201022 マウントを取ろうとして失敗した中年社員の話

今回は「マウントを取ろうとして失敗した中年社員」というテーマで話をしたいと思います。よくある縦社会を維持しようする古株社員の話です。日本人なら誰にでも経験があるのではないかと思います。ある程度付き合いが長くなるとポジションの奪い合いのようなことはないかもしれませんが、最初の頃は年齢や役職で有利に立とうとする人物が多い印象です。実力勝負で自信がない人物自分の立場が危険になると感じる人物には多い印象です。

話を始める前に具体的な事例を紹介します。(少し技術的な話になります)
当時、私は新しい職場で働き始めて1年ほどたった頃でした。すでに私の実力はある程度認められていたと思います。私は生産技術者で現場の問題に取り組んでいました。組立工程で慢性的な問題があって、それは次のようなものでした。

部品Aの穴にスプリングを挿入して、そのあとに部品B(蓋)で穴をふさぎます。部品Bの内径にスプリングが収まる設計で、部品B(蓋)の外径と部品Aの内径が挿入勘合になっています。部品Bが穴に入った後に部品Bの端面をカシメて固定するという工程でした。
ところが、内部のスプリングの位置が完全に決まっていないため、部品Bで蓋をするときにスプリングが変なふうに噛み込むことがあるのです。この一連の作業を自動装置でやっていました。

部品Aと部品Bはそれぞれ内径と外径で位置が決まる構造になっています。スプリングに合わせて部品Bの位置を挿入することは困難なので、スプリングが自動的に位置が決まる構造にしないと、この工程は成り立たないのです。

つまり、問題の本質は製品設計だったのです。製品設計を変更しない限り完全につぶすことはできないのです。とはいえ、生産技術側で何もしないわけではありません。部品B(蓋)の挿入時の動作速度を遅くして挿入時の衝撃をなくしたり、スプリングを挿入した後の部品Aの搬送速度を落としてスプリングの位置がずれにくいように工夫したりしました。 ただ、原因はそこではないのです。


当時、この問題をグループの前で説明していました。普段私に細かい指示を出すことがない上司だったのですが、たまたま周辺にいた傍観者の前でいい格好をしたかったのか、私にいくつか提案をしてきました。ところが、それらの提案はすでに私が検証している話だったのです。

当時の私は生産技術の組み立て工程においてはレベルが高かった方だと思います。問題分析、設計思想、装置についてもかなり高いレベルの知識と経験を持っていました。事実に基づき可能性はのある事柄はつぶしたうえでの設計変更提案だったのです。

上司が何を質問してきてもすべて事実に基づき回答していました。製品の設計上の積み立て公差がどうか?という話になったときもすでに計算済みだった試算を提示すると、予想外だったのか、そのあとわけのわからない話を始めました。

「自分のペースに持ち込めるだろう」と思って聞いた質問に対して予想外の答えが返ってきたので混乱したのかもしれません。完全に支離滅裂という状態で、しょうもないやり取りがしばらく続きました。その人物は優秀だったので、自分でも自分が言っている内容が理屈に合っていないとわかっていたはずです。


別に、どちらが偉いとか、優位に立ちたいとか、そういった見栄はただの自己満足です。年齢が上だから、役職が高いからとか、マウントを取れば仕事がやりやすくなるとかいうのは錯覚です。「事実」ベースで議論している相手に、事実以外の要素を持ち込んで議論しても話がかみ合いません。話に説得力がないし、仕事も進みません。

私はエンジニア職をしていたおかげで「事実」を分析する癖がついていました。仕事面でのデータの検証ももちろん、論理の流れについても鍛えられたのだと思います。限りなく主観を排除した考え方を持てるようになっています。

自分の損得や好き嫌いではなく、「事実」をもとに仕事をすると期待する結果が得られやすくなります。正しい原則に基づかない物事は長期的に継続できません。当たり前の話ですが、 現実とはそういうものです。(政治家が人々の信頼を獲得できないのは、事実を隠して変な利益を享受しようとしているからだと思います。)


今回の話はたまたま上司と部下という設定でしたが、直接の上司でなくても老害のような中年社員はどこにでもいます。特に新しい職場や初対面の人間に対しては、探りを入れながら挑発しながら、自分を優位に立たせたいと考える人たちです。本人は満足感を得られるのかもしれませんが、残念ながら自分の価値を下げる行為だということに本人は気付いていないのです。



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