200923 日本のサラリーマンの危機感が薄い理由を考えてみる

今回は「日本のサラリーマンの危機感が薄い理由を考えてみる」というテーマで話をします。 会社勤めや日常生活においても、まわりで仕事をしている人の姿をよく見かけます。たまに仕事や職場の話をすることもあります。

こんなことを言うと失礼かもしれませんが、「なぜこの人はこの仕事をしているのだろう」と思うことがあります。本人も好きでやっているわけでもなく、お金に困っているわけでもありません。何となく仕事をしている。そんな状況です。なんというか、危機感が薄いという印象です。例えば、次の仕事をしている人です。

  • 時代の変化で不要になる可能性のある仕事
  • 特定の会社でしか働けない仕事(会社の倒産により職業自体を失う可能性のある仕事)
  • スキルも身につかず、自分が年を取れば自然になくなる仕事
  • わざわざ人がやらなくてもよい仕事

一部の若者は真剣に自分の将来を考えて試行錯誤している印象です。ごく少数ですが、直接危機にさらされている人達も真剣に行動しています。どうも大多数の日本人は火事が起きないと行動できないようです。そこで、今回はその理由を考えてみます。

危機感がない理由1 10年後、20年後の自分を想像していない

1つ目の理由が、困っている将来の自分を想像できていないのだと思います。
自分は大丈夫、自分は失敗しない、そういう根拠のない自信を持っている人が多いのではないでしょうか? 自分の勤務先の会社が倒産することはなく、これからも安泰の毎日が続いていくと思っているのです。業界によってはこういう考え方をする会社もあります。航空会社や行政です。 社員同士の競争を促すよりは、安全最優先で同一サービスを安定して提供することをポリシーとしています。

考え方としては正論です。とはいえ、個人のキャリア形成の面ではデメリットしかありません。年をとっても何のスキルも専門性もない人物では仕事探しに困ります。イノベーションのジレンマから学ぶサラリーマンのリスク」という記事で紹介しているとおり、仕事レベルが同じであれば、年配社員よりも若い人物を採用します。人件費の面でも会社の将来の面でもメリットが大きいからです。
つまり、ただ年を取っているだけでは雇用面で不利になるということです。将来の自分が困らないように、仕事の幅を増やしておく必要があるのです。


危機感がない理由2 自分の仕事が保証されていると考えている

2つ目の理由は自分の仕事がいつまでも保証されているという錯覚です。 日本の解雇規制も悪い影響を与えているのですが、日本では簡単に従業員を解雇できません。会社にしがみつこうと思えば従業員の方が有利です。現代の仕組みには一致しない悪法だと考えていますが、随分前に制定された法律が今でも適応されています。

この法律の問題点として、企業の業績が悪くなったり、事業構造が変わったとしても人員整理ができないということです。グローバルな競争が激しい現代では、解雇規制のない国の企業とも競争することになります。不要人員を処理できる海外勢と価格競争になっても、日本企業の高い固定費(人員)のためにコスト削減には限界があります。これでは競争には勝てません。

2つ目の問題点として、解雇できないので採用自体を見直したり、昇給についても慎重になります。結果として、若者の雇用が奪われたり、社員の給料が上がりにくいという問題も発生します。

3つ目の問題は既得権です。1度採用されれば、その地位を明け渡さない保守的な人材を大勢排出します。その結果、何もできないけど優良企業の社員という「使えない社員」が会社に居座るのです。社外では何もできない人材になるので、本人にとってもよろしくありません。


危機感がない理由3 高度経済成長期が成功モデルとして語られる

3つ目の理由は過去の成功体験です。
60年ほど前の成功体験を経験した人物が多く、彼らの言葉を信じるのだと思います。ところが、歴史を正しく理解しようとすると、高度経済成長期は一時的な出来事です。世界全体で歴史を振り返れば、どちらかというと稀な出来事です。

過去30年ほど日本経済は停滞しています。これからは成長どころか衰退していくことが予想されています。開発が進んでいる途上国と比較すれば、日本の停滞感を肌で感じることができます。

日本しか知らない人は、そういう感覚を持てないのだと思います。人によっては中国を下に見る人もいますが、中国と比べるとすでに日本の方がはるかに下にいます。残念ながら、彼らは現実を正しく理解できていないのです。


危機感がない理由4 変化が少ない

4つ目の理由が日本では変化が少ないことです。
生活が安定していることはありがたいことですが、外の世界で起きている変化を日本では感じることができないので、日本だけ浦島太郎状態になっています。そして本人にはその認識がないのです。

