191208 生産技術の仕事内容とキャリア形成

今回は「生産技術の仕事内容とキャリア形成」というテーマで話をします。どういった仕事内容でどういったスキルが身に付くのか簡単に紹介します。これから生産技術エンジニアを目指す人の参考になればと思います。

1. 生産技術の仕事内容

仕事内容はざっくり以下の項目になります。
各項目の説明は省略しますが、全体感としてはこのようになります。

生産技術の基礎
  • 機械製図
  • CADのスキル
  • 空圧機器や配管図の理解
  • 電気配線図
  • 制御機器の理解(リレーやPLCなど)
  • プログラム制御の基礎
  • タッチパネルとPLCの操作方法
工程設計
  • P-FMEA作成
  • コントロールプラン作成
  • 製造帳票作成
  • 設備投資試算(投資金額、労務費)
  • 生産ラインのレイアウト準備
  • 設備仕様書の作成
  • 設備立ち合い、導入
  • 工程能力とMSA
  • 各工程のパラメータ評価
現場改善
  • 生産性改善(サイクルタイム、不良率、チョコ停など)
  • 設備増設(生産能力増強)
  • 既存ラインへの新機種追加(設備の改造)
  • 量産ラインのサポート(品質問題や設備問題の技術サポート)
  • 設備維持・管理(スペアパーツの準備やメンテナンス体制構築)

配属先や組織の方針により仕事内容は様々

生産技術といっても担当する案件によって、仕事内容は様々です。
例えば、ドキュメントの準備も生産技術の仕事です。新規設備の導入も生産技術の仕事です。
現場の改善業務も生産技術の仕事です。所属する組織によっては「当初期待した仕事と違う」と思うかもしれません。

生産技術という仕事をする以上、生産現場での仕事がメインになります。
以前勤めていた会社では日本に現場がなく、現場があるのは海外工場だけでした。おかげで、よく海外工場へ出張していました。多いときは1年のうち6~8ヶ月ほど日本を留守にしていました。現場がない拠点で生産技術をすると、こういう働き方になります。

以前、社外の人から「現場がないのに何をするんですか?」という質問を受けたことがあります。1つは上述のように、現場に長期出張して改善活動や新ラインの立ち上げを行う仕事です。もう1つは、新規プロジェクトの準備です。1~2年後に導入予定の新規量産ラインの仕様検討などです。

やはり、 生産技術という仕事をするのであれば、現場があるところに勤めるべきです。現場がないところに所属したところで、技術は伸びませんし、働き方も構造的に無理があります。

2.生産技術をしていて身に付くスキル

生産技術をしていて身に付くスキルを紹介します。
私は10年以上生産技術をやっていました。ただ長くやればいいというわけではないので、スキルが身に付くかどうかは本人次第ですが、ざっと上げると以下のような項目です。

1.メカ関係
  • 治工具設計、設備のメカ設計
  • 機械製図(幾何公差、はめあい、金属材料、表面処理など)
  • 機械加工(ボール盤や旋盤などのちょっとした汎用機での加工スキル)
2.電気・ソフト関係
  • 電気設計、配線作業・デバッグ
  • PLC操作、ラダー設計、プログラムデバッグ
3.ドキュメント関係
  • P-FMEA
  • Control Plan
  • 製造ドキュメント
4.工程設計
  • 設備仕様準備
  • 生産ラインレイアウト設計
  • ライン内物流、人員配置
  • 製品構造と特性に関する深い理解
5.量産ラインの改善
  • 生産性、不良率、サイクルタイム、自動化など
6.その他
  • 設備付属機器に関する専門知識(カメラ、2次元リーダー、多軸ロボットなど)
  • IATF、ISO要求事項
  • プロジェクトリーダー
  • 設備投資予算管理、設備立ち上げスケジュール管理
  • 外国人の教育
  • 日本人部下の教育
  • 顧客監査の対応
  • 本社役員訪問時の対応
  • 海外駐在、量産機種の技術サポート
  • 新規設備メーカーの開拓と設備のローカル化

会社の方針や事業の状況による部分はあるのですが、10年振り返って以上のような項目です。この中で純粋に生産技術の仕事といえるのは、1~5の項目になります。6.については付随して発生した案件になります。

実力を磨けば汎用性が高い生産技術の仕事内容

また、黄色で色を付けた部分は所属する会社で生産する製品や設備仕様に依存する部分が大きいので、扱う製品や設備が変わると大きく変わる内容になります。こうしてみると、意外にも生産技術の仕事内容は汎用性があるように思えます。マスターしてしまえば、勤めている会社がつぶれても仕事探しには困らないでしょう。

ところが、現実をみると生産技術エンジニア全員には当てはまらないようです。当時勤めていた会社、取引先、海外拠点、転職先などで、それなりに大勢のエンジニアの仕事ぶりを見てきましたが、一線で活躍している人は全体の2~3割でした。エンジニア職に限らず、どこの業界でも事情は同じかと思いますが。

徐々に生産技術の仕事で実績を積み上げていくと、それに付随していろいろな案件が回ってきます。上述の「6.その他」に記載したような項目です。仕事の幅を増やして自分の市場価値を高めるためにも、いろいろなことに挑戦してみることを勧めます。
これから生産技術職で生きていこうと考えている人は、あわせて外国語も身に付けておくべきでしょう。これから日本国内で製造業が伸びていくことはありませんので、海外に出て仕事をする機会はますます増えます。以前に比べれば、英語ができる人も増えています。英語ができることが、当たり前に近い状況になりつつあります。仮に今できなくても、数年後をターゲットに考えれば気楽に取り組めます。技術力があれば、英語スキルは低くても十分本職で活躍することができます。ただし、全く話せませんでは話になりません。

