210319 先が見えれば頑張れるという話

今回は「先が見えれば頑張れる」というテーマで話をします。

時間が決まっている事例(海外駐在の場合)

中期的に期間が有限である事例として「海外駐在」を考えてみます。
私は何度か海外駐在をしたことがあります。このブログでも海外駐在のメリットを紹介したことがありますし、書籍でも紹介しています。「日本がダメで海外が良い」そういう話をするつもりは全くありません。それでも日本と違った視点で物事を見ることができるので、海外経験を勧めています。

海外駐在をするときの1つのメリットは「期間が決まっている」ということです。いずれ終わりが来るということを分かっているので、その期間だけ頑張ろう、結果を残すために努力しよう、そう思えたりします。日本から派遣されてきているということで期待値も大きく、いい意味でプレッシャーになってるように感じます。

仮に海外駐在が一生続くとわかっていたら、モチベーションを維持するのは簡単ではないと思います。

苦しくても期限が決まっていれば意外と頑張れる

私は若い頃ブラック企業で激務を経験していました。
海外の工場に出張すると、1ヶ月出張して1日も休みがなく毎日夜遅くまで働く、そういった仕事をしていました。最初の頃はこれがトラウマになって「二度と海外工場へ出張に行きたくない」と思っていました。現地で毎日憂鬱な気分になって過ごしていたのを覚えています。

出張中は「いつ終わるんだろう」と毎日考えていました。そのあと何度も海外工場に出張すると徐々に「激務」に慣れていきました。それでも案件によっては大変な出張が度々ありました。「完全な負け戦に挑まなくてはならない」ような案件もありました。

数ヶ月出張したとしても、いつか帰国するタイミングが来ます。いつか終わりが来るのです。 駐在していた頃も大変な毎日でしたが、2~3年すれば終わるという前提がありました。 この「いつか終わる」という希望が本人をリラックスさせてくれていると思っています。もう少しだけ頑張ろう、もう少し続けてみよう、そう思えるからです。

先が見えないときは精神的な不安が大きい

一方で就職して変化のない毎日に組み込まれると、今の生活がいつまで続くのか目処が立ちません。
充実した毎日を過ごせているのであれば問題ないのですが、ほとんどの場合そうではありません。 若い人が短期で会社を辞める。これは、先の見えない長い不安があるからではないでしょうか。この状態(あまり好ましくない状態)が一生続く、あるいは長期的に続く、と考えると耐えられないのだと思います。

従業員のモチベーションを保てない経営陣にも責任はありますが、精神的な側面で考えると、「構造的に期限がない」、あるいは「先々の展望を持てない」という要因はあると思います。

日本の超優良企業であるトヨタに入社する若手社員でも将来に絶望して退職しています。
参照)トヨタを辞める若手社員

組合員が何かを変えようと上司に相談した際、部内で完結するものは前に進むことが多いものの、部署の守備範囲を超えるものになると、他部署から「なぜやるのか?」「何かあったらどうするのか?」といった説明を求められ、進みにくいのが実情です。「組合員の提案は分かるけれども、限られた時間でリスクもあるし、今はやめておこう」。そうした上司の反応では、その想いもいつしかくじけ、目の前の業務をひたすらこなすだけになるというのも、正直なところです。
これが繰り返されると、若手からは「何も変えられない自分と、周りをみても本気で変えようとする先輩、上司がほとんどおらず、(そうした職場に)染まりつつある自分にもがっかりする」という声も聞いており、一部の仲間はトヨタを退職しています。


アメリカでは平均勤続年数は4~5年と言われています。つまり5年後には自分は新しい環境で生活しているという期待感があり、その期待感が精神的な支えになっているのではないでしょうか。

日本では転職はまだまだ一般的ではありません。転職回数がポジティブではなく、ネガティブに捉えられる変な社会です。一生同じ会社の人間と付き合わなければならない。そういった絶望感があるのように思えます。

転職経験者なら、少しながら精神的な余裕を持てる気がします。「キャリアはいつでも変えられる」という安心感が持てるからです。 人によっては、「会社の同僚とプライベートの付き合いをしたくない」という人もいます。一緒に働いてるのに残念なことです。

期限を決めないと惰性になる

海外駐在者でもズルズル長期で海外滞在している場合も見られます。
長期でいるとダメというわけではないのですが、同じポジションで長く過ごすと惰性になっているように見えます。
※長期間滞在でも本人が立派に成長している事例もたくさんあります。ただ、長期で滞在していて成功している事例を見ると、役職が上がったり、役割をシフトしていたり、海外の別の拠点に移動したりと、視野を上手に広げている印象です。 同じ拠点で同じ仕事、同じ役職で滞在期間が長いというのは、成長が頭打ちしているのではないでしょうか。

いきなり現地就職や海外就職をするとなると、海外での滞在期間の終わりがありません。日本から派遣されているという立場でもないので、期間が限られることもありません。期限がないという側面で考えれば、日本で将来に不安を抱える会社員と同じです。生活習慣や職場が期待したものでなかった場合は、同じ問題に直面します。

また、本人は長期的に続けるつもりでも、解雇のリスクがあります。海外では日本と違って従業員の雇用は保証されていません。社員の流動性があるため、日本の会社員が持つような閉塞感はないかもしれません。それでも「ただ長くいればいい」というものでもないので、やはり期間を決めて仕事をするということが、パフォーマンスを決めているように思えます。


最後にまとめると、「いつでも辞められる」、「近い将来終わりが来る」と思えると、中長期的に精神的な余裕ができて努力を継続できる気がします。そう思えれば新しいこと、難しいことに挑戦するハードルが下がります。



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