ルール」が現実的ではない

工場長には新しい車が支給されました。
すると、それまで2名で通勤していた「同乗ルール」は何の通達もなく破綻したのです。正式な通達はありませんでしたが、もともと破綻していたルールだったので自然に風化します。私も徒歩で通勤するときもありましたし、一人で車を運転することもありました。
その後しばらくして社有車も増えて、駐在員の車の利用自由度も改善しました。

今までのルールは何だったんだ。こういう理屈に合わない変な仕組みが社内には存在します。結局は、経営陣が責任を取りたくないだけなのです。

何か問題があったときに、「会社としてはこういう対策を取っていた」という予防線が欲しいので、理屈に合わないルールを社員に強制するのです。「安全」を主張しておきながら、必要な投資(車の支給や運転手の準備)はしたくないのです。要するに、従業員の安全が大切なのではなくて、経営陣の保身が重要なのです。

すべての社員を幸せにすることはできないかもしれません。ただし、嘘を取り繕って目的を達成するのはマネージメントのすべき行為ではありませんし、それを見た一般社員は興ざめするだけです。



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