3.生産技術エンジニアのキャリアで大切なこと

早速結論ですが、生産技術エンジニアのキャリア形成で「PLCスキル」の習得を目指してください。
その理由を記載します。   ( ※参考:初心者向けPLC学習ページ

生産技術エンジニアとしてカバーしなければならない仕事領域

まず、生産技術エンジニアの仕事領域をざっくり定義すると、製造現場の工程設計、設備設計です。簡単にいえば、生産ラインのプロフェショナルです。現場で起こる生産設備による問題であれば、生産技術エンジニアが主導して解決するべきです。(問題の内容が製品設計要因、納入部品の品質要因、現場の作業要因であれば、それは別の部署の仕事です。)

現実に目を向けると、設備問題を解決できない、問題の原因調査すらできない、誰かが解決してくれるのを待つ、問題から目を背ける、といったエンジニアが結構います。別に彼らを責めるわけではないのですが、単純に解決するスキルがないこと、不足したスキルを学ぶ努力をしていないこと、この2つが原因です。
設備のプロであるべき人物でありながら、設備問題を解決できない。こんな惨めなことはありません。近くに設備屋がいれば助けてくれるかもしれませんが、エンジニアなら自分で解決できるようになりましょう。課題解決できなければ、それはただのサービスマンです。

繰り返しますが、 生産技術という仕事をする以上、設備の面倒を見る必要があります。これは、設備の操作ができるというレベルではなく、内部構造を詳しく理解しているというレベルが求められます。どういった制御機器が使用されていて、どういうプログラムで動作しているか詳細を理解しているということです。生産ラインを構成する設備のどれか1つでも故障してしまうと、生産ライン全体がストップしてしまいます。従って、担当するラインについては全工程にわたって理解しつつ、設備の内部構造についても理解しておく必要があります。

PLCスキルを推奨する理由

技術革新により制御機器の品質が高まり自動化が進むことで、生産設備も複雑になってきています。原因不明の理由で設備が動作しなくなった経験は、生産技術者なら誰でもあるはずです。そういった複雑な設備の不具合現象を合理的に調査するためには、内部の動作プログラムをモニタするしかありません。それぞれの信号の状態を監視しないとどこに原因があるか突き止めることができません。これがPLCスキルを推奨する理由です。


不測の設備問題は避けられない

そもそも設備の問題が起きなければ、デバッグなどする必要がありません。そう考える人はいるかもしれません。ところがこれは避けられません。その理由を説明します。

理由1)すべてが一品一様の専用設備

マシニングセンタや樹脂成型機と違い、汎用の組み立てラインで使用する設備はすべて特注品です。1台ずつ専用に設計された設備です。リピート設備であれば、高い完成度が期待できます。ところがほとんどの場合はそうではありません。毎回新規設計で製作する設備で、将来的なすべての問題を事前に潰し込むということは不可能です。

理由2)初期段階ですべての課題を想定しきれない

理由1)に追加して組み立て装置の場合、消費する部材費用の兼ね合いで動作確認できる量が限られています。新設備の場合、使用していくごとに細かい問題に気付きます。その都度修正が入ります。要するに、設計者は最初からすべての可能性を想定・検証できないわけです。当たり前ですが、新規設計の設備で完ぺきな精度でプログラムを仕上げることなど不可能です。ましてや動作確認できる期間や部材も限られています。

理由3)自動化により制御の複雑

以前に比べ設備は複雑化しています。プログラムのボリュームも増え、設計負荷は増えています。プログラマー自体も需要に対して追いつかない状況で、完ぺきな出来栄えを求めること自体が難しくなっています。小さい部分での安全動作や自動復帰動作をすべて想定するのは簡単ではありません。「だんまり」という設備動作が何らかの理由で停止してしまい、自動でその状態から抜け出せないような状況も何度も経験しました。
実際にソフト設計をやったことがある人ならわかると思います。自動化した設備ですべての状況をもれなくカバーすることはほぼ不可能です。問題が見つかるたびに潰していき、完成度を高めていくしかありません。

4.まとめ

上述した理由で量産設備の面倒を見る生産技術という仕事をする以上は、PLCスキルは欠かせないスキルになります。他の項目は仕事をやっていれば、ある程度自然に身に付きます。ハードルもそれほど高くありません。ところが、PLCについては自分で計画的に取り組まなければ、いつまでたっても身に付きません。
エンジニアとして活躍を希望する方は、キャリア形成の目標としてください。

現実的な話をすると生産技術者にもかかわらず設備に詳しくない人が大勢います。私は会社に入ってからすべて学びましたので、学生時代の専攻や経歴に関係なく誰でもできるようになります。
10年以上にわたり生産技術をやってきましたが、この分野についてはできない人がほとんどでした。もともと専攻していた人はともかく、私と同じような経歴で入社した人は初めてプログラムを扱うことになるのですが、入り口でつまずいてしまい、その後まったくそういった仕事ができない人が大勢いました。生産技術で設備の面倒を見る以上は、この分野を避けることはできませんし、PLCを理解してしまえば仕事の幅は広がり自分も楽になります。

エンジニアでありながら、設備の面倒が見えないとなると、問題が起きた時に対処することができず本人が困るうえに、エンジニアとしての存在感も価値もなくなってしまいます。
当時勤めていた社内で、あまりにもそういう人材が不足していたので、当時の責任者に設備メーカー出身のプログラマーを採用するように何度も打診したことがあります。いくつかの拠点で勤務しましたが、これは共通の課題でした。逆に言えば、この分野で腕を磨けば、それが強みになり、活躍できる幅が広がるということです。


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※参考 (初心者向けPLC学習ページ