200412 生産技術エンジニアの海外駐在生活 ~その3~
※このテーマで数回に分けて駐在員時代の生活について紹介します。
当時、私が勤めていたモーレツ会社を簡単に紹介すると「ケチなブラック企業」でした。私はアメリカ国境沿いのメキシコ工場で勤務していました。参考になるかわかりませんが、生産技術エンジニアが海外駐在でどういう生活をしていたのかイメージできればと考えています。
何も効果がない打ち合わせ
前回の話に続いて、今回も駐在初期の話です。
メキシコでの新プロジェクトの立ち上げ対応をしていた頃になりますが、新しい生産ラインを設置して定期的なサンプル生産の対応をしながら量産の準備を進めていました。量産開始は数ヶ月後に控えていました。
その前に顧客監査があって、整然と量産準備ができていることを証明する必要があったのです。
顧客も下請け企業を放置しておくようなことはしません。社内のプロジェクトマネージャーをやっていた人物(Hさんとします)
と毎週のように打ち合わせを行い、進捗状況を確認していました。プロジェクトマネージャーといっても、つい最近入社したばかりの30代の頼りない人物でした。
最初の頃は周りの状況もわからないので見放すわけにもいかず、対応に配慮していました。私は生産技術者で生産ラインの主担当でしたので、生産ラインの準備状況については一番詳しい立場にありました。私の情報が最も信頼性が高く、彼が仕事をしやすいように情報を提供していました。
代わりにHさんを使って、他部署や関係者の仕事の不備を動かそうとしていました。
エサを与える代わりに全体が機能するようにHさんを働かせようとしたのです。製造帳票の準備、備品関係の手配、
受入検査のドキュメント、作業員の教育、品質に関する教育、その他インフラの準備などです。
やることは山のようにありました。工程不良率や設備故障の対応に毎日追われながら、監査に向けて他のことも対応する必要があったのです。
Hさんは頻繁に社内メンバーを集めて打ち合わせをしていました。朝礼は毎日のように30分~1時間も延々と続きました。
最初の頃は私も参加していたのですが、途中で参加をやめました。
打ち合わせで決めた宿題を真面目にやる人物がほとんどいなかったのです。1日経っても終わらず、3日経っても終わらず、、、、たいして難易度の高くない案件を処理するのにどれだけ時間をかけるのかと思えるような状況でした。
打ち合わせをする意味がないのです。
ただ集まって時間をつぶすだけの打ち合わせであれば、参加するだけ時間の無駄です。また困ったことに、彼らは
忙しそうな素振りを見せないのです。私が毎日の夜9時を過ぎて帰宅しているのに対し、彼らは毎日夕方5時になると帰宅します。翌朝の朝礼で問い詰められることを分かっていながら、できていなくても気にしないという考えがあります。
自分がまともな人間であるというつもりは全くありませんが、彼らと私は生きる世界が違うのだなと割り切るようになり
ました。まるで動物に芸を教え込ませることにでも挑戦しているような気分でした。
社内の仕事を増やすプロジェクトマネージャー
そんなこんなで、毎日イライラしながら仕事をしていたのを覚えています。
そのあと、Hさんが期待外れであるということが徐々に明確になってきたので、彼に情報を提供するのもやめました。
なんというか、役に立たない人物に有益な情報を提供したところで、あまり意味がないというか、相手をすること自
体が不毛なことに思えたのです。
最後の決め手になったのは、社内のアクションリストを顧客と共有していたことでした。
そのアクションリストとは社内の宿題と担当者などを細かくまとめたものです。先述の通り、打ち合わせや朝礼で
何度フォローしても処理されない宿題です。
頭が悪いのではないか、それが私の率直な感想でした。社内のアクションリストを顧客と共有すると、進捗報告と
遅れの理由を説明しなくてはなりません。うまくいっていない社内の仕事がさらにやりにくくなります。
賢い人物ならば、社内のアクションリストと顧客向けのアクションリストを分けます。さらにいえば、
活動の進捗管理や顧客への報告はプロジェクトマネージャーであるHさんの責任です。
ところが、本人は全くそんな意識はなく、顧客側の立場で社内の人間の尻を叩いていればいいとしか考えていないのです。
Hさんに情報を出すだけ、顧客に情報が流れ、社内の仕事が増えるのです。
(つづく)