210212 労働組合が強い会社の恩恵と弊害

今回は「労働組合が強い会社の恩恵と弊害」というテーマで話をします。ブラック企業とホワイト企業で働いた経験から労働組合の存在について紹介したいと思います。

労働組合があるホワイト企業と労働組合がないブラック企業

新卒で入社した会社には労働組合を持たないブラック企業でした。会社の働き方はブラックそのもので、たくさん働く人が偉い、お金を稼いでる人が偉い。当時の社内にはそういった風潮がありました。売り上げ規模5000億円を超えた後でも、組合は結成されませんでした。

そのおかげで会社に勢いがあったことは事実ですが、全員が同じような働き方を望んでいるわけではないので、全社員に同じような労働を強要することはできませんし、会社を去る人も大勢いました。若い頃の私は時間に追われるように仕事をしていて、平日の残業は当たり前。平日で仕事をこなしきらないので休日も出勤していました。海外工場へ出張するときも、ほとんど同じような働き方です。1ヶ月出張して1日も休みをとれなかったことも何度もありました。


その後、転職してホワイト企業に勤めることになりました。ホワイト企業を狙って転職したわけではないのですが、結果的に転職先の会社が超ホワイトな会社でした。そこは労働組合が強く、組合の執行役員は大きな権限を持っていました。あまりにも労働組合が強いおかげで社内では暗黙の取り決めがありました。

例えば、月に2日を超える休日出勤に関しては組合への申請が必要でした。残業時間についても同様です。自部署の従業員が規定の残業時間を超える場合は組合への申請が必要になってました。有給休暇の消化に関しても同様で、毎年の有給休暇の消化は従業員の義務で、平均的に年間15~20日の有給消化は必達目標でした。(部下が既定の有給を消化できない場合は、労働組合から責任者に厳しい処置がなされるようです)

※ブラック企業の体質が身についていた自分にとっては大きなカルチャーショックでした。

労働組合が強い会社の恩恵

ホワイト企業に入社するとワークライフバランスを保つことができます。
労働環境は守られていて、勤務時間以外の時間を有意義に使うことができます。趣味の時間を楽しむこともできますし、家族との時間を過ごすことも可能です。労働組合が賃上げ交渉をしてくれるので、比較的昇給しやすい環境です。

男性の育児休暇に対しても理解が深く、数ヶ月育児休暇を取得している男性従業員もいました。(実際利用している人を見かけることはありませんでしたが、)海外ボランティア用の休暇取得制度もありました。 鬱になったりして、一時的に休業することも可能でした。

離職率も低く、長期にわたって従業員は定着する傾向にあります。安定を求める人にとっては素晴らしい環境で、これらは労働組合の人たちが勝ち得た成果です。世間の一般企業に勤める会社員にとって、うらやましい環境です。

労働組合が強い会社の弊害

続いて、強すぎる労働組合の弊害を紹介します。
一見、労働組合があった方が従業員にとってはメリットに思えますが、少し見方を変えるとデメリットも見えてきます。その会社の経営状況が悪化した時に、厳しい環境への適応が難しくなるということです。ホワイト企業で長年勤務した人物が、ブラック企業に転職すると衝撃を受けるはずです。場合によっては精神的に耐えられなくなるかもしれません。別記事で紹介している既得権のデメリットと似ています。
※実際、前職のブラック企業では中途入社者の半数くらいは数年以内に退職していました。

年齢を重ねるごとに居心地の良い環境から抜け出せなくなります。ホワイト企業の恵まれた労働環境を利用して、空いた時間に自己研鑽すればよいのですが、時間があっても大半の人間が勉強などしません。 転職先のホワイト企業は外資なので、「英語くらい勉強すれば・・・」と思うのですが、長期勤続者のほとんどが英語をまともに話せませんでした。
勉強には適した環境だったのですが、それが当たり前になると「ありがたさ」に気づけなくなるようです。つまり、ホワイト企業の環境に胡坐をかいて努力を怠ると、その環境を失った瞬間に厳しい現実が待っているということです。

多くの場合に団体交渉の結果として決まる賃金や福利厚生の水準は、市場均衡賃金よりも高くなります。市場均衡賃金を上回る賃金水準を維持することによって、労働供給量が労働需要量を上回る原因を作り出しています(※実際に必要とされている仕事内容以上の給料を従業員に払っているということです。したがって社内に「構造的」失業をもたらしています)。団体交渉を通して組合員が労働組合から恩恵を受ける一方で、非組合員が仕事を探すことを困難にしています。

また、労働組合は「仕事 = 労働」と考えています。ほとんどの人にとって当てはまる事実かもしれませんが、なかには仕事を楽しんでいる人もいます。やりがいや挑戦と考えて、多少の残業や休日出勤は気にならない人たちです。労働時間を制限されることで、結果的に彼らの成長機会を奪っていることになります。

大勢の人間が働く場所では規則は必要ですが、何でもかんでも強制することに対しては反対です。会社や従業員のことを考えれば、自由度を持たせておいた方がよい場合もあると思うのです。

まとめ

生物の進化論のように、人は環境に適応します。
ブラック企業で働けばやがてその環境に適応します。ホワイト企業でも同様です。問題点として、会社倒産やリストラでホワイト環境が破綻した場合に、新しい環境への適応に時間がかかるということです。ホワイト企業で自分の能力開発に取り組んでこなかった場合、悲惨な中高年になってしまう可能性があります。

ブラック環境の労働環境に賛成するつもりなど全くありませんが、数年くらいはブラック企業を経験して厳しい環境でもまれることを勧めます。結果的に自分のキャパシティーを広げてくれて成長が加速します。

理想的には、一時期ブラック企業を経験して自分を成長させた後で、適度な労働組合がある会社で働くのがよいのではと思います。労働組合が強すぎると、経営状況への悪影響も懸念されます。短期的には問題になりませんが、固定費増加や従業員の成長阻害は長期的に会社を蝕んでいきます。どんな状況になろうとも、最悪を想定して個人も会社も成長を続けなくてはなりません。


※関連記事)既得権を守りにいくか、新しいことに挑戦するか
※関連記事)若いうちは苦労しておくべき理由4選
※関連記事)人が成長するためには120%の力を発揮する状況が必要
※関連記事)若い人が活躍できる職場環境がキャリア形成に重要な理由

コメント・質問を投稿