リーマンショック、東日本大震災、コロナ騒動など大きな出来事により生活環境が激変した人もいれば、そうでない人もいます。自分の生活に大きな変化を受けた人は、次に来るであろう変化に備えるようになります。石油危機の時もそうでした。大きな変化が身の回りに起こると、反省して将来の対策を考えます。 

例えば、今回のコロナ騒動を例にとると、アメリカでは3000万人が失業しています。日本の就労人口が約6000万人なので、アメリカの規模がどれほどのものか想像できるはずです。一方で日本の場合は解雇規制があるため、コロナ騒動で仕事を失ったのは会社が倒産した場合や派遣契約の人たちです。大半の正社員雇用の社員は無傷で済んでいます。


こんな人たちは世界規模での出来事も対岸の火事と思っているはずです。直接自分の生活環境が大きく変化しないので、次回の対策など検討しないでしょう。日本は恵まれているかもしれませんが、歪んだ制度のおかげで国民の適応力や危機への耐性を弱体化させている気がします。

「これまで大丈夫だったから、同じやり方で大丈夫」と考える人たちは多数派かもしれません。ところが、世の中を注視するとそんな理論は成り立ちません。企業の寿命はどんどん短くなっています。時代に求められるスキルや専門性もかつてない速度で変化しています。 会社規模、事業内容に関わらず、市場の要求にこたえられない会社は淘汰されていきます。 


危機感がない理由5 そもそも変化自体を好まない

5つ目の理由は、日本人は変化を嫌う人が多い傾向があることです。
そもそも単一民族の国家です。ハーフの人がいじめにあったり、朝鮮出身者がいじめにあったりすることはよくあることです。なんというか外国人に対して距離をとっている人がいるのは事実です。また、社会全体も変化を望みません。

配車サービス大手のUberや滴滴に対しても、日本の交通法では事業を認めていません(民間人がタクシー業務をするには第2種免許が必要)。AirB&Bなどの民泊サービスについても民間人を参入させていません(年間180日以上は事業不可能という変な規制を設けています)。
ドローンについても日本でもブームになりかけましたが、飛行物に関するの変な法律で新しい芽を摘んでいます。大麻についても同様です。大麻を合法とする国があるにもかかわらず、日本ではわけのわからない理由で違法扱いされています。ギャンブルについても同様です。パチンコや競馬はギャンブルですが、わけのわからない理由で認められている一方で、賭けマージャンは違法とされています。

挙げればきりがないですが、このような理屈の通らないように思える規制が数多く存在します。そのほとんどが既得権の保護を目的としたものです。利権団体を守るために、新しい産業が育たないのです。日本全体で浦島太郎状態です。

こういう背景で、同じ毎日が何年も継続していきます。本人のスキルも向上せず会社の事業拡大もしていなくても、それが当然と考えているのです。ところが、それは錯覚です。周りが進歩しているのに自分たちだけ停滞しているのは、相対的に衰退しているのと同じです。


危機感がない理由6 埋没費用に執着しすぎている

6つ目の理由が埋没費用です。
これまで投資してきた時間や費用を惜しむために、思い切った行動を起こせないのです。過去ばかりを振り返り、未来が見えていないのです。 将来性のない事業からなかなか撤退できない企業のように、これまで勤続してきた仕事を離れて新しいことを始めるという決断ができないのです。

今の仕事に満足していない、起業するつもりもない、転職するつもりもない、新しいことを学ぶつもりもない。これが日本のサラリーマンのアンケート調査です。完全に「終わった」状態です。

過去よりも未来の方が時間が長い場合であっても、将来のための決断ができないのは不思議でしかありません。例えば、40歳の人が何か新しいことを始めようとすると、20歳で仕事を始めたとして20年の過去があります。一方で70歳まで働くとすると、まだ30年もあるのです。少し現実的に考えると、過去の20年を守るよりも、新しいことを初めてスキルを磨く方がよいように思えます。
※転職という意味ではありません。自己研鑽や副業など仕事をつづけながらでも新しいことに挑戦すればよいのです。


まとめ

日本の悪い部分を記載しました。
事実ベースで記載しているつもりなので、大きく外れているようなことはないと思います。経営者の人たちは常に危機にさらされているため、いつも頭を悩ませているはずです。経営層の人たちは実績や経験があるため、危機に適応できる能力を備えています(そうでないと経営などできません)。

一方、守られている従業員レベルの人たちは、危機感が少ないうえに、危機に対する対応力も持っていません。本来であれば、危機にさらされて困る従業員レベルの人たちが危機に対する備えをするべきなのですが、皮肉にもそうなっていません。



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