200404 新規生産ラインで行うRun @ Rate 生産の概略紹介と注意点

今回は「新規生産ラインで行うRun @ Rate 生産の概略紹介と注意点」というテーマで話をします。Run @ Rateとは、生産技術者にとっては業務上の大きなイベントになります。過去たくさんの新規ラインを導入してきた生産技術者の立場から、Run @ Rateの概略と注意点を紹介します。

【目次】

  1. 新規生産ラインのRun @ Rate 生産とは
  2. Run @ Rate 生産実施前の事前準備事項
  3. Run @ Rate 生産でのよくある失敗事例
    • 部材不足や部材費用をケチる
    • 連続生産の練習不足
    • 突然の設備トラブル対応できない

新規生産ラインのRun @ Rate 生産とは

Run @ Rate 生産とは顧客が仕入先の生産工程を承認するため1案件で、決められた時間内に連続生産して期待したアウトプットが出せているかどうかを判断するトライアル生産のことです。

例えば、サイクルタイム20s、稼働率85%、稼働時間8時間の条件であれば、生産時間内での期待生産量は1224台です。ところが、新規生産ラインの場合、この数字には到達できない場合がほとんどです。理由は、設備停止などの可動ロスにより、想定した稼働率を下回るからです。

Run @ Rate 生産を実施することで、実力での生産能力を判断することができます。この確認をしておかないと、量産開始後に注文数を大きく下回る納品しかできなかったり、納期問題を引き起こすことになります。

Run @ Rate 生産実施前の事前準備事項

つづいて、顧客とのRun @ Rate 生産実施前に完了しておかなくてはならないことを紹介します。
主に次の項目です。

  • 工程検証(工程能力評価、検査機の相関確認や繰り返し精度確認)
  • 製造帳票準備
  • 作業教育(教育記録含む)
  • マネージメントリリース

基本的には、量産と同じレベルでの生産になるため、必要な工程検証や作業者教育を済ませておきます。また、社内のマネージメントリリースも顧客監査前に済ませておきます。

生産技術エンジニアにとっては大きなイベントとなり、このタイミングでの業務量はピークを超えることになります。設備デバッグに追われ、帳票準備に追われ、マネージメントリリース用の書類作成に追われ、顧客訪問準備に追われ、といった状態になります。

Run @ Rate 生産でのよくある失敗事例

いくつか過去に見てきた失敗事例を紹介します。
せめて80点くらいの点は取りたいものですが、新規生産ラインの場合は50点以下の結果がほとんどです。

部材不足や部材費用をケチる

Run @ Rate 生産を何時間するかにもよりますが、過去複数社との経験では1シフト分が一般的でした。このRun @ Rate 生産品は顧客のDサンプルやPVサンプルで使用される場合が多く、数百台の単位で購入してもらえます。

練習部材費用だけでもかなりの金額になるため、部材費用を気にする人がいますが、部材の費用も設備投資の一部と考えることです。Run @ Rate 生産で失敗すると日程的なロスや顧客の信頼を失います。さらに量産初期で可動ロスが増えて結果的には、大きな損失を生むことになります。
数百万円~千万円程度の規模にはなりますが、部材費用は必要コストと考えて処理するべきです。

連続生産の練習不足

普段できていないことは本番では絶対できません。
8時間の連続生産を本番でやろうとするならば、少なくとも同様の練習を何度かしておいて、数回に1回は成功できるレベルでないと、本番はうまくいきません。
1~2時間程度の練習生産を数回やっても、あまり意味がありません。意外と簡単なことに思えますが、練習しないで本番うまくいくかもしれないという甘い期待をする人を大勢みてきました。

突然の設備トラブル対応できない

連続生産すると設備の具合の悪いところが見えてきます。具合の悪い部分を見つけるための練習で起こる分にはよいのですが、本番に限って普段起きない問題が起きるものです。設備を熟知したエンジニアであれば迅速に対応することができます。
設備によっては、生産技術者がまだ対応できない部分やデバッグに時間がかかることもあります。初めての問題は原因調査から入るため、復旧に数時間かかることもあります。こんな問題が本番で起きると、大きなインパクトが出てしまいます。

担当者によっては、そういった問題を予防するため、設備製作会社の担当者を顧客監査当時に現場でスタンバイさせていたこともありました。


以上、新規生産ラインでのRun @ Rate 生産の概略と注意事項を紹介しました。

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