220210 ブラック企業出身者が見たホワイト企業の製造現場

今回は「ホワイト企業の製造現場」というテーマで話をします。忙しいイメージの製造業ですが、世の中には以下のような製造現場もあったりします。

週末に故障設備を放置しても受け入れられる製造現場

以前ブラック企業から転職してホワイト企業に勤めた時の話です。
そもそも製造現場はどこも忙しい。そういう思い込みを持っていました。前職では複数の工場に出張したり、駐在していて、製造現場をわかったつもりになっていました。
私が転職した会社は業界での歴史が長く、現場の運営はさらに厳しいのだろうと予想していました。連合に所属する労働組合を形成していて、いわゆる大企業の社風でした。


ある金曜日の午後、2台あるうちの1台のプレス機が動かなくなりました。たまたま2台ある設備だったので、1台が故障しても生産自体は可能でした。それでもアウトプットは6~7割程度に落ちるため、早々にその設備の復旧する必要がありました。あいにく、故障設備は自社オリジナル仕様のサーボプレスを搭載していて、故障部位はそのサーボプレスでした。入社して日が浅い私は、役に立つことが出来ませんでした。
というのも、市販品であれば調べれば情報を得ることができるのですが、自社オリジナル仕様になると、情報が揃っていないことが往々にしてあるからです。つまり、知っている人しか対応できない状態になるのです。

もちろん私は故障が復旧するまでその場にいるつもりでした。ところが、現場の問題よりも、労働組合のルールが優先されます。定時退社日の金曜日に残業は認められていなかったのです。申請することもできたのですが、当時の上司の判断は、夕方シフトの保全部門に任せればいい、というものでした。

前職の私なら、土日に勝手に会社に来て設備のデバッグをしていたでしょう。良くも悪くも、新しい職場では勝手に土日に出社することは認められていませんでした。私はおとなしく月曜まで待っていました。

月曜になって現場にいくと信じられない光景がありました。その設備は金曜午後の状態から全く進展している様子がなかったのです。土曜日も日曜日も現場は稼働していたので、その設備が停止している分だけ生産性は悪化します。シフト連動の保全部隊も勤務していましたが、結局進展はなかったようです。月曜の昼過ぎには問題は解決しましたが、土日の間に何も動きがなかったことには驚きを覚えました。


技術者の怠慢を認める製造部門にも驚きがあったし、労働組合を理由に設備故障を放置する技術者にも驚きました。こんな現場もあるんだ、と大きな衝撃でした。

製造現場は属人的な対応が一般的

一般的に、製造現場は生産に追われるため、例えば24時間稼働になってくると、夜中であっても技術者を工場に呼び出して問題の復旧にあたるようなこともあります。(もちろん、そんな迷惑な呼び出しが発生しないで済むように、24時間体制を構築しようとするのですが・・・)
優れた製造現場であれば、特定の技術者に依存しないで対応できる体制を準備するでしょう。ところが、私がこれまで見てきた限りでは、どこの製造現場も属人的な運用に止まっています。そもそも技術の習得には時間がかかる上に、時間をかけても教育できるとは限りません。結果的に特定の技術者に依存せざるを得ないのです。

ホワイト企業内での強すぎる労働組合という組織

そのホワイト企業にもイレギュラーに対応するためのルールはありました。勤務時間外で一般従業員を出社させる場合、マネージャー職者からの組合への申請が必要でした。とはいえ、夜中に問題が起こった時に電話対応できる組合関係者はいません。実質的に、形骸化した仕組みになっていて、結果として「夜間に問題が起きた場合は朝まで放置する」しかないのです。
一般従業員の技術者にしてみれば、ありがたい仕組みではありますが、製造現場としてはやりにくそうでした。何をするにも労働組合が大きな障害になります。組織自体を否定するつもりはありませんが、なんでもかんでも規制するのは、結果として自分たちを弱体化させることにつながります。(既得権の悪影響です)

製造現場の負荷を減らす方法の紹介

突発的な製造現場の問題の影響を少なくしようとすると、以下のような対策が考えられます。

・安全在庫に余裕をもたせておく
  例)通常、国内であれば1~2週間分程度、海外であれば1ヶ月分程度が一般的
・生産計画/稼働時間に余裕を持たせる
  例)稼働日を増やす。(一時的に週末のシフトを稼働するなど)
  例)休憩時間も稼働させる。
・特別輸送を利用する

マネージメントがうまく機能すれば製造現場の遅れを取り戻すことは可能ですし、技術者への負荷を軽減することも可能です。 そのホワイト企業が健全な利益を出し続けているのは、優れたビジネスモデルとマネージメント層の成果と言えます。 (技術者の育成を含め、製造現場レベルのマネージメントは苦労している印象でした)

※関連記事) 製造業における品質問題と量産の恐ろしさ
※関連記事) 生産技術エンジニアが目指す21世紀の働き方
※関連記事) 仕事ができないエンジニアの働き方の特徴

コメント・質問を投稿