200922 転職者の強みと弱み
今回は「転職者の強みと弱み」というテーマで話をします。海外と比較すると日本では人材の流動性が少ない状況です。世間を見ていると転職して幸せになったと感じる人もいれば、逆に不幸になったと感じる人もいます。本人がどう受け取るかはともかく、転職者の強みと弱みについて考えてみます。
【目次】
- 転職の一般事例紹介(ユニクロ帝国の光と影)
- 転職者の弱み
- バックグラウンドとなる情報量が極めて少ない
- 人脈がない(味方が敵になる可能性もある)
- 商品についての詳細を学ばなければならない
- 転職者の強み
- 社外の知見を持っている
- 前職と現職の違いを比較できる
- 採用されたということで会社の期待に応えられる要素をもっている
- 特定分野の専門性を持っている
- まとめ
転職の一般事例紹介(ユニクロ帝国の光と影)
本題に入る前に1つ具体例を紹介します。先日「ユニクロ帝国の光と影」という本を読んでいました。ユニクロといえば、柳井さんが会社を成長させた日本の数少ない優良成長企業です。現在の売り上げは年間2兆円ほどあります。
衣料品という先進性のない分野でありながら、会社をここまで拡大してきたことは見事です。日本国内だけでなく、海外展開もしていて、SPA業界で1位のスペインのインディティックス(ZARA)を超えようとしています。
ユニクロは20年前は数十億円の売り上げ規模の会社でした。そこへ澤田さん(伊藤忠商事出身)と玉塚さん(AGC出身)が参加します。いずれも役職者ではありませんでしたが、ユニクロ内では最終的に副社長や社長のポジションを担当しています。その後2名ともユニクロ退職。その後、2010年代に澤田さんはファミリーマート社長、玉塚さんはローソン副社長になり同一業界で競うことになります。
本の中では、「衣料品の繊維の成分や生産工程などの詳細な専門知識については柳井さんだけだった。他の役員で繊維の詳細を把握できているものは少なかった。」という記載があります。転職経験のある私にとって、この表現が印象的でした。
これからは、転職はますます一般的になってくると考えています。日本社会全体の考え方はまだまだ変わらないかもしれませんが、勇気を出して転職する人にとって転職が悪い方向に働かないように、いくつか私個人の考えと客観的な事実を紹介します。
転職者の弱み
まず転職所の弱みを紹介します。
完全実力勝負となる転職ですが、実力以外の面でも転職者に不利な要素はたくさんあります。
バックグラウンドとなる情報量が極めて少ない
新しい会社の事業環境、人脈、過去の経緯などは転職したての頃は分かりません。同一業界に所属していたとしても、会社によって考え方や見え方は変わります。前職でできていたことでも、新しい会社では簡単にできない場合もあります(もちろんその逆もあります)。
こういった社内の風習などは入社するまで見えてきませんので、入社後に会社に自分を合わせていくか、自分で社内を変えていくことになります。
配属先の組織や上司・同僚・部下も配属ガチャ(おみくじ)です。エリート集団のような場所で仕事ができるのが理想ですが、現実は平凡です。人材を募集しているような会社は社内に何かが不足している場合が多く、期待しているような集団には所属できないと考えておいた方が無難です。
人脈がない(味方が敵になる可能性もある)
知り合いがいる会社に転職する場合を除き、人脈はゼロから形成することになります。信頼関係を築くことから始まるので、時間がかかります。他人からの評価を獲得できない場合は人脈形成にも苦労するため、仕事がさらにやりにくくなるという悪循環に陥ります。
また、唯一の味方である採用面接担当者は部門責任者や役員ですが、ポジションによっては直接仕事面でやり取りするようなことはないでしょう。また、唯一の理解者であり味方に思えた相手であっても、実は敵だったということもあります。
自分(当時の社長)が採用した相手と後に犬猿の仲になっている事例を何度か見てきました。まるで子供の喧嘩かと思えるような嫌がらせを役員レベルでやっているのです。
商品についての詳細を学ばなければならない
同業他社に転職する場合を除いて、取扱う商品やサービスは会社によって異なります。当たり前の話ですが、自社の商品の特徴や性質を正しく理解しておく必要があります。仕事内容によっては直接関係ない場合もありますが、知っておくべきでしょう。
例えば、ユニクロの例でいえば人事の仕事であれば商品知識は必要ありません。役員レベルで各店舗管理や業績管理をするのであれば、直接的な商品知識は必要ありません。
ところが、大きなプロジェクトをこなしたり、仕事品質を高めようとすると情報として持っておかなくてはなりません。ユニクロの例でいえば、原材料の選定やサプライヤの原価改善をしようとすると繊維の品質や製造工程を理解しておかないといけません。
とはいえ、そんなことを転職者に期待していません。繊維業界出身者でない限り、そんな情報を知りえません。上述の2名も商社やメーカー出身です。
話をまとめると、新しい職場で活躍したいのであれば自社製品について学ばなければならないということです。
