191111 海外で使用する量産設備の取扱説明書を英訳する必要性

今回は「海外で使用する量産設備の取扱説明書を英訳する必要性」というテーマで話をします。
グローバル化により、生産設備を海外へ輸出したり、海外から輸入したりする機会が増えています。 日本で設備を使用する場合と違って、日本で製作した設備を海外工場で使用する場合(海外で製作した設備を日本で使用する場合も同じ)、言葉の壁が大きな問題になります。この時生じる問題点と対策を紹介します。

1.量産設備の取扱説明書が英訳されていない場合の弊害

例えば、日本の製造業の会社が日本で量産設備を準備して海外工場へ発送することを想定します。海外工場は中国とします。この場合、量産 設備のユーザーは中国の人達になります。日本で準備した量産設備は日本語表記で、操作パネルや図面などもすべて日本語です。これでは、ユーザーである中国人の方は細かい内容を理解することができません。そんな状態で何年も量産をしないといけないのです。


日系企業で働く中国人の場合、日本語ができる人もいるのは事実です。中国において日本語を勉強する人は結構います。私の知り合いにも日本語を話す中国人は大勢います。

とはいえ、これでは中国側は困ります(口に出すことはないかもしれませんが、潜在的な問題であることは事実です)。 また、日本製の設備すべてを中国語対応するようなことはできません。設備製作側で中国語対応を求めるのは無理です。妥協策として、日本語と英語を併記するべきでしょう。これなら日本語がわからなくても、英語から調べることはできます。

生産技術案件で現地化するための大きな課題

日系企業の場合、日本人が現地に駐在しています。最後は日本人が設備の面倒をみなくてはなりません。簡単にいえば、インフラが整っていなくても、エンジニアを派遣しておけば処理されるわけです。駐在員に負荷はかかりますが、これが日本のやり方です。ところが、これではいつまでたっても現地化はできませんし、現地人も設備に愛着など持つはずがありません。

極端な例を挙げると、日本の製造現場でアラビア語の生産設備を利用するのと同じ状況です。日本語の設備であれば問題なく利用できたとしても、言葉の壁が立ちふさがるだけで現場の運用が極めて難しくなることが想像できるはずです。
残念ながら他人に対して、この苦労を強いている日系企業は多いのです。

2.海外工場で使用する量産設備に盛り込むべき英訳仕様

このような背景から、私はある時から次のような対応を盛り込むようにしました。

・設備説明書の英訳
・機械図面および部品表の英語対応
・配線図の英語対応
・PLCや操作パネルの表記の英語対応
 内部のコメントの英語対応含む
・PCが付属する場合は英語OSのものを選定し、ソフト表記もすべて英語対応


設備製作会社にとっては負荷になりますが、入り口でこの対応をしないと、後々何年間も現場で苦しむことが明らかだったので、対応することにしました。設備検討段階から何度も取引先に説明し、構想図の検討段階、設備完成段階でも何度も念を押して説明しました。最初は対応に苦労しますが、1度経験してしまえば次からは標準で対応してくれます。

上記の対応をしておけば、言葉によるハードルは下がります。技術情報というのは万国で共通です。出身国や文化が違っても、機械図面や配線図やプログラムを見れば内容は理解できます。

3.認識すべき英訳の重要性

この課題は、実は私も何年も見過ごしていました。
自分が他国性設備を使用するまで、他人の苦労を知ることができなかったのです。自分は日本で準備された設備を中国でセットアップする側なので、言葉の問題はありませんでした。ところが、自分が他国性設備の操作をする立場になると、言葉を理解できていないために操作パネルのボタン1つ押すことすらできませんでした。人は自分が苦労しないと、他人の苦労を理解することができないのです。

もちろん、英語対応をすることで設備の購入価格は高くなります。それでも中長期で考えるとメリットの方がはるかに大きくなります。



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