191114 10年以上の経験者が語る生産技術職の5つのメリット
今回は「10年以上の経験者が語る生産技術職の5つのメリット」というテーマで話をします。
10年以上にわたり生産技術職を続けてきて、私が感じたメリットは次のとおりです。
これから生産技術職を目指す方は参考にしてみてください。
メリット1)ものづくりのおもしろさを実感できる
製造業の製品に限らず、楽曲や映画などの芸術作品であっても、何か作品を作るというのは大きな喜びと達成感を与えてくれます。自分が導入した設備を使用して製品ができた時は、達成感を感じます。
私個人も何かを作ることが好きなタイプでした。随分前の話になりますが、就職活動時には現場で仕事ができることを基準の一つにしていました。あまりデスクワーク中心の仕事や交渉や接客などの対人的な仕事をしたいとは思っていませんでしたので、生産技術の仕事は自分にあっていました。
生産技術職にも事務作業はあります。それでも、一日中パソコン作業をするようなことはありませんし、パソコン作業に疲れたら現場を回って気分転換することも自由にできます。
メリット2)現場の改善を実感することで達成感が得られる
工夫して課題を解決した時には改善効果がすぐに表れます。
生産現場の不良率や設備停止時間によるロスを改善すれば、生産数に反映されます。装置のサイクルタイムを短縮すれば、単位時間の生産性が上がります。これらの改善活動により、大きな金額効果となって会社に貢献することができます。生産性が高めれば、製造現場の人たちの勤務時間に余裕ができます。これまで残業や休日出勤で対応していた生産が不要になり、大きな職場改善につながります。
規模の大きな会社に勤めると、なかなか自分の仕事の成果を実感しにくいものです。自分が何のためにその仕事をしているのかわからず、モチベーションを感じられない場合が多いものです。打ち合わせや社内のやりとりなどは直接的には何の価値も生んでいません。
そういう点では、 改善効果が見やすい生産技術の仕事は、結果次第でモチベーションを高く保つことができます。一方で成果を出せない場合は、逆にプレッシャーにもなります。そのあたりは個人の努力とチームでの活動次第です。
メリット3)設備や製品の内部構造が分かる
設備や製品についての知識が深まると、内部構造や制御の仕組みが分かってくるようになります。
自社以外の家電製品や産業機器の内部構造や制御方法について見通しが立つようになります。
優れた技術であればさらに興味を持ったり、構造が分からないものはどうなっているのか気になったりします。
メカ、電気、ソフトについて経験を積むと、どの製品や設備でも基本的な考え方は同じです。エンジニア職になって実力をつければ新しい世界が見えてきます。
これはエンジニアリングの面白さでもあります。すべては基礎物理学に従っていて、現場改善に失敗しても成功しても、そこにあるのは同じ原理・原則だけです。課題を正しく捉えて、原理原則に従って対策を打てば、期待通りの結果が返ってきます。
メリット4)生産技術職は設備投資案件に関われる
生産技術の仕事の1つに新規生産ライン導入という仕事があります。
新規の生産ライン準備のための設備投資になると、数億円の単位で必要になってきます。リーダー職になって、これくらいの規模の予算を自分で管理するようになるとプレッシャーとやりがいを感じられます。失敗は許されませんので、慎重に投資金額と設備仕様の妥当性を見ながら判断していくことになります。個人レベルでは扱えないような金額を扱うことで、大きな責任感と会社経営の考え方を実践できるようになります。
この新規ラインの設備投資が生産技術職をしていて感じる一番の面白さです。製品開発者が自分の製品を開発したいのと同様に、生産技術者も自分で設計した生産ラインを導入したいのです。
メリット5)一流の生産技術者は転職機会に恵まれる
別記事でも紹介していますが、製品や生産工程は違っても生産技術の考え方はどこでも大体同じです。実力があれば、どこの会社でもやっていけます。私の周りにも転職者は大勢いました。私が入社した当時にも、「10年生産技術者をしていれば、どこに行っても仕事に困らない」と言われていました。
当時から10年以上たって、私の意見は次のようなものです。
「5年以上の経験と輝かしい実績があれば、どこへ行っても通用します。
ただ10年過ごしただけ人物であれば、どこでもやっていける保証などありません。」
過去3年くらいの転職市場では、技術者に対しての需要が高まっているのは事実です。真剣に仕事に向き合い自己研鑽を重ねて、成長機会に恵まれれば、技術者としての実績を積んでどこでもやっていける人材になることは可能です。
デメリット1)世間の連休がつぶれる可能性がある
続いて、生産技術のデメリットを3つ紹介します。
生産技術という仕事は、生産ラインの導入や改善です。設備の大きな改造をするときは設備が稼働していないときでなければできません。生産を計画的に止めることができれば、平日でも設備を改造することができます。ところが、生産に追われて余裕がなくなってくると、設備が空くタイミングは連休中くらいしかありません。
したがって、世間が休んでいるときに仕事をしないといけない可能性があります。私は就職して最初の3年くらいは大型連休に旅行などの計画を入れていましたが、徐々に連休直前まで仕事の見通しが不明になり、20代後半からは連休の計画はいつも休み直前に決めていました。
デメリット2)生産ラインが稼働する限り気が休まらない
これは24時間体制で生産が始まった時の話です。
生産シフトが増えると、自宅に帰った後でも会社に呼び出されて出社することがあります。特定の人物しか対応できない問題というのは存在するので、技術力がつけばつくほど夜勤に呼び出される可能性は高くなります。
夜勤のサポートが薄いので、意図的に夜勤をしていたことがありましたが、今度は逆に昼間の体制が弱くなり、昼間自宅で睡眠中に呼び出されることもありました。
これは休日出勤して生産がある場合も同様です。自分が出社していなくても、生産ラインで何か問題が起きると、呼び出しを受ける場合があります。
他人のプライベートを尊重してくれる会社であればよいのですが、優秀な人材になるほどしわ寄せを受ける立場になります。こうなってくると、休みの日も気が休まりません。
デメリット3)問題が解決するまで仕事が終わらない
これも生産ラインの対応ですが、問題が起きて生産が止まると会社にとっては大きなロスになります。従って数時間以内には復旧させなくてはなりません。製造業で働く厳しい現実ですが、時間が来たからといって帰宅できるわけではありません。定時直前に問題が起これば、その日は遅くまで残業することになります。
また、朝出社して生産現場が止まっている場合も同じです。その日の予定をすべてキャンセルして現場の問題解決に当たらなくてはなりません。悪い言い方をすれば、現場に振り回されます。
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