こんな話ばかりすると少し悲観的な内容に思えるかもしれません。転職者は不利な立場に立たされながら、会社に慣れるまでは完全に実力勝負になるからです(私は、この挑戦が本人を成長させてくれると考えています)。
悲観的になる必要はありません。まじめに努力していれば、周りに評価してくれる人は必ず存在します。誰でも最初は挑戦者です。進学や就職を経験した人なら転職にも適応できます。
転職者の強み
続いて転職者の強みを紹介します。
社外の知見を持っている
1つ目が他社を知っているということです。
日本人の多くが終身雇用で守られているため、自社しか知らないという人が大勢います。転職経験者であっても、20代前半にだけ転職しただけで、未転職者とほとんど変わらないような人も大勢存在します。一方、30代~50代のタイミングで転職を数回経験している人は、社内事情を知っているだけでなく高い専門性とマネージメントスキルがついた状態です。
そういった他社で培った経験や専門性は新たな視点になります。同じ会社で長年勤続することを否定するわけではありませんが、流動性の記事でも紹介している通り、組織というのは定期的に見直されるべきだと考えています。そういった点では、転職者の採用は組織活性化の役割を果たしてくれます。
前職と現職の違いを比較できる
物事の良し悪しを判断しようとすると、比較するのが一番簡単です。
例えば、「日本の状況が悪い」と思っている人でも、海外の状況を知ると「日本人でよかった」と思えるかもしれません。日本国内の状況だけを見て、高齢化や少子化、財政悪化、パワハラなどの悪い報道ばかりにさらされると日本がよくないと思ってしまいます。ところが、海外生活を経験して、医療制度の不足、不便な生活、治安問題、政治腐敗などを知ると、「日本は住みやすい」と感じます。要するに、物事は相対的に見ないと判断しにくいということです。
職場環境についても同様です。会社の仕組みや仕事のやり方、事業構造や収益体制などの良し悪しは何かと相対的に比較しないと正しく判断できません。転職する場合は、良くも悪くもそういった違いを見ることができます。転職することで物事が良い方向に進むというわけではないですが、違いを経験することで新しい視点を持てるということは強みです。
採用されたということで会社の期待に応えられる要素をもっている
転職するための最大のハードルは採用試験です。
試験に合格することが目的ではないですが、試験に合格しなければ何も始まりません。採用試験では、過去の経歴や書類の内容、面接でのコミュニケーション力、態度、人間性などすべてを見られています(※職歴だけではありません)。会社の期待に一致する人材であることを証明し、応募者同士の競争に勝たなければなりません。
内定を受けるということは、過去の実績や自社での活躍を期待されているということです。社内に同レベルの人材が大勢いるのであれば、わざわざ外部から人材を採用しようとは思いません。そういう点では、内定通知をポジティブに受け取ればよいと思います。
繰り返しますが、日本では終身雇用に守られているため従業員の解雇が簡単ではありません。したがって採用ハードルを上げておかないと会社経営が厳しくなります。内定が出るのはエリートの証ということです。(とはいえ、採用されることが目的ではありません。新しい職場で活躍して会社に貢献すること、自分が成長することが本来の目的のはずですので、この点には十分注意してください。)
特定分野の専門性を持っている
転職する人にもよりますが、ミドル転職者の場合は専門性やスキルを持っている人がほとんどです。特定の分野で実績を残している人たちです。上述の2名であれば、商社やメーカーです。
業界は違いますが、2名は衣料品の小売業界に転職しています。過去の経験を異業種に展開できるかもしれませんし、新しい知見を身に着けて、これまでの専門領域とのシナジー効果を発揮するかもしれません。
もし、転職先での仕事がうまくいかなかったとしても、自分の専門領域に戻ることもできます。商社やメーカーの業界に戻るということです。ミドルの転職者にはこの強みがあります。仮に転職で失敗したとしても、保険として機能する選択肢があるのです。
まとめ
転職者に関する強みと弱みを紹介しました。世間一般ではリスクを強調する印象ですが、転職自体は悪いことではありません。現在の日本の雇用制度は転職に不利に働くことは事実です。終身雇用を前提とした退職金制度や採用ハードルの高さです。
継続することは素晴らしいことであり、転職を推奨しているわけではありません。現状の生活に満足できるのであれば、転職などする必要はありません。ところが、日本国内での調査や社内実態をみると、不満を持っている会社員が大半です(不満を持っている人に限って何も行動を起こせていないのも事実です)。
そんな人たちには環境を変えることを勧めます。簡単ではありませんが、自分の人生を好転させるために挑戦してもらいたいと思います。
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