210313 生産性を上げるための方策

日本の生産性は非常に低いと言われています。組織でも個人としてもそう感じます。古いアナログのやり方を未だに引きずっている組織はたくさんあります。ハンコ文化、FAX、打ち合わせ、朝礼、その他事務処理などです。
生産性を大きく向上するためには、どこかでイノベーションを導入してやり方を大きく見直す必要があります。今回はそんな話をします。

既存の延長では乗り越えられない壁が存在する

私は設備を購入することが頻繁にあったのですが、 設備の価格を下げようとすると、アイデアをもって取引先と交渉する必要があります。例えば下記です。

・設計費を減らす。
・不要な仕様を削減する
・設備の構成部品の単価を減らす。
・大量発注により設備単価を下げる。(規模の効果)
・輸送費用を下げる。
・関税を減らす(海外から購入する場合)
・為替の影響を限りなく少なくする。

単純な価格交渉だけでは限界があるため、こんな戦略で設備投資を削減していました。 それでも、国によっては人件費の上昇や物価の上昇があり、設備費用も徐々に上昇傾向でした。効果的に価格を下げようとすると、設備制作に関わっている人の工数を減らすしかありませんでした。(これがそう簡単ではないのですが・・・)


生産性改善の事例1)データまとめ自動化の話

イノベーションによる改善事例で1つ紹介したいのが、データまとめの改善です。
私はエンジニアをしていたおかげで、データまとめをする機会が日常的にありました。工程能力といって、生産工程の安定性を評価したり、不良品の分析をするために特性データを集計したりしていました。 各工程のデータがサーバー上に自動保存されるだけでも、大変ありがたい仕組みです。それでも、そのデータを整理するという作業について大変な工数がかかっていました。不良調査などで必要なデータを整理するだけで毎回30分~1時間の作業が必要でした。

何度も何度もこの作業を繰り返すうちに、「将来的にも同じことをやっているのでは生産性は全く上がらない」と思い、業務負荷を減らす目的で自動化を行いました。Excel マクロを作成して自動でデータ整理できるようにしたのです。このマクロのおかげで、 30分~1時間かかっていた作業が10秒ほどに短縮しました。

小さなイノベーションですが、従来の延長では決して達成できなかった改善です。こういった具合に、どこかで全く新しい手法を導入しないと大きな改善効果は生まれません。大きな生産性改善を目標にするなら、イノベーションによるブレークスルーが必要になるのです。

生産性改善の事例2)音声入力の話

もう1つ事例を紹介します。 これまでキーボードで文字入力していた作業が、音声入力により格段に効率が上がった事例です。

以前試したときは誤認識が多く、全く利用できるレベルではありませんでした。Windows内蔵の音声入力を試して、学習させてやっていたのですが、どうもいまいちでした。音声入力により入力作業が短縮される一方で、誤認識の修正にかかる時間も増えるため、トータルで考えると生産性が下がっているような状態でした。

その後、別のアプリを試したところ、このアプリの文字認識制度が非常に素晴らしく、ほとんど誤認識がないレベルです。おかげでこれまでやっていたライティング作業が大幅に軽減されました。例えば、この音声入力を使えば散歩している時あるいは、自宅でのんびりしている時にでも、原稿の下書きができるからです。(この文章作成にも音声入力を利用しています)



イノベーションの事例)アマゾンの電子書籍

一般企業のイノベーションの事例も少し紹介します。
全く新しいやり方を採用することで、投入工数を大きく削減している点に注目ください。

今では巨大企業のアマゾンも最初は書籍のオンライン販売から始まりました。会社の規模が拡大し、新しい事業に投資する過程で電子書籍の販売が始まりました。1つ目のイノベーションです。 電子書籍の販売が軌道に乗ってくると、今度はKindle Direct Publishingといって作家が電子書籍を出版できるサービスを始めました。2つ目のイノベーションです。

同じ仕事を継続していると、こういったブレイクスルーが生まれて生産性改善が加速します。1つ目のイノベーションでは、書籍の電子化により印刷・出版・配送・販売というプロセスが自動化されました。2つ目のイノベーションでは作家と市場を直接結び付けることで、出版会社の編集作業や中間マージンをなくしました。

イノベーションの事例)ネットフリックスの動画配信

ネットフリックスも同様のイノベーションを繰り返しています。 創業初期のビジネスモデルは郵送によるDVDレンタルでした。事業が成長するにつれ、オンライン配信の事業を開始しました。1つ目のイノベーションです。

オンラインの配信の事業が拡大すると、今度は映画製作の事業を開始しました。2つ目のイノベーションです。 1つ目のイノベーションで、「配送」という作業をなくしました。2つ目のイノベーションで独自のコンテンツ制作を開始しています。



今回紹介した事例のとおり、既存のやり方の延長ではどこかで頭打ちになります。生産性を大きく改善しようとすると、破壊的なイノベーションを導入するしかなさそうです。その時のキーワードが人の工数削減です。



※参考書籍)NO RULES 世界一「自由」な会社
※参考書籍)イノベーションのジレンマ
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