200603 問題の本質を正しく理解することの必要性とよくある勘違い
今回は「問題の本質を正しく理解することの必要性とよくある勘違い」テーマで話をします。
職場には言い訳や勘違いが蔓延しているものです。自分に都合のよい解釈をして一時的にその場をしのぐことはできるかもしれませんが、別のところにある真実を見逃してしまいがちです。
生産技術エンジニアをしていた兼ね合いで、ロジカルに考える癖が身に付きました。本サイトでも紹介している通り、FTA、なぜなぜ分析、パレート図などは製造現場の問題解決以外にも適応できます。いくつか事例を交えて考え方を紹介します。
具体的事例1 設備の故障
設備に使用しているサーボモータが故障したことがあります。
3年くらい使用していた設備だったので、当時の担当者は単純に耐久性の問題と理解していました。普段故障する部位ではないので予備品も準備しておらず、数日間生産が止まることになりました。新品のサーボータに交換してしばらくすると、その新品もすぐに故障しました。
つまり、問題の本質はサーボモータではなかったのです。
そのサーボモータに垂直に連結していたボールねじ側に問題があったのです。内部のボールが摩耗によってすり減っていたため、ボールねじのナットの摺動抵抗が大きすぎたのです。
さらに深堀すると、サーボモータの許容耐荷重とユニットの重量に余裕がなかったこと、サーボモータの自己防御機能がなかったことがわかりました。本来、これらは設備設計や仕様段階での問題になります。
故障初期の段階で正しく問題の本質を理解できていなかったために、サーボモータを交換しても問題が継続しました。ボールねじの交換を含めると1週間以上生産停止することになりました。
具体的事例2 設備の問題対応
以前の勤め先では海外の工場で仕事をする機会があったのですが、生産技術エンジニアの仕事は設備の面倒を見ることでした。
それなりに仕事をこなす人物もいれば、そうでない人物もいました。設備の面倒を見ることは簡単な仕事ではありませんし、なかには癖のある設備もあります。
何年も同じ職場で働いたベテラン社員であれば、毎回同じような設備仕様の設備を取り扱うことになるため、たいていのことは対応可能かと期待するのですが、
ちょっとした問題対応や改善活動をするときに次のような行動をします。
「取引先から情報をまっている」とか「取引先のエンジニアが次回出張するタイミングで行う」というのです。
一見、正しく聞こえるかもしれません。
ところが些細な案件であれば、わざわざ問い合わせをしないといけないこと自体が問題なのです。
問題の本質は「取引先が捕まらなくて情報が得られないこと」ではなくて、「長年勤務しているにもかかわらず設備詳細を把握していないこと」なのです。
工場が海外に合って取引先が近郊にいないことは最初から変わらない事実です。
具体的事例3 部署間の問題
生産技術部や購買部は製品開発部の仕事を引き継ぐ部署になります。
製品図面がなければ設備の仕様検討はできませんし、購入部品の見積もり作業も進みません。
私も何年も生産技術エンジニアをやっていたので社内の状況をよく理解しています。プロジェクトの進行状況(関連記事)にあわせて部署の役割が変わります。製品開発部の仕事が遅れることで生産技術部の仕事はいつまでたっても始まりません。プロジェクト全体の計画は変更されないため、生産技術部や工場はどんどん時間を奪われることになります。
「製品図面ができていないから設備仕様検討が進まない」
この言い訳は何度も耳にしました。担当者の言い分はよくわかります。大きな組織で働くと、何度もこういう状況に遭遇します。はっきり言えば、マネージメント層の責任です。
とはいえ何とかしなくてはなりません。
毎回こういった事例が起きるたびに、各担当の対応は責任者に依頼して担当部署に圧力をかけることです。他にもやれることはあります。
問題の本質は、「製品図面ができていないこと」ではなくて「設備の仕様検討が進んでいないこと」です。従って、ドラフト版の製品図面をもらって設備の仕様検討を進めればよいのです。正式図面リリース時点で寸法公差や規格などの見直しはあるかもしれませんが、正式版がリリースされるまで待ってから仕事を始めるよりは、はるかに少ないロスで済みます。
以上簡単ですが、「問題の本質を正しく理解することの必要性とよくある勘違い
」というテーマで話をしました。
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