200327 生産技術者の業務負荷を減らす方法(来客案内の効率化)

今回は「生産技術者の業務負荷を減らす方法」というテーマで話をします。量産工場で生産技術エンジニアをしていると工場案内という業務が頻繁に訪れます。今回はその業務負荷を減らした工場の事例を紹介します。

製造業での来客対応業務とは

量産工場で生産技術をしていると、訪問者の案内という業務があります。 訪問者は様々で社内の役員や取引顧客や新規顧客です。社内の本社役員や部長職が工場を訪問する場合は、工場長や工場勤務の部長職が案内する場合がほとんどでしたが、一般社員が案内することもあります。取引顧客の場合は見学の場合もあれば、工場監査の場合もあります。新規顧客の場合は、新しいビジネスのための視察などの目的で訪問です。

日本の製造業は海外移管していて、取引顧客も日本人でないことの方が多いので、工場案内といっても海外工場での英語による案内になります。工場全体を案内する場合は、倉庫、生産ライン、受入検査室、開発現場などです。訪問者によっては生産ラインだけの場合もあります。
頻度が少なければ問題にならないのですが、顧客訪問が重なるとその週は仕事にならないほど、工数を取られます。

来客時の生産技術者の役割

生産技術者の役割は、生産ラインの案内です。
生産ラインを案内しながら、製品構造の説明、生産工程の説明、品質管理方法の説明をします。必要に応じて製品特性、生産能力、設備仕様などの話にもなります。
案内業務に慣れた人物で生産ラインを熟知している人物であれば、何も準備をする必要はありません。そうでない人物は話す内容や細かい説明の準備が必要になります。さらに英語の対応もしなくてはなりません。

たまたま、私は英語スキルがあって生産ラインの技術的な理解も深かったので、海外出張時や海外駐在時によくこの案内役をする機会がありました。たまに訪問される分には問題ないのですが、訪問が重なると業務工数がとられます。会議室でのあいさつに始まり、現場の案内をしていると、半日という単位で時間を取られます。

仕事に余裕があればよいのですが、当時は新規ラインの立ち上げラッシュで大忙しでした。工場勤務の方ならわかると思いますが、毎日の生産維持だけでも大変な業務です。年間通して暇な時期などそれほどないのが製造業の現状です。

現場案内を業務効率化した事例

そんな背景もあって、顧客訪問対応業務はなんとかならないものかと考えていた時期がありました。
前置きが長くなりましたが、ある工場で素晴らしい事例があったので、今回はその工場の事例を紹介します。

その工場は、英語のできる事務員を人選して生産ライン案内の原稿を準備していたのです。まったく技術的な要素を持たない社員のなかから、話の上手な女性を人選したのだと思います。数名の候補を常に確保しておき、いつでもだれでも対応できるようでした。 実際の案内では原稿など使用しませんが、1時間程度の現場案内を何度も練習したのでしょう。ほぼ丸暗記で記憶して、上手に英語で案内しているのです。

細かい質問が出て対応できない場合は、後ろで控えている生産技術エンジニアが対応します。メインで案内するのと後ろで待機しているのでは、生産技術エンジニアの精神的な負荷は大きく違います。案内中に別の仕事のことを考えることもできるし、途中で一時的にその場を抜けることもできます。

来客案内業務効率化のねらい

「専門のコンパニオンを準備してきたんですか」などと問い合わせる訪問者もいたそうです。
もちろん、案内しているのは自社の社員です。 このシステムを導入した人のセンスは素晴らしいですね。

訪問者の印象としては、女性に案内されるほうがよいわけです。裏方にいるエンジニアの男性が案内するよりも事務職の女性の方が良いのです。そもそも、訪問者はそんな案内など期待していないので、ポジティブな驚きがあります。また、平然と案内する姿に2つ目の驚きを覚えます。
ほとんどの場合、先述したようにエンジニアが案内するか年配管理職の人物が案内です。訪問者もそういった案内に慣れています。

社内的には、多忙なエンジニアの業務負荷を減らすというメリットがあります。別の生産ラインで問題が起きた場合に、現場案内から抜けて対応することもできます。

最後に事務員のモチベーションです。日本では自発的に案内役に立候補するような人は少ないかもしれませんが、海外では希望する人は大勢います。来客対応などは、自分が目立つことができる花形の役割です。事務仕事に比べて、そういった仕事を望む社員はいます。そして、選ばれるということが大きなモチベーションになっています。


以上、来客時の生産ラインの案内業務を簡素化した事例の紹介でした。



※関連記事) 生産技術エンジニアが目指す21世紀の働き方
※関連記事) 生産技術者が設備デバッグできないと感じたときの最終手段

コメント・質問を投稿