210505 安いニッポン。日本の現状を正しく把握

安いニッポン(著者:中藤 玲)という本から項目を取り上げて紹介します。私は海外生活の経験もあるので、概ね著者と同じ印象です。日本の現状を知るうえで参考にしてみてください。

100円ショップダイソーの話

ダイソーの品質や品ぞろえには、社員ですら驚く。品質に見合う価格へと、日本でもそろそろ値上げすべき時 期ではないだろうか。ダイソーが商品価格を100円に統一したのは1977年のこと。40年以上もずっと100円であることは異常事態だ。

2010年代後半に中国に行った時も、すでに日本の方が安いなという印象はありました。インフレが続く国と長期的にデフレ状態の国では、物価に大きな違いがあります。中国では商品によっては強い価格交渉力を持っています。はやりのiphoneなどは、需要と供給の関係で、他国より高めに価格設定しても売れるため、中国生産であるにもかかわらず他国より高い価格設定です。喫茶店などでも、「安い価格を設定すると顧客レベルが下がる」という懸念から、あえて高い価格設定をして店の雰囲気・品質を維持しています。
日本の場合は、売り上げを維持を目的とした価格勝負しかできないため低価格の消耗戦を継続しています。このままでは日本が衰退していきます。


港区の年平均所得1200万円はサンフランシスコでは「低所得」

米住宅都市開発省がサンフランシスコで年収1400万円の4人家族を『低所得者』に分類した(※注実際は12万9150ドルで、当時の為替レートである1ドル約109円で計算)。社長が多い港区の年平均所得は1200万円。

サンフランシスコだけでなく、シンガポールや上海でも同じ話が成り立ちます。日本円換算で現地の生活費を計算すると、とても日本の給料では生活できないほど物価が高騰しています。特に家賃です。

家賃以外では、食料品は日本の方が高い印象です(例、牛肉、野菜、ビール、他)。外食は日本の方が圧倒的に安く、海外では一食2000~5000円程度かかる場合もあり、追加でチップなどが必要な場合もあります。 人が集まる街ではインフレが起こり、従業員の給料も増えていきます。(サンフランシスコでは不動産が高騰しすぎて問題になっていますが・・)

日本で生活するうえでは1200万円で十分ですが、日本が衰退していった場合、日本円の価値はどんどん下がります。同じ1200万円でも将来の価値は下がる方向ですので、海外動向も注視しながら客観的に現状を判断する必要があります。


価格勝負しかできない日本企業

日本は長いデフレに よって、企業が価格転嫁するメカニズムが破壊されたからだ」と指摘する。 製品の値上げができないと企業がもうからず、企業がもうからないと賃金が上がらず、賃金が上がらないと消費が増えず結果的に物価が上がらない、という悪循環が続いている。 アメリカでは、物価が2%ずつ上がるが、給料は3%ずつ上がっている。

キーエンス、ファナックなど高い利益率の企業は日本にも存在します。ところが大半の会社は利益率~5%で苦しんでいます。儲からない仕事に従事しているのです。 健全な利益を出すこと自体簡単ではないですが、解雇規制の撤廃を含めて日本全体で生産性を高める工夫が必要と考えています。


労働者を教育しない日本企業

仕事の種類の変化に合わせて、労働者も自己変革していかなければならない。「労働者も学習し直し、それぞれが必要とされる場所で必要とされる仕事をする方が幸せだ」というのがアメリカの考え方。付加価値で勝負している企業が少なすぎる。

参照)厚生労働省 GDPに占める企業の能力開発費割合の国際比較

このデータを見ると、日本の会社は社員の能力開発に大きな投資をしていません。終身雇用、解雇規制の背景があり、会社の中で役に立つことを目的とした部署異動などはやっても、社外で活用できる専門性を身に付けるインセンティブがないのだと思います。 また、別のアンケート結果では、日本の会社員は昇進、転職、起業などの意欲も他国に比べて少なく、現状に不満がありつつも行動を起こす意欲も少ないという問題も取り上げられています。


人材採用面での不利益

物価も賃金も上がっていない国(日本)に魅力は無い。採用したいならば魅力的な技術やキャリアパスを用意しなければだめ。 ある日本のソフトウエア大手は数年前にインド人技術者を大量採用したものの、単純な開発作業しか任せなかったので退職が相次いだ。 その日本企業に年功序列や年次主義といった不透明な評価基準が残ってしまうと、グローバルの転職市場で日本企業は不利なままだ。

日本の給与は米シリコンバレーと比較するとかなり低めです。一方で中国の会社ではシリコンバレーとの人材獲得競争で給与を決めているので高給です。 この違いは日本の会社の財務状況や人事制度の結果です。日本の会社では、従業員に破格の給料を提示することなどできず、グローバルの転職市場で人材獲得できないのです。せっかく採用したとしても定着につながらず、人材育成の面でも組織強化の面でもじり貧になっていくのです。日本人であっても日本の会社ではなく、海外に就職するという時代になっています。

かといって、日本が若者の教育に投資をしたり、海外留学生を日本に呼び込んで優秀な人材の育成をしているようにも思えません。日本の大学経営はどこも厳しい状況です。こんな状況が続けば、ますます日本は人材で苦労することになります。


海外企業に買われる中小企業

町工場などを運営する多くの日本の中小企業が、続々とアジア国籍になっているという実態だ。帝国データバンクによると、アジア企業が資本を通じ経営に関与している日本の企業は 2017年末時点で1712社にのぼる(アジア企業の日本法人も含む)。うち中国企業が51%以上出資するのは448社で、最も多い。そもそも対日投資は増加が続く。

廃業するよりは、海外企業に出資してもらい事業継続する方が良いのは事実です。出資元のネットワークを生かして事業が拡大する可能性もあります。技術・特許の面では日本の優位性は減る方向になります。長期的には海外に情報が流れて日本の産業がジリ貧になっていく気がします。


規制を撤廃し、競争を自由化させること

農業、医療、 教育、法務などの分野だ。例えば農業は減反政策などの非効率さが回り回って低賃金になっているが、生産性を上げて高い賃金をもらえる仕組みにすれば、新たな労働者も流入する。 改革しなければいけないと分かりきっているのに、日本はできない。

これは全く同意見です。一部の利権団体が政府と癒着して競争を阻害していることで、消費者が不利益を被っている状況は存在します。コロナ下でのGOTOキャンペーン実施はまさに旅行団体と政府の癒着です。海外で適応できている個人による配車サービス(Uber,didiなど)も日本では禁止されています。民泊サービスも日本では中途半端な制度になっています。自動車の車検が2年毎というのも過剰品質管理と消費者の不利益だと考えています。オンライン医療についても、コロナがなければ承認されなかったはずです。
挙げればきりがないですが、自由競争を阻害する規制が日本には山ほど存在します。日本で新しい産業が育ちにくい原因の一つです。



※関連書籍)安いニッポン(著者:中藤 玲)
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