220513 採用面接で損している会社

今回は「採用面接で損している会社」というテーマで話をします。

新聞記事でも報道されている通り40代や50代の人材の転職進んでいます。人材の流動化は日本社会にとってはプラスだと考えています。就業者にとっても、他社を知るという点で、人生が豊かになるのではないかと考えています。
ところが、残念なことに日本社会には古い風習が残っているのも事実です。その中で一つ悪い事例を挙げると、採用面接です。私は転職経験もあるし、社員の採用面接を担当したこともあります。採用側として応募者を評価することもあれば、応募者として会社を評価したこともあります。つまり両方の立場を理解しているのです。

応募者の立場からすれば、「なかなか内定がもらえない」と自信喪失してしまうかもしれません。採用側からすれば、「なかなか期待する候補者がいない」と嘆くかもしれません。世間では広告イメージが先行するため、なかなか現実が伝わりにくい部分があります。 現実問題として、企業側は会社の綺麗な部分だけを求人情報に記載します。内部事情を知る者からすれば、応募者に対して不便に感じることもあったくらいです。
人気企業であれば大勢の応募者が集まります。人気企業の場合はそもそも広告費をかけなくても、募集が集まります。そういう背景を理解すると、お金をかけて募集をしている会社は、世間的な知名度が低いか、人が集まらない不人気企業ということになります。

応募者は書類選考というフィルターにかけられます。気になる人材が見つかった場合は、採用担当者は面接しようと思うはずです。ここで勘違いしている日本の習慣、体質とも言える残念な態度が現れます。

残念な採用面接事例

採用面接で応募者の実力試しでもするかのように、あれこれ質問を投げかけます。圧迫面接など、内容によっては失礼な質問もあったりします。でも、ちょっとよく考えてみてください。そんな質問をされて応募者はどう思うでしょうか。仮に内定がでても、そんな人たちと一緒に働きたいと思うでしょうか?

キャリア採用の場合は応募者の能力を「過剰に」要求することもあります。例えば、製造業の場合で例を挙げると、語学ができるか、プログラミングができるか、マネージメント能力があるか、リーダーシップがあるか、、、、、、、こんな具合です。でも、ちょっと待ってください。そんな人材、そもそも社内にいますか?

社内の人材が該当しないようなたくさんの能力を応募者に求めるのは間違いですし、そんな都合の良い人材が転職市場に出回っていることはありません。自分ができないことを棚に上げて、何でもかんでも応募者に期待するのは間違いです。 結果的に、会社の魅力を伝えるどころか、会社の印象を悪くしてしまっているのです。

市場では「交渉力がある方が強い」という単純な事実

採用担当者が認識していない勘違いは、「市場取引では交渉力がある方が強い」ということです。採用担当者が応募者を選ぶように、応募者も会社を選んでいます。応募者の交渉力が強ければ、採用担当者は立場をわきまえるはずです。(ところが、そのように認識している採用担当者は少数です)

会社側の交渉力が弱い場合は、会社の魅力を伝えるべきなのですが、そういう思考回路が持てないようです。例えば 残念な面接事例を挙げると次のようなものです。
-会社紹介や仕事内容の説明をしない
-自分たちの自己紹介をしない
-会社の魅力を伝えない


せっかく求人情報で会社の魅力をアピールしているにも関わらず、面接で会社の魅力を落としているのです。面接をするということは、少なくとも応募者に対して興味を持ったはずです。本来ならば応募者にも会社に対して興味を持ってもらいたいはずです。 ウェブ会議で会社紹介のプレゼンをすることも可能です。大衆向けの会社説明会でやっていることですが、個別の採用面接では会社の魅力を伝えることを忘れてしまっているのです。


ちなみに、私は海外工場で採用を担当したこともあります。当時の勤務先では日本の雇用環境とは大きく違っていて、従業員の定着率は高くありませんでした。なかでも、優秀な人材から会社を去っていくという印象でした。仮に優秀な人材を採用できたとしても、会社に失望するとすぐに会社を辞めてしまうのです。(仮に入社しても彼らは強い交渉力を持っているので簡単に退社します)

そういう状況を避けようと、できるだけ仕事内容や職場案内をして、仕事のイメージを持ってもらうような配慮をしていました。(上司や部下にかかわらず、仕事上でも優秀な人材のモチベーションや負荷を気にかけて仕事をしていました。それでも会社に魅力が少なかったせいで退職する人は大勢いましたが・・・)
国によっては終身雇用などという考えはありません。したがって、「5年程度は勤めてもらいたい」と考えて採用していました。


日本の雇用市場では終身雇用体質が強く、募集要項をよく見ると「雇用形態:期間の定め無」などとなっています。これは「解雇しない」ということです。(※法律の縛りがあるため一方的な解雇ができません)
会社側も、応募者の能力だけでなく、「一生勤めてくれるかどうか」も判断基準にしています。個人的には、経済情勢が不安定化するなかで、終身雇用という考えが時代遅れだと考えています。会社側も採用時点では長期勤務を期待する一方、事業環境改善のために社内の希望退職者を募集するという矛盾があります。

「辞めないかどうか」を基準にするのではなく、「会社を魅力的にする」ことに注力すべきなのです。 仕事を楽しんでいる社員は、たとえ仕事がつらくても、金銭的な見返りが少なくても、長期で継続してくれます。 マイクロマネージメントやくだらない報告業務や打ち合わせで社員を縛るような組織では、優秀な人材がモチベーションを高く保つのは難しいでしょう。



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