220605 製造業で外資系企業をおすすめしない理由

今回は「製造業で外資系企業をおすすめしない理由」というテーマで話をします。 外資系企業と言うとどんなイメージを持つでしょうか?
リストラされる? 給料が高い? 上司が外国人?
世間のイメージはこんなところでしょうか。業界によっては見方が違うかもしれませんが、製造業の技術職に限っていえば、外資系企業への就職はお勧めしません

製造業で日本国内に工場がある場合は、いくつか理由があります。 例えば、元々日系企業で国内に拠点があった会社を外資企業が買収したために外資系の参加になった場合で、わかりやすい事例がシャープです。シャープは経営悪化により鴻海に買収されました。もともと日系企業だったのですが、現在となっては外資系になります。
他の事例を紹介すると、日本の国内マーケットに商品を販売するために日本に製造拠点を構えた場合です。特に自動車業界においては、国内メーカーが多数存在することから、日本の自動車メーカーへ自動車部品を納める会社は、日本国内に開発拠点・物流拠点・製造拠点などを持つことがあります。

製造業で外資系企業をおすすめしない理由

子会社なので決裁権がない

外資系の製造業に就職することをお勧めしない理由の一つ目は、親会社の子会社になるからです。本社機能を持つ日系企業と異なり、外資系企業の日本拠点は決裁権が限られています。技術職の場合、工程設計や設備仕様で親会社の意向に縛られることがあります。新しい生産ラインの導入に関しても、日本拠点独自で準備するよりは本社から来たラインを受け取るだけの場合が多いでしょう。海外の制御機器(日本では流通していない、サービス拠点が日本にない)を使用せざるを得ないこともあります。本社のメンバーが常駐して生産ラインの面倒を見てくれればよいですが、おそらくそうはならないでしょう。

日本拠点の競争力は低い

二つ目の理由は社内グローバル拠点間の競争です。「日本国内の製造業は空洞化した」と随分前から言われています。20年前から人件費の安い国に生産ラインを移管しています。外資系企業で日本の製造拠点があるような会社は、必ず途上国にも製造拠点を持っています。日本の拠点は人件費の安い社内の別拠点との競争にさらされます。

グローバルな生産拠点を検討する上で、特別な理由がない限り、日本拠点の競争力は極めて低く、長期展望的に不利になります(すでに日系企業が20年前から海外に生産シフトしている理由を考えればわかります)。長期的な視点で考えると国内事業の衰退につながるということです。
圧倒的な技術力を持っていて、他のグローバル拠点を技術的にサポートできるような組織であれば存在意義も大きいのですか、事業自体の拡大が期待できないような環境では技術力を維持することも簡単ではありません。

外資系企業に勤めると給与体系は優れているかもしれません。給与を優先するなら外資就職もよいでしょう。 日本拠点の経営状態が好ましい状況であれば好待遇を享受できるかもしれません。 別記事でも記載していますが、「短期的な給料」で会社選びをすることを勧めません。
人的資本を磨けば給料は後からついてきます。実力をつけて待遇の良い会社に転職することも可能です。 日本の雇用制度では雇用は保証されていますが、いつ変更になるかわかりませんし、後述するように他の会社に売却される可能性もあります。 したがって、「長期的に人的資本を磨ける要素」も会社選びでは重要になってくるのです。

グローバル展開への可能性が低い

三つ目の理由は、グローバル展開への可能性がないことです。成果を評価されて本社への異動でもあれば、活躍の機会は広がるでしょう。ところが、それは確率的には極めて低いと思われます。あくまでも日本国内の仕事がメインになるので、日本拠点に縛られます。また、グローバル拠点同士は互いにライバル関係になります。グローバル企業の強みであるグローバルなネットワークをうまく活用できれば良いのですが、方針を決めるのは大抵本社の管理部門です。日本拠点は子会社扱いなので決裁権はありません。逆説的に聞こえますが、外資企業(の子会社)であるせいで、日本国内の仕事に縛られるのです。「グローバルな仕事機会を期待したにもかかわらず、まったくそんな機会がなかった」ということもありえるのです。

長期的な事業リスク

四つ目の理由は事業が衰退した場合は、工場自体が閉鎖に追い込まれることです。国内拠点の経営が傾けば、事業自体を撤退するか他社に売却になります。多国籍企業だからといって、他国の拠点の仕事を割り当てられる(雇用が保証されている)ことはありません。
※わかりやすい例を紹介すると、マクドナルドが日本から撤退したら、日本のマクドナルド社員は他国のマクドナルドに移るようなことありません。そのまま日本で解雇になるでしょう。



以上の理由から、技術者の外資企業への就職はお勧めしません。現場系でない職種(開発、管理、営業、その他)であれば外資系企業でもよいかもしれません。どうしても外資企業に就職希望するのであれば、現地の本社へ就職を勧めます。本社採用で日本勤務になれば扱いも変わります。
一方で、本社採用でなく日本採用の場合、日系企業がアジアの拠点(例えばタイ)で現地採用している社員をイメージすればわかりやすいかもしれません。現地採用されて現地で勤務している社員がどういう扱いになるかイメージすれば、日本で外資系企業に勤めることがどんなものかわかるはずです。

余談ですが、外資企業だからといって、簡単に解雇されるわけではありません。世間での「外資企業イメージ」とは異なるかもしれませんが、外資企業といえども、日本国内では日本の法律が適応されます(大企業の場合に限ります)。簡単に従業員を解雇するようなことはできませんし、組合がある会社もあります。
個人的にはホワイトカラー職については組合など不要と考えていますが、製造業では古き良き日本の風習が今でも残っています。外資に勤めたはずが、「日本企業そのものの働き方だった」とことに驚くかもしれません。日本に拠点を置く限り、しょせんは日本の会社です。

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