190923 設備見積もりと社内稟議

今回は「設備見積もりと社内稟議」というテーマで話をします。

設備発注は大きな投資です。金額にもよりますが、生産ライン1本の投資となると役員会での決済事項になります。実務担当者が起案する稟議書が役員や社長まで回覧されます。

本題に入る前に少し背景を説明します。海外拠点に出向していた当時、たくさんの稟議を処理しました。現地にアシスタントがいて、彼らが処理してくれればよいのですが、組織が弱く、全部自分で処理していました。生産技術エンジニアで生産現場の面倒を見ながら、新規ラインの準備をしながら、稟議書といった事務手続きもかなりこなしていました。在籍していた期間だけで合計20億円程度の投資を行いました。


設備稟議で生産技術者が注意するべき事柄

仮に新規設備1台1000万円とします。あるいは既存設備の改造で300万円とします。担当者によっては、見積書1枚で発注許可を求める者がいました。ところが、 見積書1枚では詳細がわからないので判断できません。設備図面や詳細構造もなく、費用明細もないので、その見積価格の妥当性を支持する資料が何もないのです。これで投資判断を求めてくるのは、間違いです。

普通の感覚を持っている人であれば、理解できると思います。例えば、車を購入することを考えてください。1台200万円の車というだけで、写真もなく、試乗もできない、どんな車かもわからない状態で、購入判断をする人などいません。


ところが、生産技術の仕事をしていると、こういった事例がよく見受けられます。しかも担当者の年齢に関係なく見受けられます。日本でも設備の図面もないのに発注依頼していることがありました。こういう人たちは経営的視点が欠けています。また、設備設計や構想段階で失敗する可能性も高くなります。車購入の話を考えてもらえばわかりますが、自分が納得できていない内容について、価格の同意をするということはそういうことです。さらに言えば、稟議決裁をもらえる可能性も下がります。


稟議作成時のポイントと承認決済について

駐在していた当時、自分が起案した稟議案件を拠点責任者に説明して決済をもらうわけです。いい加減な稟議を通したことはありませんし、納得していないものはすべて却下しました。部下から上がってくる案件や取引先から来る見積もりや設備図面について、私が納得できないものは上層部には回すことができませんので、すべて厳しくチェックしていました。おかげで、私が承認する稟議は、ほぼすべて責任者から決済されました。

些細なことですが、起案案件について詳細まで明確に説明する責任があります。説明できない内容や書類の不備などがあれば、その人の仕事の品質が疑われます。極端なことを言えば、稟議の内容についても疑わしくなるということです。1度でもそんな失敗をすると、次からさらに厳しい目で見られます。私が決裁者ならそうします。



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