200705 見せかけでは実力不足を隠せない

今回は「見せかけでは実力不足を隠せない」というテーマで話をします。会社員をしていると杜撰な内部事情が見えます。入社したての若者はそんな現実に失望してしまうのかもしれません。今回はそういった事例をいくつか取り上げて話をします。

一般的な組織運営について

本題に入る前に私の持論を話しておきます。
一般的に、公共機関(大学や役所)よりも民間企業のほうが管理状態は優れています。統計データがあるわけではありませんが、経験的にも構造的にも当てはまると考えています。

例えば、大学の研究室や役所は職場の整理ができていなかったり、変な仕組みが残っていたりするものです。ちょっとしたITシステムにしても、民間企業のシステムに比べて公共機関のシステムは使い勝手が悪い印象です。
この理由は厳しい生存環境にさらされていないこと、外部の監視がないことが原因だと考えています。公共団体が税金で運営されているのに対し、民間企業は厳しい競争環境にさらされています。内部の無駄を改善し、健全な利益を上げないと経営が成り立たないからです。


そんな民間企業でも、内部から見て杜撰だと思う場面がたくさんあります。その時の最善策を採用しているのですが、表面的な装飾だけに終わる場合が多いように感じます。今回はそんな事例を紹介します。

杜撰な事例1 量産設備

私は生産技術職をしていて、たくさんの設備を導入してきました。
取引先を訪問して発注した設備の検証作業を行うのですが、中には設備立ち合い時に内部のプログラムをインチキしている取引先もありました。内部の判定を甘くして、見た目には正常に動作しているように見せるというやり方です。
正しく日程通りに仕上げる取引先、未完成の部分を明確にして顧客と共有する取引先、インチキをして何とかごまかそうとする取引先、など各社対応は様々です。

一方で自社のエンジニアに問題がある場合もあります。「なぜこんな設備を納入した?」というような場合もあります。明らかに問題がある設備を納入してもいいことなどありません。ところが、そういう判断をしているエンジニアも社内にいました。

設備を使い始めれば、隠れた問題は明らかになります。つまり、具合の悪い部分はいずれ自明になるのです。表面的な取り繕いなど全く何の意味もないのです

杜撰な事例2 来客対応のための準備1

2つ目は役員の訪問です。
本社役員が国内・海外拠点を訪問するときは案内ルートを決めて、現場の掃除、プレゼン準備、各所にマイクやディスプレーを配置して、発表資料を準備します。

たしかに、成果や進捗を報告することは立派なことです。訪問者が受ける印象はポジティブなものになります。

ところが、内部事情を知っている人物からすれば、現状の状態は明らかです。訪問準備をしなくてはならない状況自体が間違いなのです。普段の現場の状態や業務状況に自信があれば、わざわざ訪問準備をする必要などないはずです。

プロが見れば、現場の良し悪しはすぐにわかります。経営状況についても同じです。見た目の良い発表資料では経営状況をごまかすことはできないのです。 言い換えれば、抜き打ちで訪問を受けても対応できるくらいの状態をいつも維持できるように心がけるべきなのです。

杜撰な事例3 来客対応のための準備2

3つ目は取引先の話になります。
製造業界で仕事をしていると生産維持や現場改善の難しさを改めて感じます。計画通りに生産を行うことが簡単ではないですし、不良廃却1%以下を達成することも簡単ではありません。(※製品や業界によります。)

ある時、同じような製品を取り扱っている新規取引先を見学しました。その工場案内を受けたのですが、「不良ゼロの達成日の連続記録をつけています」という立派な発表をするのです。


不良廃却1%以下の達成もできていない当時の職場と比較して、「なんて優れた会社なんだ」と感心しました。 ところが、その後しばらく取引していると徐々に内部事情も分かってきます。「不良ゼロの連続記録」などと強調していたのは素材加工の部分的な工程だけで、組立工程は不良の山でした。優れた一部分だけを強調しても、他の部分をみればそれが誇張表現だということがすぐに明らかになります。

杜撰な事例4 会社案内

4つ目は会社案内になります。
これは製造業界での顧客監査の出来事でした。初めての訪問者(監査員)に対して会社案内をします。当時勤めていた会社の会社規模や周辺環境、会社レイアウトや製品機種、工場内の機能や体制などです。

大量のスライドで立派な説明をした後、現場に案内して量産ラインの監査を受けます。いくらプレゼンが立派でも量産ラインが低品質であれば、装飾だらけのプレゼンなど全く何の役にも立ちません。むしろ逆効果です。

プロが見れば実力がすぐに明らかになります。 ただの工場見学程度であればごまかせるかもしれませんが、監査となるとそうはいきません。形式だけの監査では意味がないですし、いい加減な監査をするような監査員であれば適任者としての資格を失うだけです。監査とは実力が試されるのです。

まとめ

最後にまとめます。
仕事は時間と品質のトレードオフです。制約条件がある中で最高のパフォーマンスを出すことが理想です。仮に結果が伴っていなくても、見た目を取り繕うことはできるかもしれません。 ところが、そんな見た目だけの取り繕いでは実力不足を隠すことはできません。正しく現状を把握して、見せかけを目指すのではなく真の実力を高める活動に注力すべきなのです



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