201021 思考停止人材を輩出する組織

今回は「思考停止人材を輩出する組織」というテーマで話をしたいと思います。本ブログでも思考停止した日本のサラリーマンを何度も取り上げてきました。今回はサラリーマンではなく、組織に焦点をあてて考えてみます。

【目次】

  1. 思考停止は個人の責任か?
  2. 実は組織が思考停止人材を作っている
    • 要因1)「判断するな」という指示
    • 要因2) 閉ざされた情報
    • 要因3) 失敗を責める上司
    • 要因4) 教育の問題

思考停止は個人の責任か?

「日本の会社員が思考停止状態に陥っている問題」について考えたときに、最初は本人の問題だと考えていました。大学生が入学試験さえ受かれば遊んで暮らすように、会社員も就職さえしてしまえばのんびり暮らすというのが私の印象でした。概ね事実だと思います。

ところが、そのあといくつかの職場で状況を観察してみると、本人要因は7割くらいで残り3割は会社側にも責任があるように思い始めました。というのも、徐々に組織に洗脳されてしまう可能性を感じたからです。最初は本人も違和感を覚えた環境でも、長期的に所属するとその状況が普通に思えてきます。外から見れば異常と思える状況でも、本人は異常だと気づかないようです。

私はこの事象を「洗脳される」とか「ボケる」と呼んでいますが、長期的に同じ職場に所属しているとボケるようです。ボケてしまうのは本人にも責任がありますが、その職場しか知らない場合は、なかなか防ぎにくい問題です。社外につながりがあれば、もう少し客観的な視点を持つこともできるのですが、そうでない場合は少しずつボケていくようです。

実は組織が思考停止人材を作っている

私が見てきた事例は次のようなものです。

要因1)「判断するな」という指示

1つ目は上司からの指示です。
部下を信用していないのか、やり直しロスをなくしたいのか、全部自分で判断したいと考える上司です。未熟な人物が相手であれば「判断するな」と伝えておけばよいのですが、熟練者に対しては失礼な行為だと考えています。

ワンマンショー的に仕事をしたい人物が管理職にいた組織のことですが、どうもこの傾向がありました。 自分がすべてをコントロールしたいのか、リーダーシップをとっているつもりなのか、判断できる能力がある人物に対してまで細かい報告を要求していたり、わざわざ上司の指示を仰ぐ必要のない事柄までも報告させていました。

50歳前後の中年社員が大勢いる組織で、いずれも何十年も同じ業界で仕事をしてきた人物に対して自己判断を促さない体制には失望します。外から見ると、部下をただの道具としてしか扱っていないからです。

事実だけを見れば囚人が労働させられるのと状況は同じです。場所が監獄か会社内部かだけの違いです。立場を利用して労働を強要しているのです。裁量権もなく、何の判断も許されない仕事はただの労働です。 唯一違いがあるのは、サラリーマンの場合自分の意見を主張できる権利を持っているということです。残念ながら、ほとんどの場合にその権利は行使されないようですが。。

要因2) 閉ざされた情報

2つ目の要素が情報です。
風通しの良い組織と悪い組織はどこにでも存在します。上位情報を公開しない場合は、末端の従業員は正しい判断ができません。本来、大きな流れに合わせて小さな流れを決めて行くというやり方で、ほとんどの仕事は処理されます。

上位方針が見えていない場合は、目先の仕事に対する考え方を間違います。そうなってくると、いちいち上司に問い合わせないといけません。同じサイクルが継続すると、いずれ考えること自体をやめてしまいます。情報統制の悪影響です。

わかりやすい事例が中国共産党による情報統制です。日本ではなじみがないかもしれませんが、中国ではグレートファイヤーウォールといって共産党によるインターネット規制が成立しています。都合の悪い情報へのアクセスはできませんし、youtubeやfacebookといったアメリカのサービスも利用できません。

社内でこの情報格差の傾向が強まると末端従業員は仕事がしにくくなります。大企業にありがちな傾向です。

要因3) 失敗を責める上司

3つ目の要素が失敗への責任です。
避けられる失敗を避けられない場合は問題外ですが、成功するかどうかわからない案件では失敗することもあります。結果だけを見て失敗に対して本人を叱責すると、次から挑戦しにくくなります。
挑戦した結果、失敗の責任を被るのであれば上司の指示に従って行動する方が無難です。何でもかんでも上司に判断を仰ぐ状態になり、思考停止状態に陥ります。

要因4)教育の問題

4つ目の要素は教育制度です。
そもそも日本人は考えるという作業に慣れていません。詰め込み式教育といわれる通り、知識だけの習得を目的とした教育を受けてきた人は考える作業に向いていません。いろいろな人生経験を積んで自分の意見を持てるようになるまでには時間がかかります。 自分で考えられる状態になる前に、間違った集団に所属してしまうと上述の通りで思考停止の習慣が定着してしまいます。自分では考えているつもりでも、実は極めて狭い範囲での思考回路だったという場合をよく見かけます。



以前の取引先で50歳前後の社員の方がいましたが、年齢を重ねているから優秀という要素は全くなく、ひとまわり以上年下の私が指示していました(※私は本人の上司でも何でもありませんでしたが)。同じような人がほかにも大勢いました。 当時はこの人は何を考えているんだろうか、この人は今までの人生で何をしてきたのだろうか、年を取るのは残酷だな、などと考えていました。 いま振り返ると、思考停止状態は必ずしも本人の問題だけではないなと思えてきます。



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