200424 過剰な品質検査は機能しない。大切なのは〇〇です。
今回は「過剰な品質検査は機能しない」というテーマで話をします。生産技術をしていると量産製品での品質は気になります。FMEA上での不具合モードを事前検討して、検査工程を量産ラインのどこかに導入するはずです。今回はそういった検査工程に関する考え方を紹介します。
【目次】
- 過剰な品質検査が機能しない事例の紹介
- 過剰な品質検査が機能しない理由
- 本来目指すべき品質保証方法・品質管理状態
- 製品設計での品質保証
- 工程設計での品質保証
- 工程能力で品質保証
過剰な品質検査が機能しない事例の紹介
以前ある生産ラインで作業ミスによる顧客不良が多発しました。
- 製品を固定しているネジが緩んでいる
- 本来製品に取り付いて出荷されるカバーが不足している
- 部品の組付け寸法が規格外になっている
・・・こんな具合です。
これらは本来の量産工程であれば検出されるNG項目です。そもそも、決められたルール通りに作業していれば発生しない異常です。
ところが、すでに顧客に流出していたために何らかの暫定対策をしなくてはなりません。
最初のうちはもう1名の検査員を導入してダブルチェックをしていました。出荷する製品の出荷箱には「〇〇品質確認済みロット」などと記載していたのです。
最初は1項目だけだったのですが、徐々にほかの品質問題が増えたせいで、ダブルチェックする検査内容や製品出荷箱に記載する文章が増えていきました。製品出荷箱には1枚紙が張り付けてあって、
「〇〇品質確認済みロット」
「**品質確認済みロット」
「△△品質確認済みロット」
「◇◇品質確認済みロット」
・・・・のように、たくさんの品質問題を検査したロットである旨を記載しているのです。
ここまで読んだ人は不思議に思うはずです。
こんなに検査項目が増えると、それぞれの検査の重要度が下がるのです。特に人が確認する検査項目においては、検査項目が増えるほど検査員の負荷になり検査ミスを起こしやすくなります。
過剰な品質検査が機能しない理由
品質問題が発生した時に暫定的に導入する追加検査とは、重要度が高いから機能するのです。この重要度が下がってしまうと、追加検査として機能しなくなります。
そもそも、本来上述した品質問題が流出した真の原因は製造現場のマネージメントだったのです。異常発生時の対処不良や決められたルール通りに作業ができないことが原因だったのです。そんな現場のメンバーに追加検査をいくつも要求したところで、その信頼性には期待できません。つまり追加検査自体の数が増えると機能しなくなるのです。
本来目指すべき品質保証方法・品質管理状態
ここで1つの考え方を紹介します。
本来、品質とはしくみで保証するものです。検査ではありません。
この仕組みとは製造現場のマネージメントや作業員教育でもありません。
ここで記載した仕組みとは、製品設計、工程設計、工程能力などです。
製品設計での品質保証
製品設計での品質保証とは、生産工程内での微調整を不要とする設計です。部品を組み付ければ良品ができる、そういった製品設計です。現場で細かい調整をしながらでないと組めない製品であれば、組立がうまくいかなかったり、最終特性が規格から外れたりして不良が発生します。
工程設計での品質保証
工程設計での品質保証とは、工程スキップの予防や異常品を自動で検出できるような工程です。例えば、前後工程で製品外観が類似している場合であれば、その製品が工程スキップしている可能性もあります。装置を自動連結してそういった工程スキップリスクを排除したり、後工程で工程スキップを検出できる仕組みを導入すれば、そういったリスクを最初からなくすことができます。
工程能力で品質保証
工程能力での品質保証とは、その工程のばらつきが非常に小さく規格幅に対して十分な余裕があるため、通常の生産においては不良が発生しない状態のことです。つまり、組めば良品という生産工程です。
こうなると検査する必要すらなくなります。検査工程で品質保証するのではなく、工程能力で品質保証するのです。
話を最初に戻します。
製品設計や工程設計をするときに、何でもかんでも検査をすればよいという品質保証の考えがどれほど無駄なことをしているか認識できたのではないでしょうか。
製品設計や工程設計などの上流工程ほど、この考えが大切になってきます。製造現場でできることは、力技しかありません。そうならないで済むように仕事全体を設計しなくてはなりません。
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