200403 製造業界での各部署の業務内容概略紹介(ネガティブな部分中心)
今回は「製造業界での各部署の業務内容概略紹介」というテーマで話をします。製造業への就職を検討している人や既に製造業界で勤務していて部署移動などを検討している人向けに、生産技術経験者の立場から見た各部署の業務内容の概略を紹介します。
キラキラした部分は世間で宣伝されているので、今回はネガティブな部分を中心に紹介したいと思います。
※可能な限り客観的な意見を述べるつもりですが、生産技術者から見た視点ということで参考としてください。
【目次】
- 製造業での仕事の全体的な流れ
- ステージ1 新製品の宣伝活動
- ステージ2 プロジェクトの正式受注
- ステージ3 量産準備
- ステージ4 量産開始
- 各部署の仕事紹介(製品開発部)
- 各部署の仕事紹介(購買部)
- 各部署の仕事紹介(生産技術部)
- 各部署の仕事紹介(製品製造部)
- 各部署の仕事紹介(品質保証部)
製造業での仕事の全体的な流れ
各部署の仕事内容の紹介の前に、製造業(BtoB)での全体的な仕事の流れについて紹介します。以下のように4つのステージに分けて各部署のかかわりがどういったものになるかを表にまとめています。
ステージ1 新製品の宣伝活動
この段階ではサンプル品を作成して顧客に売り込んだり、顧客の要望をヒアリングして顧客が希望する仕様の製品サンプルを試作する段階です。製品価格や製品特性などで顧客が満足すれば、ステージ2に進みます。ここでの活動はおもに営業部と製品開発部の活動になります。
ステージ2 プロジェクトの正式受注
つづいて顧客から正式にプロジェクトを受注すると、量産に向けての準備が始まります。製品の詳細設計や耐久性試験などの設計検証段階です。ステージ1よりもサンプル数を増やして、量産性や製品特性の確認を行います。ここでも製品開発部が活動をリードします。
ステージ3 量産準備
製品設計の検証作業が終わり、製品設計がFixすると量産準備の活動が始まります。製品開発部の役割はいったん終了して、生産技術部や購買部の活動がメインになります。生産技術部は製品図面をもとに量産設備の仕様を決めて設備の導入を始めます。購買部は製品の構成部品の仕入れ先を決め、価格や梱包仕様を決めます。
生産技術部は量産ラインの導入と工程検証作業をもって仕事が完了になります。購買部(品質保証部)はサプライヤへの量産承認(PSW)を行います。
ステージ4 量産開始
ステージ3のプロセスが終了した後は、製造部にバトンが渡されます。図面や製造文書に指示されたルールに従って生産活動を行います。社内の問題発生時には製品開発部や生産技術部にサポートをもらい業務を進めます。品質責任や顧客クレームの対応は品質保証部になります。
簡単ですが、以上が製造業界での仕事の流れになります。
以上を踏まえて各部署の仕事内容のネガティブな部分を紹介します。
各部署の仕事紹介(製品開発部)
製品開発部はどこの会社でも人気の部署です。自分のやった仕事が形になって世の中に出ていくという実感ができ、高い専門性も身に付くことから、キャリア形成ややりがいといった点では魅力的です。
製品開発部のネガティブ要素
では実際どうかというと、これは仕事内容や組織体制によってバラバラです。
モノづくりを経験できるのはステージ1、2の段階くらいです。設計といってもパソコン上で絵を描くだけの作業や、高額なシュミレーションソフトを使ってコンピュータに解析作業をさせるといったデスクワークが中心です。メカ設計であれば、ひたすら図面の作図や更新作業に追われます。
電気特性や最終製品特性などの専門的な領域になると、3年以上は開発部で経験を積まないと、専門家と話ができません。仕事内容によっては開発部所属でも製品特性について全く理解できていない人もいます。
会社によっては量産ラインと開発センターが別拠点にあるため、開発部に所属すると量産現場を知らないで製品図面を描くという変な仕事のやり方になります。
量産製品の図面については、現場から図面修正依頼が来るので、その修正対応が主な仕事になります。
ということで、世間では華やかな部分が強調されがちですが、やってみて初めて気づくネガティブな要素があることも事実です。
各部署の仕事紹介(購買部)
購買部の仕事はサプライヤの選定や価格交渉がメイン業務です。取引先への出張にしても、顧客という立場になるため、出張と聞いて悪いイメージは少ないと思います。製品コストのうち材料費が占める割合は高く、購買部の努力により会社の利益に大きく貢献できるという点でやりがいの大きい仕事になります。昨今ではグローバル化により海外サプライヤとの取引も増えています。気軽に海外出張できるのも購買部の特権です。
