191228 部下を育てるためには権限と責任の移譲が必要

今回は「部下を育てるためには権限と責任の移譲が必要」テーマで話をします。
どこの国でも会社でも当てはまる事例かと思いますが、人を育てるためには環境づくりも大切になってきます。言われたことをこなすだけでは、いつまでたっても自立性を持てませんし、いずれ思考停止になってしまいます。部下の成長を促進するためには環境づくりも大きな要素になります。部下が成長しなければ、結果的に自分の仕事の幅も広がることはありません。

1.部下に権限と責任が移譲されないケース

よくない環境の典型的なパターンをいくつか紹介します。
いずれも上司が良かれと思ってやっていることですが、結果的には悪い方向に作用しています。

何でも課題を処理してしまう上司

人を成長させる要素は挑戦と失敗の回数だと私は考えています。世の中には最初からうまくいくことの方が少ないものです。仕事をしていると課題がたくさん見つかってきて、それらを1つずつ解決していことで、最終的なアウトプットを出すことができます。この過程と結果が人の成長に寄与すると考えています。

組織によっては、上司が小さい問題に首を突っ込んできてすべて処理してしまうこともあります。上司からしてみれば、そんな小さいことに工数をかけるくらいならば、自分が解決した方が全体のリソース面では効果的と考えているのかもしれません。あるいは、性格的に小さいことを未処理にしておくことが嫌なのかもしれません。

注意しておきたいのが、この状況が繰り返されると部下は上司に頼ってしまいます。どうせまた上司が出てきて決めるのだから、自分は判断する必要がないという思考回路です。この環境は人の成長という点では危険です。

部下に権限と責任を与えない上司

ある程度まとまった仕事を部下に任せようとするとまとまった情報と権限を提供する必要があります。ところが、部下に必要な情報提供できない上司は大勢います。

自分は部下に報告を求めるくせに、自分は他人への情報展開ができていないのです。ある程度総合的な判断をする上では、必要な情報は不可欠です。というのも判断は情報量に依存するからです。

例えば、課長職の人物が持っている情報でおこなった課題解決の提案が、部長職の人物にとっては価値のないものだったということはよくあることです。
この理由は、部長職の人物は課長職の持っていない情報を持って判断しているからです。新しい情報を聞いて、「そういう背景があるのなら、こんな提案はしなかった」と思うことはあるはずです。はっきり言って時間の無駄ですよね。


全体感のない仕事を部下に任せると、こういうことの繰り返しになります。徐々に部下への信頼ができたのであれば、すべてを任せるくらいのつもりで上司は横から見るだけでよいのです。

権限を与えず、細かいことを管理してくる上司

これも、性格上の問題かもしれませんが、まったく部下の管理をしない上司もいれば、細かく報告を求めてくる上司もいます。どちらの場合も行き過ぎは問題ですが、部下にあったやり方を採用するべきでしょう。上司としては部下の業務を管理したいと考えるようですが、いちいち管理されることを好む部下などいません。窮屈に感じるだけです。

また、行き過ぎた管理は他人を信用していない証拠です。日々の進捗管理の電話や日報や週報など、必要以上の報告は時間の無駄と仕事の効率を下げる負荷にしかなりません。そもそも、本人(上司)も自分の上司(上司の上司)から細かく管理されることに嫌気を感じているにもかかわらず、同じことを自分の部下にしてしまいがちです。

部下の話を聞かない上司

これもダメな事例の典型です。自分ばかり話をして部下に話をさせない上司です。結構大勢います。自分が主役になりたいのか、自分の方が優れていることを示したいのか、自分でリーダーシップを取りたいのか、いろいろ事情はあると思いますが、「会話」になっていない事例がよくあります。

他人の話を遮ったり、自分のことばかりを主張したり、部下へ指示したり、要するにその場を自分の権力でコントロールしているという空気を作っている事例です。これをすると部下は発言しなくなります。

残念ながら日本企業ではよくあることです。課長レベルでも、部長レベルでも、役員レベルでも自分より立場の低い人物に対しては強気であるにもかかわらず、自分より立場の強い人物に対しては弱気になります。相手の立場を尊重することは大切ですが、相手によって大きく対応を変えるべきではないと思うのです。

2.部下を育てないことのデメリット

部下を成長させることは上司の仕事の1つです。
部下がいることは、上司が気分よく仕事をするためでも、部下をこき使うためでもありません。 部下が成長してくれると、自分がやっていた仕事を徐々に部下に任せることができます。上司の人物の業務負荷が減るという点と組織力の強化という点で、大きなメリットがあります。本来組織運営とは、そういうものです。

ところが、残念なことに自分の立場やポジションを守ろうと考える上司がいることも事実です。部下が成長すると、自分の立場が奪われるのではないかと心配する人達です。
部下が成長しないと次のようなデメリットが発生します。

いつまでたっても組織が強くならない

組織とは常に変化するものです。社内の異動や退職などはつきものです。特定の人間だけに依存した体制になっていると、組織としての強さは生まれません。人を育てないことには仕事の効率も改善しません。

会社人事は「社員の教育に力を入れている」と宣言していますが、ほとんどの会社でそれはただの建前になっています。実務に追われ長期的な視点での組織強化、特に人材育成をうまくできている会社は少ない印象です。

部下が思考停止に陥る

上司が何でも処理し過ぎると、部下のモチベーションは下がります。責任と権限も与えられないのであれば、ただの作業をしているのと変わりません。これでは成長しようという意識は生まれません。本人が強い意識をもってやりたいと思わなければ成長することはありません。
本人のモチベーションを高める環境づくりをしないと、いくら人材育成を語っても実現することはないでしょう。

上司本人の成長も止まってしまう

部下を成長させて自分がやっている仕事を引き継げる状態にできない上司は、さらにレベルの高い仕事をすることができません。自分の仕事からいつまでたっても抜け出すことができないからです。部長職であれば、後任の部長候補を育成して、その役職を任せられる人物を準備しなくてはなりません。

自分の地位を守ろうとするのではなく、自分がやっている仕事を他人に任して自分はさらに上の仕事に取り組むという考え方です。
現実問題として、あるレベルまで出世するとそこで満足してしまう人が大勢います。その人の行動や発言を見れば、課長職になる人、部長職になる人、役員になる人というものが分かります。強い向上心を持っている人はエネルギッシュに活動して、物事をポジティブにとらえています。



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