200821 日本が変だと思う理由(所得税、法人税、成長戦略)

今回は「日本が変だと思う理由」というテーマで具体例を挙げながら日本が変だと感じる事例を紹介します。ほかの記事でも何度か記載していますが、日本しか知らない人にとっては「当たり前に思える事柄」でも「実は変だった」ということがあります。日本という国は残念ながら外国企業にとっては魅力のない国になってしまっています。 変だと感じる事例を4つほど紹介します。

事例1)中国政府による香港支配が香港経済を変える(その移転先は?)

中国の国家安全法を香港に適応することにより、中国政府が実質的に香港を支配することになります。この法案に伴い昨年から香港ではデモ活動が実施されていますが、残念ながらすでに中国政府の支配下に落ちています。

この状況を踏まえて、香港から脱出する国民が大勢います。また、海外企業も拠点を香港から別のアジアの国に移そうという動きが高まっています。 コロナ騒動前のイギリスのEU離脱と状況は似ています。EU圏内での輸出入や人の移動に制限がかかることで、外国企業がイギリスから引き上げる動きと全く同じです。

アジアの大都市にとっては香港からの投資を受け入れる大きなチャンスとなったわけです。 多くの企業はシンガポールに移動するようです。ニューヨークタイムズは香港在住の記者を韓国ソウルに移転したようです。残念ながら日本はアジアの中では移転先候補になっていません。

日本経済新聞の要約を抜粋すると、香港の優秀人材にとって日本は移転先として魅力がないようです。その1つが高い税率です。1千万円の課税所得に対する日本の所得税率は33%(シンガポール15%、香港17%)
日本の税率がいかに高いかということを表しています。


日本政府はこの所得税を下げるつもりはないでしょう。ただでさえ毎年のように赤字の借金経営をしている政府です。(無駄と思える税金と使い方が多いように見えますが…) 短期的な損失を覚悟してでも長期的に得をするような施策が日本にはあるようには思えません。経済成長できていない状況下で、財政赤字で借金が毎年のように拡大しているのは完全に異常で、その先にあるのは破綻です。

続いて法人税をみてみます。
アジアで比較すると、法人税率は日本33%、香港16.5%、シンガポール17%、韓国22%となっています。日本の法人税率がいかに高いかわかります。これでは外国企業は日本に拠点構える気にはなりません。


事例2)日本の変な税制度は富裕層を海外に排出する

日本の国税庁は日本国民が持つ海外資産に対しても課税対象として扱っています。
2018年度より海外口座の資産についても情報を入手できるように海外政府と取り決めをしています。すべての国が対象になるわけではありませんが、この対象国は徐々に増えると思われます。


簡単に言えば、日本国籍の富裕層が隠し持っている海外資産が丸裸にされるということです。日本国内の資産だけでなく海外の資産についても国税庁が取り締まる権限と手段を持ってしまったということです。 庶民には関係ないと思うかもしれませんが、こんなことをすれば富裕層が日本を捨てて海外に移住します。結果的に日本の税収は減る方向になるため、さらに庶民の税負担が高くなる方向に作用します。

上述した高い法人税や所得税からわかるように、日本は税率を下げて投資を呼び込んで産業を育てて結果的に税収を増やすという長期的な戦略はありません。取りやすいところから税金を取るという超短期的な戦略です。 これでは結果的に投資が日本に集まらないのでジリ貧になるだけです。


事例3)日本がとるべき政策と的外れな現実(移民政策)

日本は香港の有能人材を引き込もうとしていますが、上述の通り税金面で日本に魅力がありません。さらにいえば、日本は経済成長が停滞しています。今後は人口減少により経済はさらに悪化します。 結果的に税収が減るので国家予算も減り社会福祉の予算も減っていきます。
おそらく日本政府は税率をさらに高くすることになります。これでは負のスパイラルです。本来やるべきは、税率を下げて外資を国内に誘致して日本に投資してもらうべきなのです。(わかりやすい事例が日本の観光産業です。過去10年で外国人観光客が増えて国内産業としては大きく拡大しています)

イソップ寓話の「北風と太陽の話」でいえば、いくら北風を吹いても旅人は服を脱ぎません。暖かい太陽でにっこり微笑まないと服を脱いでくれないのです。外国人を歓迎するのであれば、日本に対して魅力があることを示さないといけないのです。 ところが、日本政府がやっていることは真逆です。

人手不足に対して日本政府がやろうとしているのは、安い労働力を海外から輸入することです。介護やサービス業での人手不足を海外の労働力で賄おうとしているのです。私には、短期的な視点で弱者を利用して勤労させているようにしか思えません。さらに、もともと日本にいる若者は賃金の安い移民との競争にさらされるため、若者の給料は上がりません。未来を背負うべき若者の就業環境は悪化し、優秀な若者は海外へ職場を求めるようになるでしょう。

一時的な海外の労働力に頼るとしても、出生率が増加しなければ長期的に人口減少問題は解決しません。 この課題に対策するには、次の2つを優先させるべきなのです。
1.子育て制度の充実(金銭的なインセンティブと育児を支援する社会制度)
2.若者及び現役世代への教育環境の提供によるスキルアップ(将来不安の撲滅)

生産性を上げるための社会人教育について面白い制度があるので、イギリス政府の事例を紹介します。イギリスでは一定規模の会社に「従業員トレーニング」というある種の税金を課しています。これは簡単に説明すると、2年以内に人材トレーニングを実施すると、そのコストの分だけ払い戻してもらえる仕組みになっています。 2年以内に実施しない場合は政府がそのまま徴収します。
つまり、この制度の狙いは企業に社員のトレーニングを「強制」することです。


抜本的に日本全体を改革しようとするのであれば、安い労働力に頼るのではなく外国企業やハイレベル人材を招聘して日本の生産性を上げる必要があるのです。


事例4)BBCのニュース報道(時代遅れの日本のしくみ)

少し前にBBCで日本の報道がありました。以下リンクの26分頃です。
海外から見た日本はワーカホリック(働きすぎ)として紹介されていますが、日本での時代遅れのfax 、判子、対面式の面談重視、こういった生産性を落としている要素が報道されています。技術立国の日本で「コロナの感染者集計をfaxでやっている」というのも報道されています。 情けない話ですが、日本の現実です。変な仕組みを美徳としているのか、単純に時代についていけていないのか、既得権者が産業を支配しているのか、リーダーシップが弱いのか、いろいろ理由はあるのだろと思いますが、結果だけを見ればたくさんの無駄を残したままで生産性を落としています。

参考)BBC報道


もう少し客観的に日本の競争力を調査したレポートがあります。

このレポートによると日本の競争力は34位です。年々順位を落としています。
他の例を挙げると、時価総額、特許出願件数なども併せて参照ください。世界における日本の現状がよくわかるはずです。 GDPで世界3位という経済大国という扱いを受けていますが、GDPはしょせん単価×件数の総合です。人口の多さがGDPを押し上げているだけです。 「日本の生産性が低い」といわれている通り、1人当たりのGDPで比較すれば、日本の本当の実力が分かります。

日本政府は上記の現実を認識しているはずですが、あまり効果的な施策が打てているようには思えません。目の前のハエを追いかけることばかりに時間を奪われて、長期的な戦略がないように思えます。

私の予想ですが、おそらくあと10年は同じような状況が続くでしょう。過去30年変わらなかったように、しばらく変わらないでしょう。 今のギリシャのような状況になって、ようやく国民の多くが現状を理解するようになり、政府に圧力がかかるのではないかとみています。


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