200310 生産技術エンジニアが仕事の幅を広げる方法

今回は「生産技術エンジニアが仕事の幅を広げる方法」というテーマで話します。
昇進したい人や大きな仕事に取り組みたい人は参考にしてみてください。
ポイントは2つあります。最後に具体例を紹介しています。

ステップ1 自分の仕事を完璧にこなすこと(上司に口を挟ませないこと)

自立したエキスパートであれば、顧客を含め社内の人物を納得させる品質で仕事をこなすことができるはずです。ところが、現実はそうなっていない場合がほとんどです。
5~10年も生産技術をしているにもかかわらず、完全なエキスパートになりきれておらず、上司や同僚に仕事のダメ出しをされるような場合です。

その道のプロフェッショナルでありながら、自分の仕事の品質で他人に指摘をされるということは、完全なプロフェッショナルになり切れていないということです。

Aさんというエンジニアがいたとします。
上司がAさんの仕事を細かくチェックしないといけないということは、Aさんの仕事の品質は不十分ということです。
上司の手間が増えるうえに、Aさんは仕事のやり直しという無駄が発生します。
これでは、Aさんに大きな仕事を任そうという気にはなりません。


こんな事例は、経験が浅い若手社員に多いと思うかもしれませんが、そんなことはありません。若手でも精度の高い仕事をする人物はいます。一方で、何十年やっていても仕事の品質の低いエンジニアはいます。社歴や年数は関係ないということです。
※新入社員の方は、「ベテラン社員なら何でもできるだろう」という期待を持っているかもしれませんが、残念ながらそんなことはありません。

ステップ2 周りの状況を見ながら全体感を把握すること

自分の仕事を高い完成度で仕上げることができるようになると、時間的な余裕ができます。
単純な話ですが、やり直しの無駄がなくなることで仕事の生産性は上がります。不要な残業を減らすことができて、別の仕事にリソースを投入することができます。
また、仕事に余裕ができると周辺の状況に気配りできるようになります。

想像してみてください。やりかけの仕事が終わっていないにもかかわらず、電話やメールでしょうもない雑務が舞い込んできたり、打ち合わせに付き合っていたり、上司から別の仕事を依頼されるようなことになれば、キャパオーバーになってしまいます。そんな状況では周りのことを気にする余裕など持てるはずがありません。

周りの状況に気を配る余裕ができると、近い将来を予想できるようになります。この予想の精度が高くなれば、さらに自分の仕事がやりやすくなります。

例えば、製品開発部の設計の進捗状況や購買部の部品の納期が分かれば、生産技術エンジニアの設備検証やサンプル生産の日程を立てやすくなります。
また、購買部品の品質状況についても情報を持っていれば、予想されるリスクと対策についても準備しておくことができます。
品質保証部の受入検査の検査プログラムや計測器の準備状況が分かれば、納入部品の品質確認についても実施できるかどうか目処が立ちます。


このように、関係部署の状況が分かれば、自分の将来の仕事に対してあらかじめ対策を打っておくことができます
この「予想」による準備が、将来発生しうる仕事の完成度を高めることに貢献してくれます。
そういったまわりの状況を考慮して、もし日程的な余裕が少なく人員を増強しないといけないと予想できれば、事前に計画して対応できます。(何の対策もされなければ、悲惨な結果は簡単に予想できます)


具体的事例の紹介

私が海外工場で勤務していた時の話ですが、具体例を紹介します。
当時、10年近くエンジニアをやっていたおかげで、自社の製品仕様、設備仕様、生産工程、品質リスクなどについては深い理解を持っていました。新規ラインの導入も立て込んでいて仕事のボリュームはありましたが、想像以上の激務をこなすことができました。
自分の仕事範囲(設備案件、工程設計、ライン立ち上げ)では頭を悩ますことがありませんでした。(ステップ1)

ところが、組織体制が弱く何をやるにもうまくいかない会社でした。
頭を悩ます課題は次のようなものでした。

  • 製造現場の離職率が高く、新人作業員の習熟問題による稼働率悪化(製造部、人事部の問題)
  • 納入部品の品質不良による生産工程上での不良問題(購買部の問題)
  • 設備備品の不足による故障時の暫定的な復旧対応(保全部の問題)
  • 日本の取引先への未払い問題の対応(経理部の問題)
  • 本社からくる出張社員のサポート対応 (送迎や通訳、その他諸手続き全般。※本来は総務部の仕事)

組織上は私の仕事ではなく、私がマネージメント職だったわけでもないのですが、私の仕事をこなすためには彼らの仕事をうまく処理してもらう必要がありました。何か仕事の進捗が止まるたびに、その部署の担当者と話をして課題を解決していました。(ステップ2)

こういった苦労のおかげで、会社全体の仕事の流れを把握でき、マネージメントスキルも身に付いたと思います。また、多方面に顔を出していると自分の宣伝にもなります。そんなことを意図して仕事をしているわけではないのですが、結果的に仕事に対する努力を他人が評価してくれるようになります。こうなれば、仕事はさらにやりやすくなります。(ステップ3)



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