201114 中国と日本における学生の競争環境の違いと認識すべき事実

今回は「中国と日本における学生の競争環境の違いと認識すべき事実」というテーマで話をしたいと思います。海外での事例を取り上げることで、日本の状況を客観的に見てみたいと思います。今回比較対象に上げるのは中国です。

中国における教育産業の発達とその恩恵

中国の大学受験生は毎年1000万人を超え、彼らにとって大学受験は人生をかけた一大イベントです。
中国国内の学生が各大学に応募してきます。一方で大学の規模はどこの国でも同じで、人口が多いから大学のサイズが大きいなどということはなく、毎年数百名という単位でしか希望大学の学部に入学することができません。したがって北京大学や清華大学などの有名大学の競争は熾烈なものになります。

一方で日本の環境はどうかというと、人口減少により大学入学試験のハードルは下がる傾向です。単純な比較はできませんが、人口比率でいえば中国の大学入学試験は日本の大学入学試験の10倍の競争率になります。どれほど厳しい競争かイメージできるかと思います。

そういった競争環境の背景から、親たちは子供の教育環境を気にします。レベルの高い中学、高校、塾通いなどです。もちろん教育産業についても同様に発展していきます。いわゆるEd-techです。

例えば、動画系SNSでは教育系のコンテンツ配信が著しく伸びています。プログラミングやエクセルの使い方、日常的なものでいえば料理、趣味、言語についても学ぶことができるます。「宿題の解き方」をサポートしてくれるサービスも存在します。

競争環境が需要を生み、需要が新しい産業を生み出します。そして新しくできたサービスを利用して学生の教育環境が改善し、学習意欲の向上や本人のレベルアップにつながっています。社会全体がイノベーションを促すサイクルを生み出しています。

日本の若者を取り巻く残念な環境

一方で日本の教育はどうかというと、少子高齢化です。日本全体として若者を大切にしていません。(そんなつもりはないかもしれませんが、結果的にはそうなっています)
古い慣習を維持してきたせいで古株社員が正社員として会社に居座るおかげで、若い人たちの雇用環境は悪化しています。そんな状況で結婚・子育てなどできるはずがありません。なるべきしてなった結果が今の日本です。

学生の数も減少傾向で地方大学・不人気大学は学生の募集にも苦労していて、存続自体が危ない大学も存在します。一方、学生にとっては有名大学でも倍率が低く、入学難度は下がってきています。結果的に学生の学力は低下傾向になります。

それでは政府が教育に力を入れているかというと、そうも思えません。いまだに古い教育方式を採用しています。こんなことを記載すると怒られるかもしれませんが、文部科学省は教職員の雇用や学校の維持することばかりを優先していて、教育の質の面では全く何も考えていないように見えます。

オンライン授業についても諸外国では当たり前に普及していますが、日本ではかろうじてコロナ化で、しぶしぶ始まったレベルです。「オンラインにするとパソコンを持っていない家庭やネットワーク環境を持たない家庭が不利になる」などという、変な主張をする人もいます。

日本では教職自体に人気があるわけでもありませんし、教員のレベルもたいして高くはありません。中学や高校の教師は授業以外に部活動の対応や、授業時間以外の諸雑務、保護者の対応など地味に大変な仕事に思えます。その結果、優秀な人は教師になろうとは思いません。したがって教員のレベルも下がる傾向になります。

最近検討されている「プログラミング教育」についても私は否定的です。プログラミングにおいてド素人の教員が、プログラミングを教えることなど不可能です。英語の学習を6年間(中学・高校)継続してもほとんどの日本人が英語を話せないように、プログラミング学習を基礎教育としたところで英語の二の舞です。



若者はその国の将来像を象徴します。若者の教育環境を大切にしない国は衰退していくばかりです。すでに日本は手遅れに近い状態になっていると考えていますが、問題はさらに深刻度を増していくでしょう。

国家として教育に注力するかどうかはともかく、中国では上述したような競争環境のおかげで学生のレベルは高まる方向に作用します。また、大きな教育需要があるおかげで教育産業への投資も増え、結果的に産業自体が発達し、教育環境が大きく改善しています。

日本と中国でどちらが恵まれているかについては議論の余地がありますが、「見えない格差」が存在していることは事実として認識しておくべきと考えています。社会人になって会社勤めを始めたときに相手にする中国企業の社員の背景は上述した通りなのです。



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