200907 社員の流動性がある会社とその効果

今回は「社員の流動性がある会社とその効果」というテーマで話をします。会社によって社員の流動性の傾向は大きく変わります。そこで今回は組織活動と流動性の関係について考えてみます。自分の所属する会社がどうなっているかについても参考にしてみてください。


流動性がある会社と流動性がない会社

流動性の定義を次のようにします。
1.社外から人を採用する場合、社員が退職する場合を伴う変更
2.別拠点への異動あるいは別拠点からの異動を伴う変更
※同じ拠点内の別部署への異動や近隣地区内での異動はカウントしない

例えば、離職率が高い会社や採用活動が活発な会社は流動性が高いといえます。成長企業はこのタイプになります。一方で流動性の少ない会社は採用活動が少なく、退職者も少ないような会社です。公務員や大企業はこのタイプになります。

流動性がある会社の事例紹介

流動性がある会社の事例をもう少し詳しく見ていくと、社員の別事業部への異動や別拠点への異動のほかに、部門責任者の定期的な入れ替わりです。以前私が所属していた会社では私が所属していた部署の部長職は2~3年に1度の頻度で交代していました。中には若手の退職者も一定の割合で存在します。人事部も退職を見越して、少し多めに新入社員を採用している印象でした。年齢にかかわらず、やめていく人材もいれば、新しく入ってくる人材もいました。

人材定着という点ではデメリットが多いのですが、別の知見を持つ人物が組織を活性化するというメリットがあります。

流動性がない会社の事例

一方で流動性がない会社は、傾向として採用すればするだけ社員が増えて組織が大きくなっていきます。ある程度人員が揃ってしまうと、退職者が少ないため新規採用できなくなってしまいます
また、退職者が少ないので社内の異動機会も減ります。社内の異動がある場合は人材が不足している場合だからです。(例:部長職の人物が退職したために別の拠点の適任者を後任にするなど・・・)

人の異動が不要になるという点で安定した組織活動を実施できるというメリットはありますが、組織の活性化という点ではデメリットになります。

ただしく組織運営するための個人的な見解

これはあくまで私個人の見解ですが、組織を最適化しようとする場合は流動性が必要です。 理由は「新しい考えに触れることができるから」と「同じ人間関係では考えが主観的になりがちだから」です。

結果責任で人事を決めるべき

外部監査と同じで、組織や仕事は外部の視点を必要としています。閉ざされた組織になってしまうと、社外と社内の区別が徐々に見えなくなっていきます。わかりやすく言えば、社外からの評価を受けない場合は、間違っていることでも容認されてしまうことがあるということです。何年も何十年も同じ人物とのやりとりでは変化もなく前進もありません。

特に経営者(部門責任者)は業績に対して結果責任です。結果を伴わない場合は、結果を残せる人物を配置しなくてはなりません。

スポーツチームの監督や選手が数年単位で交代するように、ある程度結果を見ながら人事を変えていかなくてはならないのです。会社組織も変化するべきなのです。これは経営者や役員人事についても同様です。


これも一般的に考えれば、納得がいく理屈だと思います。いくつか試して失敗を繰り返さなければ成功しないからです。組織形成も実験と同じです。たまたま現在の人事が成功だったということは確率的に少なく、ほとんどの場合は消去法人事のはずです。

「もたれあい社会」をなくすべき

2つ目の視点が、マンネリや感覚のマヒを避けるためです。 一部の成長企業は別として、業績が停滞した企業で同じ経営者が何十年も同じ職場に居座るべきではないと考えています。

政治の世界に当てはめれば、この考えは明らかです。 「アラブの春」といわれた2010年代前半のアフリカ北部の政権交代に代表されるように、何十年も同じ権力者が国を支配すると悪いことしか起きていません。長期的に役職や権力が約束された状態になると、人は権力を濫用してしまいます。
どれほどの人格者であっても誘惑には勝てないようです。有名人の犯罪や会社役員の不正もメディアに報道される通りです。人の行動を規制するには、それなりの環境や仕組みが必要なのです。


別記事(「日本独特の課題」)で紹介しているとおり、日本の職場は終身雇用を前提とした職場関係になっています。流動性のない会社では長期的な人間関係で社内家族のような「もたれあい関係」を前提とした上司と部下の関係が存在します。悪く言えば、年長者が若者を餌食にするような構造です。パワハラ、セクハラ、長時間労働、天下り人事などの問題は「もたれあい関係」の遺産です。これらは完全に感覚がマヒした行動です。

流動性のデメリットと安定志向の人への提言

流動性のデメリットをあげると、「人材が定着しにくいこと」と「実力主義が適応される」ことくらいでしょうか。 人によっては、安定した仕事に就いて生活したいと考える人もいるかもしれません。そんな人にとっては上司や部下が定期的に変わることをストレスに感じるかもしれません。自分の仕事が厳しく評価されることにストレスを感じるかもしれません。

ところが、外の世界が大きく変化している以上、その変化に逆らうことはできないと考えています。終身雇用などは20~50年前の戦後の仕組みです。雇用の流動性が少ないのも、世界的に見れば特殊です。つまり、日本の仕組みが特殊だということです。
さらに、上司や部下と性格が合わない場合は、長期的に嫌な思いをすることになります。何十年もそんな関係が続くことを想像すると絶望しませんか?

どんな職業でも「安定」という表現はできないと考えています。大企業に勤めるサラリーマンや公務員でも、リストラや倒産リスクは存在します。
※公務員にリストラはないかもしれませんが、日本の負債規模を考えると長期的流れとして公務員の削減や一部の機能の民営化という流れは避けられないはずです。そうなった瞬間に公務員という特権はなくなります。



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