購買部のネガティブ要素
では、実際はどんな仕事かというと、こちらも組織体制によりバラバラです。
ネガティブな部分を紹介すると、サプライヤから仕入れた量産部品に問題があって自社の生産ラインが止まるので、代替品を至急納入してくれと製造部から依頼されます。またシステム上は部材在庫があるにもかかわらず、現物在庫と数が合わず、急ぎで手配依頼をかけてくる倉庫担当者もいます。
また、価格交渉力があるといってもこれは部品設計とトレードオフです。製品開発部から出てくる図面公差や特性などの仕様が厳しすぎると、価格は下がりません。
物を購入する側の立場であっても、場合によってはサプライヤの方が立場が強いこともあります。そのサプライヤに頼らざるを得ない状況になると、購買部といえども強気な交渉などできません。
為替や金属市況といった外部要因も価格変動に影響するため、予期せぬ価格アップもありえます。社内上層部から利益改善のための購入価格見直しの要請を受けたり、営業部(顧客)からは製品売価見直し要求に応じるために材料費の削減要求が来ます。
各部署の仕事紹介(生産技術部)
(他記事に記載しているので別記事参照ください)
生産技術の仕事内容
生産技術職がツライと感じる事例
各部署の仕事紹介(製品製造部)
つづいて製造部です。製造業の中で一番売り上げに貢献している部門です。
単純作業と思われがちですが、決められたルール通りに仕事をこなし、大勢の作業員をマネージメントしなくてはなりません。製品や設備に対しても理解しておく必要があり、意外と大変な部門です。
現場でエキスパートになると、仕事をしていないエンジニア職の人物よりもよっぽど製品特性や設備操作に詳しくなることができます。日本では国内に現場を持たないメーカーが多いので、製造関連の人材は本社や生産技術部には少ない印象です。
製品製造部のネガティブ要素
それでは、ここからネガティブな要素になります。
生産現場は毎日問題だらけです。設備が故障したり、納入部品に異常があったり、工程内で不具合が見つかったりします。製品開発部や生産技術部に問題対応を依頼しても、彼らにとっては対岸の火事です。
親切に対応してくれない人が多いなかで、生産に追われるという貧乏くじ的な部門です。品質問題を起こすと追加で検査を要求され、仕事が増えて生産性は落ちます。周りの部署は何でもかんでも追加検査をするという考えを持っているので、現場の仕事は増える一方です。
製品開発部の設計した「組みにくい構造の製品」を無理やり生産させられ、生産技術部の導入した「できの悪い設備」を使用して、決められたルールの中で仕事をこなさなくてはなりません。ステージ1~4の流れを見ればわかりますが、製品開発部-->生産技術部-->製造部と下流に行けば行くほど、上流の失敗の負荷が重くなります。こうならないように、上流から仕事の品質を高いレベルで維持しなくてはなりません。
各部署の仕事紹介(品質保証部)
最後は品質保証部です。この部署は社内の番人です。
製品開発部の設計変更や生産技術部の工程変更など、社内の変更手続きについて目を光らせています。自分が何かをすることはないのですが、他部署に対しては大きな声で文句を言ってきます。
品質保証部のネガティブ要素
それではネガティブな部分です。
正直なところ、この部署は他部署の仕事の後始末をするというイメージしかありません。どこの会社の品質保証部であっても、顧客クレームの処理がメイン業務になっています。品質問題が起きた時の説明や再発防止の対策を顧客に説明します。(とはいっても、製品開発部や生産技術部や製造部に対策を丸投げして、その取りまとめをするだけです。)
それ以外の仕事は受入検査や出荷検査業務です。これらも製造部の仕事に比べれば、業務負荷は軽いものです。受入検査や出荷検査は抜き取りで部分的な項目の検査をするだけです。受入検査OKの部材が、生産ラインで異常が見つかり選別が必要になったとしても、選別するのはなぜか製造部です。工数の問題もありますが、どうもスッキリしません。
本当に品質保証をしようと思えば、ステージ1~3の初期の時点でプロジェクトに関わり、上流段階で品質管理をするべきです。残念ながら、品質保証部の仕事の大半はステージ4です。個人的には最も魅力を感じない部署です。
以上、製造業の各部署のネガティブな部分を紹介しました。
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