200504 会社の変な仕組み(長期出張と海外駐在の違い)

今回は「会社の変な仕組み」というテーマで話をします。 会社勤めを経験した方であれば、変だなという仕組みがたくさんあるかと思います。例えば、毎朝の朝礼、毎月の集会、社員旅行、年齢構成、無駄な雑務対応などです。その中で今回は私が以前経験した「長期出張」について紹介します。

長期出張の概略

まず、話の前提を紹介すると、私は製造業界で勤務していました。国内には本社機能しかなく、生産現場は海外でした。私は生産技術エンジニアだったのですが、国内には生産工場がないため仕事をするとなると海外工場です。
出張と聞いて、ほとんどの方は1~2週間程度の仕事をイメージされるかと思います。私もそういうものだとイメージしていました。ところが、国内に生産現場を持たないメーカーでは 1ヶ月単位の出張 は当たり前でした。

出張先の国によって、ビザの規定や滞在可能日数が異なります。例えば30日までならビザなしで滞在可能であったり、2週間以上はビザが必要であったり、出発前にビザ手続きが必要であったり、90日まではビザなしでも滞在できたりなどです。
※ほとんどの国で、年間の滞在日数の上限は180日となっています。これは税務上の理由です。180日以上その国に滞在するのであれば、その国に住んでいるとみなし、その国に税金を払いなさいという考えによるものです。

最初のうちは、ビザ手続きが大きなデメリットに思えますが、人によってはビザ手続きを味方に変えています。例えば、出張先で仕事が終わらない場合や次回の出張を避けるために上限を使い切る人達です。もちろん、そんな計画性のないことを平気でするのは仕事ができない人達ですが・・・。

頻繁に日本から海外工場に人員派遣するのであれば、何名か駐在させて現地で完結する仕組みを作った方がよいのでは・・・と感じることは何度もありました。派遣される側にしてみれば、何ヶ月という単位で出張するとなると生活基盤が揺らぎます。本人が希望する場合は別ですが・・・。

経理面での長期出張と海外駐在の違い

それでは、会社が負担する費用の面で長期出張と駐在の違いを考えます。
なぜ、こんな変な仕組みが存在するのかというと、1つには費用面での理由があります。会社には固定費と変動費という2つの費用があります。

固定費は設備や人件費などの費用で、仕事の量に関わらず常に負担が発生する費用です。
変動費は残業代や材料費などの費用で、仕事の量によって変化する費用です。

例えば、注文が増えれば材料を多く発注したり、残業を増やして一時的な仕事増加に対応できます。
長期出張の場合は変動費扱いで、駐在員の場合は固定費扱いになります。


駐在ではなく長期出張を採用することでの会社へのメリット

長期で出張させることで、見た目には大きな費用が出ているように見えます。例えば、出張手当やホテル代は毎日のように発生します。頻繁に出張すれば、毎回の航空券の費用もかかります。それでも、駐在させるよりは費用メリットがあるのです。さらに、変動費は減らそうと思えばいつでも減らすことができます。

一方で駐在の場合を考えます。駐在するとなると、駐在員手当はもちろんのこと、支度金や扶養家族の養育費、一時帰国費用など、出張に比べればはるかに大きな費用負担が必要になります。さらに、この固定費は長期的にかかってきます。よほどの不祥事や人選ミスがなければ、短期的に駐在員を入れ替えるようなことはありませんし、本人にとっても頻繁に異動させられるのは気分の良いものではありません。

費用負担の区分で考えると、出張であれば本社負担が可能です(海外工場負担の場合もあります)。
海外赴任の駐在員にかかる一式の費用負担は現地法人になります。

駐在員を選ぶ時の現地法人社長の承認

費用負担の話との兼ね合いになりますが、駐在をさせるかどうかの大きな要素に現地法人社長の判断があります。
どこの海外拠点でも会社経営は簡単ではありません。そんな状況で会社経営に不利になるような固定費増加をしたくありません。 現地法人社長がその人物を気に入らなければ、いくら本社の意向があっても駐在することはできません。

外部の人材の採用と違って、社内の異動であれば、その人物の仕事ぶりはわかります。高い費用を投じてでも欲しいと思われる人材でなければ、必ず拒否します。現地責任者に評価されなければ、出張が駐在に切り替わることはありません。

上述したような背景があるため、長期出張という名目の人材派遣がされるのです。


※参考書籍)生産技術の教科書Ⅲ
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